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仏VSM フルトヴェングラー指揮 バイロイト祝祭管弦楽団および合唱団 のベートーヴェン/第9交響曲
ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調 作品125
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮 バイロイト祝祭管弦楽団および合唱団
エリーザベト・シュヴァルツコップ(S) エリーザベト・ヘンゲン(A) ハンス・ホップ(T)オットー・エーデルマン(Bs)
仏VSM FALP381/2 33rpm 1951年7月29日 バイロイト祝祭劇場 演奏会
もうフルトヴェングラー博士の第9の聴き比べはやめようと思っていたが、これを最後にしたい。
この第9交響曲は、各国でこんにちまで繰り返し繰り返しプレスされ、多くの愛好家などに聴き続けられてきた録音であるが、フルトヴェングラー氏の没後から1年ほど経った1955年11月に、イギリスで初版LPレコードが刊行された。
このフランスVSMの2枚もその頃(1955年12月)の刊行だと思われる。
戦後の1951年に再開されたバイロイト音楽祭が英HMVスタッフにより実況録音されたが、この音楽祭冒頭に演奏されたフルトヴェングラー氏による第9交響曲は、もともとレコード化される予定ではなかったという。
このフランス初期盤は、音の輪郭がはっきりし低音もしっかりと表現され聴きどころ満載である。そしてとてもフレッシュで艶がある。
管弦楽、独唱並びに合唱のハーモニーが明瞭で、ヴィンテージアンプで鳴らすとまるで会場に居るかのごとく部屋いっぱいに音場が拡がる。まさにナチュラルサウンド!
後年の再発盤の多くはリマスターにより特定音域の強調や不自然に音が膨張されたハウリングのような残響音も相まって、音も痩せ、合奏・合唱等が破綻的に聴こえる。
しかしこの初期盤を聴くと、霧が晴れたようにくっきりと音像が浮かび、重厚な迫力とともに、とても端正な演奏であったことがわかる。何かの言葉を引用すれば、なにも足さないなにも引かない、というような自然な響きである。
終楽章コーダーの最後のアッチェレランドに付いていこうとする合奏群、シンバルや太鼓の音もハッキリ鳴っており、終止音の不協和音も感じられない。そして、再発盤によく見られる編集で付け足したような聴衆の拍手は無い。
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