【銭湯日記】9日目
-9日目-
16時。
休日なので早めに向かう。
夕方からのんびり浸るなんて夢心地だろう。
下駄箱は44ば…なっ、ない!
44番に先客あり………項垂れつつ45番。
「いらっしゃい」と番台の淑…じっ、じゃない!
いつもの番台の淑女じゃない!!れれー!?ここは番台の淑女がひとりでやっていものと思っていた…ちがうのか。
本日は『かもめ食堂』のもたいまさこ氏さながらの番台の淑女ではない。いうなれば"番台の大淑女"が取り仕切っていた。80歳は迎えていようか。
お代を取り出しながらお願いする。
「あの、領収証いただけますか?」
「へぇへぇ、分かりました。そんならお帰りまでにご用意しておきます。べっぴんさんの若いお姉ちゃんね。」と大淑女。
さらにコロナ対策として天井より下がるビニールの1枚へ、グッと顔を寄せて小声になる。
「よう覚えておきます。ここはお婆さんばっかりやからなァ」
ぐししっと笑う大淑女は可愛らしい。
赤い暖簾をくぐると驚いた。
いつもの3倍は混んでいる。日曜日、開けて1時間ほどはこれほど人が多いのか。平日の夜が嘘のよう。
[本日のぶろ]…じゃ、ジャグジーじゃあない!!
そこには…ジェットバス…そう書かれていたァ…。そうか本日はジェットバスですか。そうですか。
浴場へ踏み入れると常連さんらしき2人。
還暦をとうに迎えていらっしゃる。
「今日からサウナ入れるからねェ」
1人におもむろに声をかけられる。これまたコロナで閉じられていたサウナ。やっと使えるらしい。感謝を伝えつつタオルを片手にサウナへ。
サウナは浴場の入口スグの隅にある。
高まりながら木戸の取っ手を引く…引く……引……全然開かない、頑なっ。
恥ずかしいから早う開いてくれ…ググっと引き開ける。むわぁ〜っとした空気が全身を包む。
室内は演歌が流れていた。
田舎の町内会の花見などが思い返された。
そして室内計を見ると90度。常連さんの大先輩方すげぇ…これに耐えてるの…。
5分ほどでリタイアしてよたよた汗を流す。ノーマル風呂へ浸かる。
その時、カラカラと出入口のガラス戸が鳴く。
「こんばんはァ~」
はっ…!あっ…!やぁやぁ…っ!
"西の洗礼"の登場である。
やぁ…よく会いますね。運命ですか、へへ。
今日も洗礼を受けまいかとドギマギしながら退場。
「おやおや早いなァ。若い人には暑すぎたかなァ」
くししっと笑う番台の大淑女より領収証を受け取る。可愛い大先輩。
いつもの愛らしい猫ちゃんはいない…ぬぬぬ。
しかし昔馴染みの猫ちゃんには逢えた。「猫チャン」と声をかけるとでれでれっと寄ってくる。
先日は声をかけたら無視していたのに…今日はやたらにスリスリしてくる。調子のよい可愛いやつ。
帰宅。
猫に可愛がられたい毎日。