1-2 スクリュー押出の原理
スクリュー押出機の中の"ハート"、スクリュー
スクリュー押出機は、中に取り付けられたスクリューが大事な役割を果たしています。スクリューは、押し出すときに原料を形作るのに使われる部分で、わかりやすく言えば、挽肉を作るときの挽肉機みたいなものです。
a) 一軸スクリュー押出機
一軸スクリュー押出機では、シリンダ(バレル)と呼ばれる筒の中に、一本のスクリューが入っています。このスクリューは、ホッパ(原料を入れる場所)が入口側に、ダイ(形状を決める金型)が出口側に取り付けられています。シリンダには、温度を調節するための加熱・冷却ユニット(バンドヒータ)もついています。
原料(プラスチックのもととなるもの)はホッパに入れられ、シリンダ内で次のステップを踏んで形を変えます。
供給部(フィードゾーン): 固まったまま送り込まれる
圧縮部(コンプレッションゾーン): 溶ける(柔らかくなる)工程
計量化部(メタリングゾーン): 溶けた原料を計る
スクリーン(金網)、ブレーカプレート(蜂の巣状の板)、ダイを通って押し出す
原料はシリンダの周りにあるバンドヒータで温められますが、原料自体の摩擦によっても内部で温まり、形を変えるのに影響を与えます。
このスクリュー押出機の動きは、ボルトとナットの動きと似ています。例えば、ボルトを回転させるとナットがボルトに沿って移動するように、スクリューが動き、原料がスクリューに沿って進んでいくイメージです。
b) 二軸スクリュー押出機
二軸スクリュー押出機には、同方向回転形と異方向回転形の2つの種類があります。
同方向回転形
同方向回転形は、一軸スクリュー押出機と同じくボルトとナットの原理を使っています。さらに、二軸が噛み合うことで原料がスクリューと一緒に動くのを防ぎ、材料は前方に押し出されます。
異方向回転形
異方向回転形は、歯車ポンプ(ギヤポンプ)原理に似ています。スクリューはもう一方のスクリューのねじ山で塞がれるため、動きはほとんどなく、スクリューの回転方向から見ても樹脂がねじ山に入る量が少ないので、発熱も少なくムラも発生しにくいです。
スクリュー内の樹脂の溶融のしくみ
スクリュー押出機の大まかな仕組みを見ていきましょう。この機構では、スクリューが何役かを果たします。
1. 固体から溶けるまで、樹脂を移動させる
最初に、樹脂がソリッドベッドと呼ばれる固まった状態から、スクリューの回転で前に押し出されていきます。これは、おおよそ挽肉機が肉を押し出すイメージです。
2. 樹脂を押し固めながら、温めて準備
樹脂が進む先にあるシリンダ(バレル)は加熱されています。そして、スクリューが樹脂とシリンダの間で摩擦を生じさせ、それによっても樹脂が温まります。このステップでは、樹脂はまだ固体のままです。
3. 樹脂を溶かして柔らかくする
ここで、シリンダの壁に接している樹脂が溶け始めます。樹脂はシリンダの熱とスクリューの動きによって、徐々に溶け始め、ソリッドベッドから溶けた状態に変わります。
これで、スクリュー内では樹脂が溶けてくる様子が見えてきましたね。次に、この溶けた樹脂がどう流れていくかを見てみましょう。
溶けた樹脂の流れ
壁に薄い溶けた樹脂フィルムを形成: 壁に張り付くように、薄いフィルムができます。
スクリューによって掻き取られ、後方に集められる: フィルムがどんどん増え、スクリューによって後ろに運ばれて「メルトプール(溶融体プール)」ができます。
メルトプールが回転しながら増え、ソリッドベッドは完全に溶ける: メルトプールはスクリューの回転に合わせて増え続け、最終的にはソリッドベッドが完全に溶けてしまいます。
こうして、スクリュー内では樹脂がしっかりと溶けて、押し出し準備が整うのです。
スクリューの計量化部(メタリングゾーン)とせん断速度
成形材料(プラスチック原料)が溶けると、それに平行な方向に力をかけると変形します。この変形の速さをせん断速度(速度勾配)と呼び、押出機の性能に大きな影響を与えます。
影響する要素
計量化部(メタリングゾーン)では、スクリューの溝の深さと長さが性能に影響します。浅いスクリューでは1回転あたりの押し出し量が少なく、たくさんの量が必要な場合はスクリューを速く回さなければなりません。スクリューの回転が速いとせん断速度が上がり、それに伴って摩擦熱も増えます。
せん断速度と温度の関係
溝深さ(h)が小さいほど、せん断速度は大きくなる
スクリュー回転数(N)が大きいほど、せん断速度は大きくなる
せん断速度が大きいと、発熱も大きくなり、成形材料の温度も上昇します。逆に、深いスクリューではせん断速度が小さく、温度も低めになります。
スクリューとダイの特性
押出成形において、スクリューとダイの関係は以下の通りです。
ダイの開口面積が大きいと…スクリュー溝が深い方が吐出量が大きい
ダイの開口面積が小さいと…スクリュー溝が浅い方が吐出量が大きい
スクリュー溝が浅いと、押出量の変動が少なく、操作が安定します。最適な操業点を見つけるために、スクリューの深さとダイの開口面積を調整して、高品質で安定した製品を押し出すことが重要です。