建築家の、#新しい不動産業 とは? 谷中のエリアマネジメント
2022年3月14日に行われた「#新しい不動産業 Meetup」4日目のセッション2。谷中のまちづくりを推進する宮崎晃吉さん(HAGI STUDIO 代表)に、西田司さん(オンデザインパートナーズ 代表)が聞く。 ※ 研究所会員は全てのセッションをノーカット映像でご覧いただけます。
最小文化複合施、HAGISO
宮崎さんが設立したHAGI STUDIOのヴィジョンは、「世界に誇れる日常を生み出す」。建築設計デザイン、飲食店運営、宿泊運営など、多様なバックグラウンドの人たちが一緒に仕事をするスタジオだ。東日本大震災を機に、谷中に深く関わっていくことになった。谷中にあるアパート萩荘(1955年竣工)を解体しようかと、大家さんから相談があったことがはじまりだ。建物のお葬式を兼ねたアートイベント「ハギエンナーレ」を実施したところ、1,500人ほどの集客。風向きが変わった。大家さんに建物を残したい想いが生まれ、建築の維持が決まる。HAGISO誕生のきっかけだ。
まちに住む感覚の体現、HANARE
観光名所ではなく、そこに住む人の日常を感じさせたい。HAGISOをフロントに見立て、まちの銭湯を大浴場に、商店街をおみやげ屋に、というようにまち全体をホテルに見立てたらどうだろうか。宿泊棟として、新たに老朽化したアパートを改修し、飲食店として別の空き家をリノベーションし、まち全体を活かしていくチャレンジが広がりはじめたのが、「HANARE」だ。
コロナ禍ではじまった、谷根千での動き
谷根千「谷中・根津・千駄木」を定義つけた1984年創刊の地域雑誌『谷根千』(2009年に休刊)。いまなら、谷根千をどう伝えていけるだろうか。このエリアから新たな動向を伝えていく、WEBメディア「まちまち眼鏡店」をローンチした。発信するだけでなく、このまちを愛する人なら誰でも参加できる、参加型メディアだ。将来はユニークな不動産情報も配信していく可能性があるとのこと。
セッション後半では、建築家視点でのプロジェクトづくりから、パブリック視点での環境づくりへのきっかけや心境の変化。事業収益に対する長期的視点について。自身の満足度ではなく、周囲の賛同や満足度向上を進めることで、続けるエネルギーとなり、自身へのフィードバックも楽しまれているようだ。そこにあるアセットを最大限活かせば、地域コミュニティは自ずと強く楽しいものとなる。
●登壇者紹介
宮崎晃吉(みやざき・みつよし)
株式会社HAGI STUDIO代表取締役
建築家/一級建築士
一般社団法人 日本まちやど協会 代表理事
株式会社まちあかり舎 取締役
東京藝術大学 建築科 非常勤講師
1982年群馬県前橋市生まれ。2008年東京藝術大学大学院修士課程修了後、磯崎新アトリエ勤務。2011年より独立し建築設計やプロデュースを行うかたわら、2013年より、自社事業として東京・谷中を中心エリアとした築古のアパートや住宅をリノベーションした飲食、宿泊事業を展開。「最小文化複合施設」HAGISO、「まちやど」hanare、「食の郵便局」TAYORI、「まちの教室」KLASS、西日暮里スクランブル、asatteなどを設計および運営している。hanareで2018年グッドデザイン賞金賞受賞/ファイナリスト選出など。
西田 司(にしだ・おさむ)
株式会社オンデザインパートナーズ 代表取締役
オンデザイン代表、東京理科大学准教授
1976年神奈川生まれ。使い手の創造力を対話型手法で引き上げ、住宅からパブリックスペースまでどの規模でもオープンでフラットな設計を実践する設計事務所オンデザイン代表。都市や建築における人の集まる場の実験やコミュニケーションの可能性を探る実践を行っている。主な仕事として「ヨコハマアパートメント」(JIA新人賞、ベネチアビエンナーレ審査員特別表彰)、「湘南港江ノ島ヨットハウス」(日本建築学会作品選奨)、島根県海士町の地域学習拠点「隠岐国学習センター」、復興まちづくり「ISHINOMAKI 2.0」、DeNAベイスターズが仕掛けるまちづくり「THE BAYSとコミュニティボールパーク化構想」、「街のような国際学生寮」、工事現場の仮囲いをひらく「吉日学校」など。
東京理科大学准教授、大阪工業大学客員教授。ソトノバパートナー。建築とカルチャーを言語化するメディア「BEYOND ARCHITECTURE」発行人。