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育てるキーキャップ
コンセプト
3Dプリンタで印刷したステム受けと、レザークラフトで作った上部を組み合わせたキーキャップ。使い込んで色が変化する革を使えば、タイピングしていくごとに”育って”いきます!
![](https://assets.st-note.com/img/1648286525384-wyfDwfd70p.png?width=1200)
思いついた経緯
自作キーボード以外の趣味として、最近はレザークラフトも楽しんでいました。キーケースにはじまり、財布やクラッチバックなどもろもろ作っていくなかで、使い込むほどに味が出る(色が変化していく)ヌメ革も扱えるようになってきたので、これをキーキャップにしたらいいのでは!?と思いつきました。
育つのか否か検証
私自身、試作品を使い始めているところなので育ったものはまだお見せできません。ただ、わざと窓際に一週間ほど置いて日焼けさせる実験はしました。確かに飴色に変化しました!
ただ、タイピングだけですといつも指先で全面を触るわけではないので、こうなるのは難しいと思います。そういった意味では「フラット」や「ヘラジカ」の方が均一な色変化になりやすいかと思います。
レザーのエイジングを検証。
— あたるの⌨キーボード&技術アカ (@ataruno_key) February 24, 2022
左:あえて窓際に1週間おいて日焼け
右:日焼けなし
タイピングでこうなるかはわからないが、少なくともエイジングで色があめ色に変化していくことはしっかりわかった!#キーキャップ pic.twitter.com/5S84nfbRG4
この窓際で日焼けさせる方法はレザークラフト制作やレザー製品購入時によく行われるようです。日焼けさせることで表面に革内部の油が浮き出しコーティングの役割もされるのだとか。
今回作ったものはあえて日焼けさせていません。色変化は未使用品からの変化が一番大きいです。先に日焼けさせてしまうと、醍醐味である色変化を感じづらくなってしまうからです。ただ、表面のコーティングとしてミンクオイルを薄く塗っています。これによってある程度の防水効果も得られます。
おおまかな制作手順
おおまかな制作手順は以下の通りです。
1.レザーのカット
2.(ボックスは立体成型)
3.端処理(コバ磨き)
4.ステム受け接着
5.表面コーティング
特に力を入れているのが端処理です。
以降ではベースとなる「フラット」で各制作手順を紹介し、「ヘラジカ」「ボックス」ではそれぞれの工夫ポイントを紹介していきます。
1.フラット
まずはレザーをサイズどおりにカットします。
板チョコかな? pic.twitter.com/PhuOwlgvHs
— あたるの⌨キーボード&技術アカ (@ataruno_key) February 16, 2022
次はヘリ落としといって断面の角を削る作業です。レザークラフトで良く行われる工程ですが、この一手間を加えるだけで洗練された感じが一気に出ます!
(下のツイート写真では自分用にアルファベットを刻印しています。
へり落としで角を削ると一気に洗練された感じになる pic.twitter.com/NUIQzD0X6H
— あたるの⌨キーボード&技術アカ (@ataruno_key) February 16, 2022
ここから端処理(コバ磨き)に入ります。いろんな種類の紙やすりや帆布で形や表面を整えます。ここが甘いとざらざらした感じになってしまうので、時間をかなりかけています。
ある程度、表面が整ったらワックスがけをします。ワックスをつけると断面の防水、保護になると共に良い光沢が生まれます。また熱が加わることにより渋い色へと変わります。ワックスを塗った瞬間に光沢がさぁっとできる瞬間は楽しいです。
ワックス仕上げという技を覚えた。こっちの方がより輝いて、かつ耐水性が増すかな。熱を当てるので色はやや茶色に変化するが、そのほうがレザー製品らしさがあるかも。#キーキャップ #レザークラフト pic.twitter.com/GcNO4ibPoR
— あたるの⌨キーボード&技術アカ (@ataruno_key) February 24, 2022
ワックスがけの道具としてホットビューラーを魔改造してコテとしています。
魔改造したコテが結構ちゃんと機能してて良き。 pic.twitter.com/NDSnYjezIm
— あたるの⌨キーボード&技術アカ (@ataruno_key) February 26, 2022
ワックスがけを行ったあと、さらに紙やすりや帆布で磨きます。ワックスの量を比較的多めに塗っているので、余分なワックスを除去し表面を整えます。
この工程、このレザーキーキャップに限らず、レザークラフトではいろいろな手法があります。水だけの人、端処理剤を使う人、コバ処理ワックスを使う人(私)、蜜蝋ワックスを使く人。それぞれの磨き方にそれぞれの個性があり、その製品の味になっています。
商品として作成していく中でも継続して試行錯誤しています。いい感じに改良する意図で行っているので、商品紹介ページと色味が変化する場合もあります。ご承知おきください。
新しい磨き順を試してみたらより素早くより均一な仕上がりになりそう。
— あたるの⌨キーボード&技術アカ (@ataruno_key) March 13, 2022
上2枚が新しい磨き順、常に一定で色が変わる。下の横並び2枚が前の磨き順、色が変わらない面もあれば変わる面もある。色のばらつきを味と考えるか、製造ばらつきと考えるかもはや趣味の域かなぁ。#キーキャップ #レザークラフト pic.twitter.com/e4eJMI06wt
上部のレザー部分は完成したので、ステム受けを3Dプリンタで印刷します。このステム受けもいい感じになるまで何度もトライしました。。。
![](https://assets.st-note.com/img/1648290080362-9FgPQkAGQm.png?width=1200)
印刷したものも二次硬化前にしっかりと乾燥させます。ステム受けの凹み部分にレジン残りがあるとスイッチが奥まで入らないのでティッシュでこよりを作って刺して乾燥させます。
![](https://assets.st-note.com/img/1648290310581-P50mPtbLYl.jpg?width=1200)
接着剤でレザーと合体させるのですが、ステム受け部分が中心となるように治具も作成しました。これのおかげでバラツキが低減します。
しっかりとステム受けが中央になるように治具を作成。ずれてるとね、隣のキーキャップと干渉しちゃうので。サクッと作れるので3Dプリンター便利。 pic.twitter.com/xx85LVue3U
— あたるの⌨キーボード&技術アカ (@ataruno_key) February 19, 2022
完成です!
![](https://assets.st-note.com/img/1648290637332-v1fScSdnSq.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1648290646030-wYuRkLGWmH.jpg?width=1200)
2.ヘラジカ
(※イラスト刻印以外はフラットと同様に制作しています。)
アイコンにもしているイラストですが、東京上野の国立博物館で見たヘラジカの大きさを忘れられず描いたものになります。車よりも大きな鹿。こんな生物がいるのか!!!と衝撃を受けました。
レザーに上手く刻印できないかなと考え、これも3Dプリンタで印刷にトライ。強度もしっかりあり、木槌で叩いても壊れることなくかわいい仕上がりになりました。
めちゃかわなキーキャップになった!
— あたるの⌨キーボード&技術アカ (@ataruno_key) February 17, 2022
ヘラジカのイラストを刻印の形状にモデリングして光造形3Dプリンタで印刷。しっかりレザーに刻印できたし木槌で叩いても壊れない!細い線も潰れてない!かわいい!#キーキャップ #3Dプリンター pic.twitter.com/DNE9cZ2uwR
かわいい。 pic.twitter.com/QaTIcVz5zo
— あたるの⌨キーボード&技術アカ (@ataruno_key) March 10, 2022
端処理やステム受けの作成はフラットと同様です。シンプルなフラットもいいですが、かわいいヘラジカイラスト版も良いよね、うん。
完成です!
![](https://assets.st-note.com/img/1648290556550-H9r6FTWdSp.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1648290569890-MUkGtU6rty.jpg?width=1200)
3.ボックス
(※端処理や表面コーティングなどはフラット、ヘラジカと同様です。)
せっかく作るのですから、キーキャップらしく立体形状も作ります。
ここでも3Dプリンタが大活躍。
立体成型を試してみるために凸凹型をモデリングした。
— あたるの⌨キーボード&技術アカ (@ataruno_key) February 13, 2022
こんな感じでいけないかなぁ。 pic.twitter.com/vsiXCtLB3w
考えてモデリングしてすぐに試せるの最高かー!!! pic.twitter.com/HPMFVJ5OLt
— あたるの⌨キーボード&技術アカ (@ataruno_key) February 14, 2022
良い感じに型を印刷できたので、立体にしていきます。水を含ませて濡らして柔らかくした革を凸凹型で押さえつけます。
ぬらした革を挟んで体重かけて押し込んで、輪ゴム巻いて放置。ある程度乾いたら、、、さてどうなるか。 pic.twitter.com/mt7iRLNCa4
— あたるの⌨キーボード&技術アカ (@ataruno_key) February 14, 2022
半日~一日、完全に乾かします。しっかりと形ができて満足です。
おおお!立体成型のそれっぽい!
— あたるの⌨キーボード&技術アカ (@ataruno_key) February 14, 2022
革が厚すぎて凹側の隅っこまで当たってない?高さが少し短いけどまぁまぁ良いのでは?凸側をもう少し膨らませれば端まで届くかなぁ。 pic.twitter.com/jSXfTC7NUW
余分な羽の部分をカットし、端処理をします。
コバ処理(革の端処理)をするとこんな感じ。左は未処理の切れ端、ぼそぼそ。それに比べて処理した右側は色合いに味が出て、てかりも生まれる。 pic.twitter.com/os3IEbYqE3
— あたるの⌨キーボード&技術アカ (@ataruno_key) February 14, 2022
ステム受けもボックス用にに小さいのを印刷し、
うまく印刷できた(のもあるがまぁまぁ失敗も重ねた)。 pic.twitter.com/ecX6trAiMy
— あたるの⌨キーボード&技術アカ (@ataruno_key) February 15, 2022
接着します。試作品ではUVレジンを入れて硬化させる方法を試したのですが、表面までレジンが染み出してしまい断念。レジンはしっかり硬化されていれば良いのですが、しっかり固まっていない場合はアレルギーの原因となります。安全面も考えて固定は接着剤に変更しています。
レジンでなく接着剤でリベンジ!
— あたるの⌨キーボード&技術アカ (@ataruno_key) March 3, 2022
シミにもならないし、そもそもレジンでないので安全。キースイッチの抜き差しを50回やってみたけど変わりないので良い!オッケーです。 pic.twitter.com/GsShmE7Nkq
完成です!
![](https://assets.st-note.com/img/1648287058520-FLuBCLmgBD.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1648287073248-8he0Wr20jE.jpg?width=1200)
最後に
商品化は初の試みです。欲しい人があらわれてくれるのだろうか。
この記事に書いた通り一つ作るのにけっこう時間を要するため大量には作れないです。4月頭の販売にむけて、それぞれ10個程度は作れたらなぁと思っています。
4月頭に販売予定のレザーキーキャップ、少しずつ完成品ができてます。まだ軸受けを付けてないのもあるけれど。ひとまず3種類それぞれ10個ずつは作っておきたいかなぁ。#自作キーボード #キーキャップ #育てるキーキャップ pic.twitter.com/YBtYxgKMH6
— あたるの⌨キーボード&技術アカ (@ataruno_key) March 3, 2022
追記
Keyboard Builders' Digestさんにも記事にしてもらいました!