【銭湯日記】6日目
-6日目-
21時半。
仕事終わり気が抜けて爆睡。
お風呂セットを秒で準備。
人気のない道を小走り。
下駄箱は44番。
「いらっしゃい」と番台の淑女。
「領収証はお帰りまでにご用意しておきます」
ふふ、常連感。
番台の淑女は映画『かもめ食堂』のもたいまさこさんのような雰囲気がある。ウェーブがかったミディアムなグレーヘアが素敵。ゆったりとした空気を纏っている。
赤い暖簾をくぐり高速脱衣。
浴場の奥のカラン、マイシャンの君。そして常連さんらしきもう1人。私を含む3人の空間。
[本日の風呂]…ジャグジー。
何度見てもジャグジー…やはり。またジャグジーな1週間がはじまるのかしら。
営業も終わる22時まであと15分。そそくさとノーマル風呂に浸かり誰かのシャンプーする音を耳に、青い暖簾の風呂とを隔てるタイル壁をじっと見つめる。落ち着く間もなくあがる。
浴場を出る前にタオルで身を包んでいると、また1人入ってくる常連さん。
「いやぁ〜!今日は鏡が綺麗やなぁ!」
…っ!?
近くには私だけ、というか私の方へ向け発せられたよう。一気に湧き上がる人見知り。これが…新参者への関西の洗礼…ひぇぇ……。
「綺麗ですよねぇ~~ぇ~(!?)」
なんてドつまらない返し。終了。ごめんなさい。
小さく「お先ですー…」と呟きながら私、退場。
新参者、退場。
番台の淑女より領収証を受け取る。「おやすみなさい、おおきに」に寂しい背中を包まれながら帰路につく。
あの愛らしい猫ちゃんは今夜も…いない。
新参者、帰宅。
キューティクルが失われつつある髪たちより小さな悲鳴があがる。マイシャンか準備するか…ぁ…
新参者、悩む。