善意の投資家と進める重伝建のまちづくり
2022年3月12日に行われた「#新しい不動産業 Meetup」2日目のセッション5。畑本康介さんに、兵庫県たつの城下町で進められている、まちづくりについて聞く。 ※ 研究所会員は全てのセッションをノーカット映像でご覧いただけます。
龍野城下町のムカシとミライをつなぐまちづくり
まちの昔を学び、未来へつなぐ。このまちは、先人が積み上げてくれたからこそ今がある。それを継いでいくことを大切にしている。たつのは、田舎の風景が素晴らしく、日本一の出荷産業が3つある。淡口醤油、手延べそうめん、皮革。2019年に、重要伝統的建造保存地区に選定された。
暮らしや文化を引き継ぐエリアマネジメント
町並み保存において重要なポイントは、暮らしや文化を引き継ぐこと。点ではなく面で進めること。エリアリノベーション、エリアマネジメントの観点が大切だ。100年前の人に喜んでもらえるか、100年後の人に感謝してもらえるか、という双方の時空の視点を大切に、持続型のまちづくりを目指している。町並みや暮らしなど、真の観光資源を受け継いでいく。最終ゴールは丁寧な暮らしの担い手を育成することだ。
まちを巻き込む
2012年頃から様々な活動は行っていた。転機は2015年。市民出資による不動産会社緑葉社の事業継承だ。「まちづくり不動産会社」としてグループ会社の中核を担っている。5年間での実績、管理物件は70軒以上、転貸契約数約30契約、新規出店数約30店舗、累計投資額約3億円と事業を継続している。
市民出資と善意の投資家
めざすのは歴史を尊重し、共感者を増やすこと。そのまちを愛している人をいかに巻き込めるか。市民出資の元では、利益優先主義ではないこと、空き家を適正に管理すること、歴史を尊重し、共感する市民を増やすことがモットーとなっている。不動産を買い取って、リノベーションして、再販する。その時の再販先は「善意の投資家」。彼らには、みんなでまちを守っていこうという、ヴィジョンへの共感がある。
善意の投資家とは、どういう人たちだろうか。どこで出会えるだろう。畑本さんは、「私利私欲でなく、町のためにまちをこうしたい、どうあるべきかを真正面から伝える。明確なヴィジョンを伝える。」「買ってくれと踏み込んで言えるかどうかが大事」。自身はまちとしてどうあるべきかを代行しているだけだという。きっと彼への期待と信頼からの投資ということもあるだろう。
●登壇者紹介
畑本康介 (はたもと・こうすけ)
NPO法人ひとまちあーと 代表理事
株式会社緑葉社 代表取締役
株式会社MMD 代表取締役
一般社団法人はりまのこ代表理事 ほか
1982年生まれ。中学時代に地元和太鼓団体へ参加したことで地域活動を開始。播磨の地域活性化に寄与すべくイベント企画や芸術家村を運営する「NPO法人ひとまちあーと」を仲間と設立。2014年代表就任と同時に会社員を辞め起業。開発型の観光客誘致ではなく、住民の想いを尊重し、町の暮らしに焦点をあてた活動を行う。2015年に、まちづくりのための市民出資会社を引き継ぎ、古い町並みを残すための不動産業のほか、地域産業の活性化のための地域商社や、事業所内保育所の運営をしつつ地域企業とともに地域循環教育の実現を目指す教育組織なども仲間とともに設立する。