玉露(ICE BAHN):韻の地位を高める
私の敬愛する神奈川県のヒップホップcrew・ICE BAHNのリーダー玉露さんの47歳の誕生日に合わせ、略歴やラップの特徴をまとめました。crewの足跡も振り返ることができる内容です。
下線部はリンク付き。約1万8千字。
調べながら書きましたが、何か間違いがあればご指摘下さい。適宜修正します。
公の情報のみ拾っているので、本人の語らないところは書いてません。
前に書いたnoteと、重複する部分もあります。
◆1977年:葉山出身
玉露さんは1977年9月27日生まれ。175cm。
出身・在住は神奈川県葉山町。
ICE BAHNは全員神奈川出身とは言え、あまり地元のことをリリックに出すことはない。KITさんが横須賀、FORKさんが横浜で、同じ神奈川でも違う土地から集まっているというのもある。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/155130877/picture_pc_2ab2a6c2cc044a84557415d9451c6ced.png?width=1200)
ただ、KITさんとFORKさんに比べ、玉露さんは葉山・逗葉高校・日体大という自分がレペゼンするものの話をすることが圧倒的に多い。
ICE BAHNの曲で地元色が強いのは、2ndアルバムOver View収録の「LOCAL EMOTION」くらいかな。
この歌を聴き、筆者は先月葉山の聖地巡礼をした。歌詞の「やっぱり神奈川県の葉山だべ」を脳内無限ループしながら「ゲンベエのビーサン」見たし「葉山牛」食べたし「森戸の夕日」を見た後「絶景に夜景に絶対ニヤける」日を過ごした(「一色」だけ離れてて行けなかった)。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/155130985/picture_pc_5a7bb317c232a9ec52b6a226f8dd8318.jpg?width=1200)
KITさんFORKさんのバースと比べ、玉露さんは明らかに「御国自慢」要素が強い。
また、玉露さんだけ、4thアルバムRhyme Guard収録「HOT SNAP」という曲でも葉山の海を歌っている(「オアシス ブルームーンとハシゴして」とか)。
葉山愛が強いのは間違いない。
▶︎ブログのプロフィール欄16を見る限り、一色小学校→葉山中学校かな。
◆1990-91年:ダンス甲子園
玉露さんがヒップホップを好きになったきっかけは、中学2年生頃に見た「ダンス甲子園」。これは日本テレビ系バラエティ番組「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」内の企画で、1990年から翌年にかけて計3回開催されたものである。
以下、ICE BAHNのPodcast#8から引用。
ダンス甲子園っていうのが流行ってて(中略)右下に出るんだよね、使ってた曲が。で俺カッコいい曲をメモって、逗子のCD屋に持ってってこれ下さいって言ってたのが始まりだね。そんでそれ今思うとHeavy D & the Boyzの曲
中京テレビ「少年チャンプル」(2004-05)、日本テレビ「THE DANCE DAY」(2022-)など定期的にダンス番組はブームをつくる。そしてPodcastの同回で、日本語ラップの入り口についても語っていた。
▶︎Heavy D & The Boyz - Now That We Found Love
De La Soulを聴いててあれっこれ日本語じゃねーか?っていうのが俺の日本語ラップへの入り口
▶︎De La Soul - Long Island Wildin' (Official Audio) ft. SCHA DARA PARR, Takagi Kan (1993年のアルバム「Buhloone Mindstate」収録)
スチャダラパーは1994年、小沢健二さんとの楽曲「今夜はブギー・バック」が大ヒット。BOSEさんがフジテレビ系子ども番組「ポンキッキーズ」にレギュラー出演していた頃。
同年にはEAST END×YURI(GAKUさん、YURIさん、Rock-Teeさん、YOGGYさん)の「DA.YO.NE」、翌95年には「MAICCA」がミリオンセラーを記録(Rock-Teeさん抜ける前後?)。玉露さんもカラオケで歌っていたそう(Podcast#8)。
◆1993-96年:逗葉高校
進学先は逗葉高校。今年5月にお会いした時、筆者はその辺の話を玉露さんとKITさんに聞いていた。↓
玉露さんは入学して1週間経たないころ、同級生と喧嘩になり、相手を殴って謹慎になったという。
KITさんと出会ったのは高校に入ってから。クラスや部活が一緒だったのではなく、同じグループにいてつるむように。
玉露さんは「喧嘩するような不良ではないけど、そういうストリートチームにはいたから。スケボーとか。ボスみたいな奴がいて、グループみんなでいて。その中では一番悪いぐらい」だったそう。
KITさんは、玉露さんの印象を「とにかく騒ぐ。いるかいないかが一発で分かる。違うクラスでも。いつも廊下で騒いでたから」と語っていた。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/155131498/picture_pc_ba2377d215050b29f9d74c3c86763e05.png?width=1200)
◆1996年:ラップを始める&さんぴんCAMP
玉露さんがラップを始めた時のことは、「足跡」(2ndアルバム収録)で歌われている。
あの集中力ねえ KITが言った96年 「もしもし」「もしもし、シン!? 俺らもRAPやろうぜ!!」
っしゃ!! 偽造テレカで新たな希望得れた
あの公衆電話でもう終点は見えた
(KITさんはシンと呼んでいるのか!とこの曲で知った。公衆電話から電話かかってきたってこと?)
1996年3月に高校を出たと思うので、何月かによるけど…高校の終わりか、大学入ってすぐかな?
同じ1996年の7月7日、玉露さんはKITと一緒に、日比谷野外音楽堂で開かれた伝説的ヒップホップイベント「さんぴんCAMP」に出かけている(FORKさんは現地行ってない)。
Podcast#4によると、駅に着いた時にリハの音が漏れており、「初めて居ても立ってもいられないっていうかさ。俺ダッシュしちゃったんだよね、会場に。やばい早く行かないとって。なんかそういう異様な感じだった。こっから何かが始まる、みたいな」と振り返っている。開始前に雨が降ったのも印象深かったそう。
また、この時、玉露さんはLAMP EYE「証言」のレコードをゲットしている。
(証言の曲がかかったとき)アナログを円盤にしてひゅんひゅん飛ばしててさ。でそれがひゅるひゅるーって俺らのとこに落ちて来たんだよね。そんでもう10人20人がガーッて重なってって、もう本当に喧嘩になんの、取り合いで。もう「俺のもんだ、俺のもんだ」ってなって、もう三浦半島丸出しの、まあ当時俺とKITは若干イケイケだった部分もあって、ほんで勝ち取ってね。勝ち取って俺のだってなってもう一回取り返されたんだよ。「いや俺のだ」みたいな。でもう一回取り返して「なんだ?」っつって。で俺のもんだってね。で気付くとレコードバッキバキ
ターンテーブルでかけると、証言2が3秒くらい流れたとか。
◆日体大/サッカー
玉露さんは日体大出。これは歌詞にも出てくるしブログなどにも出てくる。
ちなみに同じく漢字2文字のラッパー、句潤さんと黄猿さんも日体大。
玉露、句潤、黄猿って名前の並びだけでアガるから、いつか3on3チーム組んでくれないかな?
▶︎3ショット(黄猿さんTwitter, 2020/12/05)
▶︎黄猿さんと玉露さん(2024/6/26)。この先輩っていうの、ラッパーの先輩でなく大学の先輩の意味だと思う。
▶︎黄猿さんは戦極に出てほしいMCで玉露さんを挙げている(Twitter, 2012/02/19)
競技はずっとサッカー、カズとガットゥーゾが好き(ブログのプロフィール欄参照)。
奉行さんとFORKさん(=KITさんも同じ大学)も、高校と大学名をPodcastで口走っていた。
ネットで、FORKさんが早稲田大学卒業と書いてあるまとめ記事を3件見つけた。これは嘘。早大出ではない。
(余談ながら、FORKさんとKITの大学の学生は毎年私の地元に来るので縁がある)
◆1997年:STMLANT結成
そこまでの切符はふんだくると
振り向かんと組んだクルーだSTMLANT
ICE BAHNの前身はSTMLANTというcrew。インタビューを探してもほとんど出てこないので、5月に会ったとき直接確認した。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/155131310/picture_pc_d4279ce2bc00f438ed3e34532aebe0e3.png?width=1200)
俺とKITと大学の友達が2人、それとICE BAHNにはFORKが入る前、別のMCがいた。その5人組。5人ともMC。DJはまだいなかった。このうち一人は小中高大、俺と一緒。住むとこも全部一緒だった。KITと俺と3人で一緒に住んでた。何年何月に抜けたかは覚えてないけど、こいつが大学卒業する時に抜けたんだよ。B BOY PARKに初めて出る時にはもう抜けてた
STMLANTの活動期間は1997〜2001年。
横浜のCRIBや渋谷のFAMILYで活動していた。
◆1997-98年頃:KITさんと同居開始
Podcastによると、大学入学後に友人と一緒に同居を始め、1年くらい遅れてKITさんも住むようになった。だから多分1997-98年頃。
本人に念押しして確認してないけど、Podcast#28で「16年」同居してたと言っていた。
玉露さんの結婚は2014年5月(podcast#14)とのことなので、玉露さんが結婚する前までKITさんと一緒に住んでいたということになる。
にわかには信じがたいが、本当?
アパートの隣の部屋とかじゃなく同居?
大学進学を機に友人と同居→結婚してからは家族と住むってことは、玉露さんは47年間、一人暮らししたことないってこと??
この辺、今度教えてほしいです。
◆1998年頃:FORKさんと出会う
2歳下のFORKさんと、二浪したKITさんが大学に入ったのが1998年。KITさんにいつ頃FORKさんと出会ったか尋ねたところ、「多分入ってすぐ」とのことだったので、玉露さんもFORKさんに出会ったのは98年頃だろう。第一印象を「顔より髪が大きかった」と話していた(FORKさんはこの頃アフロ)。
FORKさんが旧crew・BIG SWELLで参加したチッタのコンピレーションアルバム「One For All」(1999年リリース)の制作の際はFORKさん達に機材を貸し、収録にも立ち会ったという。
FORKさんによると、初期の玉露さんはバースごとに声の高低を変えていた(podcast#25)。Slim Shadyみたいな…?Benjazzyさんみたいなこと…?
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/155131793/picture_pc_c66fce915629decfa2fd2ad34e4edd88.png?width=1200)
◆六重塔
5thアルバムLEGACY収録「THE ANSWER」のKITさんのリリックに、「六重塔」という単語が出る。最近やっと意味が分かった。
Podcast#17(15m〜)によると、日体大の学祭にアントニオ猪木が来ていた真裏で、BIG SWELLとSTMLANT(色々あってこの時は六重塔という名前でやってた)はライブをした。
オリジナルではなくBlack Starのトラックを使い、この時KITさんと玉露さんは初めて小節という概念を知ったという。
その前は言いたいことを言い終えたら終わってて、タイミングが合わないとyeahで誤魔化して入っていたため、6.3小節くらいの中途半端なところで終わり毎回フローが違っていたとか。
(FORKさんはターンテーブルを触ることからヒップホップに入ったため、小節の概念を理解していた。)
この頃の音はテープで残っている。「足跡」で、KITさんが「小節シカトでローテクイヤホンで全部仕立てるレックしたテープ」と歌っている。
◆MCネームの由来/Dev Large
今お買い得僕ちゃん その名も最高級緑茶
玉露さんは、MCネームの時点で方向性が固まっている。由来を聞けば頷く。
Dev Largeがすごい好きで。デブっていう日本語のカッコ悪いイメージをカッコ良くさせるという。Fatっていうと向こうだと単純にデブっていう意味だけじゃなくて、ちょっとカッコ良いっていうニュアンスが入る。で日本語のデブっていうのもそういう風にしたいっていう趣旨のことを言っていて、その発想というか思想にヤラレたっていうかな。
とにかくダサくて…俺が始めた96年ぐらいはフライヤーにアルファベットしかなくて、漢字にしたい。ダサくて漢字、あとは単純に昔からなぜか色の緑が好きで、その3本柱で行き着いたのが玉露
Podcast#6(52m〜)によると、当時は「featuring玉露」ではなく「玉露入り」と書かせるという野望があったという(Zeebra 玉露入り、みたいな)。
玉露を名乗る前のMCネームは「ブラックワン」(本名に「クロ」と「イチ」が入っている)。そんなUSかぶれな名からよく一気にシフトチェンジしたな…!最近もTikTokでブラックワンチャンネルという言葉を使っていたが、由来はこれ。
「ヒップホップが好きで好きでしょうがなくて。向こうの黒人のノリっていうのかな。そういうのが本当カッコいいと思ってかぶれてたやつだったから」。しかしそれが痛いと気付き、KRSワン、ビーワンなどUSラッパーと「かぶっている」と感じたのを機に、別の名前を考え始めたそう。
◆2001年:ICE BAHN結成
つまり永遠のG&Kに 頑固でいかすメグちゃんと 韻踏むF&BでICE BAHN2001
(このBは奉行さんじゃなくBOLZOIさん)
浪人したかにもよるけど玉露さんは2000-01年3月に大学卒業、KITさんとFORKさんは02年3月卒業だと思うので、crew結成はその頃。
何月結成?と玉露さんに今年5月に直接聞いたけど、覚えてなかった。以下、その時の発言。
(STMLANT解散のきっかけは?)とりあえずみんな就職する組と、これで勝負する組とに分かれた。
(IB結成は何月?)何月だろう。とにかくね、ICE BAHNを作ってからB BOY PARKに出た。「from ICE BAHN」って付けて出るために。(新宿イズムでやっていた)シンクロニシティというイベントで、KITとDJと3人でやってた時にFORKが参加して、とりあえず1曲作ろうってなって、それが「B地区」。
FORKさんのインタビューでは加入は8月のBBP終わった後って見たことある。時期は記録にも記憶にもないのだと思う。
Podcast#6によると、ICE BAHNの名前の由来は定かではないものの「外人にも日本人にも通じる名前にしよう」という狙いがあった。日本で定着している外来語、という意味。
いろんなの挙げてたんだよな。俺とKIT二人で考えてたんだけど。でパッと俺の部屋にスノボかなんかの写真があって。「アイスバーンは?」「アイスバーンいいね」みたいな。本当それも軽いノリだね。なんかそこに意味を込めてってのは勿論後付けだよね
アイスバーンは正式にはEisbahn(ドイツ語)。eisは「ice」、bahnは「train、railroad」だけどeisbahnだと「スケートリンク」の意味になるみたい。つまり、crew名は英語の「ice」とドイツ語の「bahn」を組み合わせた造語である。英語の「燃える」は「burn」だし、barnは納屋。英語でアイスバーンと言って路面凍結の意には取られない。black ice、icy road、frozen roadとかになるだろうか。
ドイツにも「ICE bahn」という鉄道があるけど、このICEは氷ではなく「InterCityExpress」の略(ICE、発音はアイスじゃなくドイツ語のイーツェーエー)。bahnがtrainなのでICE bahnは都市間高速列車の意味。
神奈川のアイスバーンとドイツ鉄道以外で「ICE BAHN」表記を使っていたら、それはおかしなこと。
だって英語でもドイツ語でもない、造語なんだから。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/155131913/picture_pc_3ba88c85f974ce08279a767b854a6adb.png?width=1200)
◆リーダー
ICE BAHNに関する記述で、「FORKを擁するICE BAHN」「FORK率いるICE BAHN」などの表現をたまに見かけるが、FORKが所属するICE BAHN、くらいが妥当だと思う。ICE BAHNのリーダーは玉露さんだから。FORKさんのインタビューを見ると玉露さんへのリスペクトがとても強いし、やっぱりICE BAHNは玉露さんのチームだなという感じがする。
KITさんは「FORKと俺は超だらしないから、玉露がいないと完全にクールになれない。玉露は半端じゃなくしっかりしてる。締めるところは締めるってより、常に締まってる」と話していた(筆者のnote参照)。曰く「玉露はいつも冷静」とも(Podcast#10)。
FORKさんはKoK優勝者密着インタビュー(2022/03)で、ダンジョンに出ることを決めたのはジブラさんから電話来たからで、スタッフからならやらなかったかも、と話していた。
「それはICE BAHNで学んだこと。特に玉さんが、昔から筋が通ってるかを常に基準にする人間だったから」とのこと。
そんな玉露さんがリーダーのICE BAHNは、これまで喧嘩したことがない(Podcast #28)。25年ほど一緒にいてそれはすごすぎる。
KITさんは昔、家の時計を全部20分早めていて時間の概念が無かったというし、
FORKさんもそのKITさんからだらしないと評されているし、
奉行さんは玉露さんの結婚式にご祝儀持って来なかったと暴露されているから、
普通なら喧嘩する要素ありありだと思う。
けど、はちゃめちゃなことが起きても玉露さんは「それでこそICE BAHNのメンバー」と笑って話すからすごい。
一言で言えば、磊落。
玉露さんに感化され、KITさんもFORKさんも他人への許容範囲が広くなったのではないか?と推測している。(奉行さんは元々深く考えないタイプなだけの気がする。)出る杭を打つ日本人の「他人に迷惑かけるな」思想よりも、「皆他人に迷惑かけ合ってるんだから許せ、楽しもうぜ」的マインドを感じる。
FORKさんは無関心の幅が広いけど、玉露さんはどんなトピックにも自分の意見を述べる方なので、なんでも許すのではなくおかしいことはおかしいと言う人なんだろう。「ちゃんとする」の軸が、社会人としてちゃんとするじゃなく、人としてちゃんとするってことなのかな。
筆者も勝手にICE BAHNについて膨大な文字量を書いているけど、これはICE BAHNだからやっているという部分がある。「●●って書いてるけど◎◎って表現の方が適切」「俺はそういうつもりでやってない」とかいちいち言ってくる人たちではないと知っているので(事実誤認は指摘して下さい)。
ネチネチした部分がないというか。漢気というか。
玉露さんはヒプノシスマイクのスタッフにライブの写真か映像のチェックでNGがあるか聞かれた時を振り返り、「NGなんか今までの活動で出したことねーよ」と話していた(Podcast#38)。チェックすらしなかったと。
これはすごい話だと思った。なかなかそんな人はいない。不特定多数に見られるんだから、どう見えるか普通は気にする。
◆2001年8月:BBPでKREVAさんと対戦
2001年8月、玉露さんは「2001 B-BOY PARK MC BATTLE」に出場。本戦1回戦へ進み、3連覇する最後の年のKREVAさんと当たっている。そしてこれを機に世に知られるようになった。
blast 2003年1月号に「予選を圧倒的な力で通過し、打倒クレヴァの一番手と目されながら、本戦一回戦でそのクレヴァに敗北した玉露」という文章があった。初出場で知名度は低いと思うので、打倒クレヴァの一番手という評価はすごい。
KTCCは01年5月にスーパーオリジナルでメジャーデビュー、7月にイツナロウバをリリースした頃。11月にクリスマス・イブRap、02年1月にマルシェを出し、その年の紅白に出場している。
00年DA ft.我リヤ「Deep Impact」、02年がRS武道館、03年RS単独5万人ライブ。メジャーの日本語ラップは社会現象といえる時期だった。
ちなみに8mileが03年公開で、日本のMCバトルは黎明期。
▶︎晋平太さんの解説動画。
結果はベスト16、そしてROCK-Tee賞。
これをきっかけにROCK-Teeさんに声を掛けられ、1stアルバムSTARTREC収録「超聖水」やIB法のアナログ収録の「良い子のラップ講座」に繋がったはず。
玉露さんのブログのプロフィール欄に「好きなBEAT MAKERは、BEAT奉行、ROCK-Tee」とあるのもそれ故だろう。
KREVAさんとの対戦後は「歩き方も変わった。見られる意識が出たことで、バトルに出る理由の50%が終わった」と話していた(Podcast#9)。
当時の視線維持 けれど依然未知 終点見せん位置
だから出るしかなかったバトルで出番まで テメーに言い聞かした俺ぁICE BAHNだぜ
メンバーのドッグタグ握り負けなんかねーって実際はマイク滑るほど汗ばんだ手
お陰で以前と比べ知名度も上がりイベントもノルマからギャランティー
◆2002年:B-BOY PARK 3位
2002年8月15日のBBPは第3位&KEN-BO賞。
本戦1回戦 ○vsイッシワン
本戦2回戦 ○vsタイチョウ
準 決 勝 ●vs般若
3位決定戦 ○vs降神
blast 2002年11月号に大会レポが載っている。
「大超戦は玉露がフリースタイル中、『まだ時間はたっぷりあるぜ』としきりに時間を気にし、不調を思わせたが、最後の最後、『まだある3秒間/お客さんは玉露さんに感動だー!』とピタリとつじつまを合わせ勝利」。この頃から言葉選びにオリジナリティが出ている。
般若さんとの試合は「振れ幅も含め、日本のフリースタイルにおける最先端」との評価。玉露さんみたいなMCって少ないから、玉露さんと当たればどの試合も「振れ幅」になる気するけどな。この準決勝の全文文字起こしはblast 2003年1月号に載っている。
3決は「途端に攻撃性を増したオリガミと押韻へのこだわりを表明し続けた玉露の3位決定戦ももうひとつの振れ幅として興味深かった」という批評がなされていた。玉露さんは「入賞中最もオーソドックスなライミングだった」とある。この時点で、やっぱり韻なんだな。
玉露さんは結果を残したため、2003年のBBPはKITさんとFORKさんだけ出ている。
この般若さんとの試合前、ICE BAHNの3人で吉野家へ行ったものの、緊張のために牛丼の並を残し、なおかつ玉露さんはトイレで吐いたというエピソードがある。FORKさんは貰いゲロするタイプなので、見張りをしながら空吐きが出ていたそう(Podcast#22)。
◆2005年:3on3
2005年1月9日、ダースレイダーさん主催の3on3 第1回大会でICE BAHNは優勝。
同年11月22日、3 ON 3 FREESTYLE MC BATTLE GRAND CHAMPION SHIP決勝大会でも優勝した。
決勝はKITさんFORKさんが負け、カルデラビスタさんに玉露さんが勝つという熱い展開だった。
▶︎黄猿さんは3on3 2005の玉露さんを最強と言ってくれている(Twitter, 2024/09/18)
◆その他のバトル歴
◇2009 B BOY PARK 3ON3 Professional MC Battle (Qさん、ツボイさんとチーム)
◇2012/08/25 clean upエキシビションマッチ、vs ERONE
◇2013/04/27 ENTER、IBvs 韻踏
◇2013/12/29 AsONE、IB(初代王者)
◇2014/08/30 AsONE、IB
◇2015/05/04 AsONE、IB
◇2015/12/30 AsONE、IB
◇2016/04/23 ENTER、vs ERONE
◇2016/05/29戦極14章×AsONE、IB
◇2016/12/30 AsONE、IB
◇ 2017/01/18&25 ダンジョン、IB
◇2017 B-BOY PARK MC BATTLE、ベスト4
◇2018/03/30 SOWL VILLAGE、IB
◇2018/04/29 AsONE、IB
◇2018/11/25 SPOTLIGHT ●vs ERONE
◇2019/04/29 戦極Crossover Ⅳ AsONE×戦極
IB◯vs BOIL RHYME
IB●vs JAKE×早雲
◇2020/04/29 SPOTLIGHT(フライヤーに玉露さんの名前あるの見たけど、多分コロナ禍で大会ごと中止かな?)
▶︎筆者作成のバトル一覧はこちら(FORKさんKITさん分も含む)
玉露さんってバトル出ないの?に関しては、FORKさんがカマしてないなら兎も角、FORKさんがIBがどういうcrewかを見せてるから自分はいい、とPodcastで話していた。
◆ICE BAHNの活動
ここから先はICE BAHNがリリースした音源を聴いたりライブ映像をあさったりすれば玉露さんの歴史を振り返ることができる。特に大事なリリースは下記の通り。
◇2003/12/15 1st「STARTREC」
◇2006/06/03 ep「Jack Hammer」
◇2008/07/11 2nd「Over View」
◇2011/11/11 3rd「Loose Blues」
◇2011/11/11 ep「現盤」
◇2013/07/12 4th「Rhyme Guard」
◇2018/11/21 5th「LEGACY」
▶︎他は多すぎるので筆者が作った楽曲一覧をご参照。
客演たくさんあるけど、特に親交が深いのはClean Upメンバー、韻踏合組合、HIKIGANE SOUND、TSUBOIさん(アルファ)、Corn Headさんだと思う。Rock-Teeさん、YUTAKAさん、YOSHIさん、KOHNOさんの話も結構出てくる。
▶︎ライブ映像の一覧はこちら
主なライブは横浜bridgeで毎月第4土曜に開催してきたホームイベント「Clean Up」。これ今年末で終わるので、未体験の方は是非年内に。チャンスは残り4回。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/155132080/picture_pc_567e46dc7cb284246c53392d6bc65667.png?width=1200)
◆crew愛
俺ら死んでもつるむ ずっと軍団
FORKさんがテレビ出演などの際に「名前の後ろに(ICE BAHN)って付けて」と言っているのは知られた話だが、リーダーである玉露さんも当然crew愛が強い。
▶︎FORKさんのcrew愛については私の過去記事を参照!
玉露さんのブログのプロフィール欄に、以下の説明がある。
① 全てにおいてICE BAHNが最優先となります。
② いかなる理由及び利益があろうとも、ICE BAHNの名前を出せない仕事は、お受けしておりません。
玉露さんは影響を受けたラッパーとして、Dev LargeとM.O.P.を挙げている(Podcast #13, 54m〜)。Lil' Fame (Billy Danzeの方かも、裏取れず)が雑誌のインタビューで「俺が8小節を貰ったら、4小節は自動的に相方のものだ」と話していたのを読み、「常にcrewの中に身を置くっていうカッコ良さに影響を受けた」という。
ソロ待望論ってよく出るけども。Podcast#16で、ソロ活動について、KITさんは「ICE BAHNでラップすることに誇り持ってるからやる気はない」とサラッと話していた。
玉露さんは「ソロアルバム作ったら一番いいのはキッチャンだと思う、音楽的センス一番あるから。俺のとか聞けたもんじゃないと思う」と、リーダーらしくて最高すぎる答え。ラッパーって自分が一番カッコいいと思っているものだと思うし玉露さんもそうだけど、自分がというより「俺たちが一番カッコいいんだから外野は黙ってろ」という姿勢を感じる。
(ちなみに玉露さんソロは3rdアルバム収録「KIZUNA 13」、ep現盤収録「体育ライム背水の韻 ft.だるまさん」)
また、Podcast#22で玉露さんは「ICE BAHNの入り口はFORKでいいけど出口はKITであってほしい」と話していた。自分を出さない辺り、リーダーらしさが出ているコメント。最高!
crewソングといえる立ち位置の曲がいくつかあるが、中でも4thアルバムRHYME GUARD収録「ヒストリア」は、名曲だ。玉露さんブログのセルフライナーノーツも名文(2013/12/24)。
KITと逗子のシミズ電気でアイワの980円のマイクを値切ってから16年。
FORKと合流してICE BAHN名乗ってから12年。
決して短くない時間が流れてその中の相当数を共に過ごして来た。
「ICE BAHN」という実像がない物の名の下で。
当然、色々失ったと思う。色々。 こんな俺でもやっぱり考える時がある。
「ICE BAHN」がなかったらどんな人生を歩んでいたのだろうかと。
でも、いつも答えは同じ。いっつも。 恥ずかしいから書けないけど。
◆ダサかっこいい
玉露さんのスタイルは、ラッパーとして世に出て来た時からずっと変わっていない。今年5月にKITさんにお会いした時それを確認したら、「特に変わってないんじゃない?ただやっぱり録るたび良くなってる」と述べていた。
中でも「ダサかっこいい」は、玉露さんのMCネームの由来の通り、最初から一貫している部分。ICE BAHNというcrewの根底に共通してあるものの一つだとも思う。
同じ5月、玉露さん本人にMCとしての変化を尋ねたところ、「なんかもう何やっても大丈夫っていう考えになった」と話してくれた。
よりラッパーらしくない、よりダサい、それがよりカッコいいみたいな。なんかヒップホップはさあ、オリジナルだからカッコいいんであって、カッコいいからカッコいいってのは違うと思うんだよね。だからオリジナルであれば、そいつがどうなろうがカッコいい
そして雑誌「Fine」でのDev Largeの「カナヅチMCに死を」という言葉、BUDDHA BRAND「人間発電所」の「便所コオロギKILL真っ二つ」というリリックが原点にあると話していた。普通だとダサいのに、ヒップホップだとそれがカッコ良く成立していることのカッコ良さが初期衝動としてあるのだという。
実際今に至るまで、その独特の声と独特のキャラクター、独特のリリック、独特のワードセンス、独特のリズムの取り方が全て「玉露」って印象なのがすごい。
(The Skilled remixの歌詞)「ブンバボン」をカッコ良く言えるのははっきり言って俺だけ
ブンバボンはNHKの子ども向け番組に出てくる曲名。普段リリックでまず見ないであろう言葉をヒップホップとして成立させるのは、玉露さんのキャラクターあってこそだと思う。
「ジャパネット高田みたくまたGETお宝だ
まだベッドだがな マジ面倒でも始めんぞ」(クラウチングロケット)
「円高ドル安還元セール 現ナマ取る奴顔面セーフ 早くラッパーになりたい 和訳ばっか身なりRHYME 本題、音大でもねぇ俺らが
これから何か問題でも お問い合わせは通話料無料のフリースタイルまで お忘れなくweeklyスリーサイズだけ」(jackass RAPPER)
「ひっちゃか めっちゃか いっちゃかべっちゃか さすがIBだ大丈夫 100人乗っても 客にとっても 脚韻とっても最高級」(スタイルⅣ)
ジャパネット高田も通話料無料も、玉露さんの生み出す独特のサウンドに生かされ、結局カッコいい。なんだかんだカッコいい。
◆ダサくなくてもカッコいい
ダサカッコいいワードが多く出るけど、ダサくなく普通にスマートにライムしててもカッコいい。
戦場のリアリストIIの玉露さん大好きなんだけど、
これ終始クールに踏んでると思う…けどノセ方とか音のハメ方とか結局玉露さんらしいと思ってしまう。
誰が行くとか人選もない
俺しか乗れねぇ人間魚雷
強風 波浪 どうする? バロウ!
やるしかねんだから強行だろう!
連発 テンパる 連絡 転落 戦略 変なる メンタル 以上
それが部隊の内部に常識 要はRHYME至上主義
敵味方識別方法 しゃべり方生きてる即興
排他的 水域 入った敵 見敵必殺 金的ー発
俺らのみのリアル ノリノリやる 確定 海のリハク
翌日にはお墨付き 潮風なびかす旭日旗
ep現盤収録「バサラ者」も同じく。「今更もういい地位も若さも 所詮ラッパー風情の婆娑羅者 破天荒な転倒も時の運 そん時も直ぐ度肝抜く」。二枚目〜!カッコいい〜!!
◆子音のこだわり
FORKさんも言ってたが、玉露さんはとにかく踏みまくるスタイル(FREAKOUT!, 2022/06/27)。
FORKさんの韻の固さを誰しもが知っている。なのに、玉露さんは「俺より固いやつは聞いたことがない」(sukikatte, 2018/02/10)と言っていた。これをFORKさんの前で言えるの、玉露さんしかいないと思う。
「俺たちってなんとなく、韻踏んで内容薄い
って言われがちなのかなって感じるんですけど、“あ、そういうレベルね”っていうか。バカバカしいっていうか、絶対お前ちゃんと聴いてねえだろっていう。韻が堅い=内容薄いみたいな捉え方は絶対許せないですね。そんなのは俺たちとっくに終わってるから」(「blast」2004年2月号)
「(IBの考える完璧な韻とは?)そのビートに合ってていうものかな。かつ韻同士のテーマがぶれてない」
「ハッキリ言って即興で韻踏むなんて朝メシ前っていうか。堅さだけでいったらすぐ書けるんだよね。だけど『音』と『内容』に合わせるっていう作業が加わるからすげー時間がかかる」(「月刊ラップpresents RAP!!」vol.2 2008年冬号)
RHYME至上主義は初期から今までずっと徹底している。
ヒップホップにおけるパンチラインはやっぱりライミングじゃないと。別に俺らコピーライターじゃねえんだし。やっぱラッパーだし
Podcast#13では「イワシ、タイの差/言わしたいのさ」(DOUMO/NOTABLE MC)というOHYAさんのライムについて「ライミングの頂点が同音意義語なのかなと考えるきっかけとなったライム」「初期衝動が残ってる」と述べていた。
「ビートのスネアのところにカ行かタ行を当てる」「『愛』と『秋』は、確かに母音上は踏めているんだけど、俺の中では踏めていない」(sukikatte, 2018/02/10)
「(自分の韻の踏み方について)あかさたなの特徴を把握することかな。例えばあいうえおだったら前の言葉について一文字のところ。それを自分なりに把握してやってるかな」
「紙の上で書いてたら踏めててもビートに合わせて発音すると実は踏んでるように聞こえない事態に陥りがち。逆に紙の上で踏めてなくても言葉に出してラップした時に踏めてたら、というのにこだわってるかな」(ライムガード付属DVD)
どの曲を聴いても明らかなんだけど、玉露さんが一番口に出した時の語感、音としての言葉の気持ち良さにこだわっている。最初ライブ映像を見た時、踏みすぎていて何て言ってるか分からなくて、歌詞カード見てびっくりした。
「台本無くちゃ大根役者は体温有るギャル対コンニャクさ 倍今夜無茶しRIDE ON訳しゃ 多分やった分無いこんな歌」(CHECK RAVE)
「向き不向きムキになって次踏む気 愚痴はブチ抜き 無知な口が武器」(あまのじゃく)
「静かに鷲掴み She is coming
マジ上手い字面に歌詞使い
月夜の晩工作し 好き者ファン酔う策士」(NIGHT STALKERS)
最初に音で聴いて、次に歌詞カード見て「ここ、こう言ってたの?」と気付くとき。歌詞カードを見てふむふむと思っていても、音源で言葉を音として聴いたとき。瞬間、脳汁ブワッと出る感じ、開眼させられる感じこそ、玉露さんの魅力だ。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/155132166/picture_pc_4950c9be3bc6d1a9b6d02d20061a6d74.png?width=1200)
◆韻に新しい概念を加える
玉露さんは、言葉以外でも踏むことにこだわっている。
例えば4thアルバム収録「SATISFACTION」では、「後のリリースで赤裸々に出来たら良いが(ゴホン=咳払い)」と、実際に咳払いをすることで赤裸々にと踏んでいる。
この手のことを俺は追求したいんだよ。踏むっていう概念を違うところに行きたいっていうかな(中略)コレとコレで踏んでないっていうのはまだまだ勿論あるけど、それよりもう一個新しい概念を加えてやろうっていうのがあって
同じアルバムの「寝言」でも、「嫁にアレみたい 即確認 直角に聴覚に 実は実話で(ふああ〜=大あくびの音)」と大あくびを実際にして、大あくびとは言わないということをしている。
また、3rdアルバムLoose Blues収録「HAPPY HAPPY」では、「仲間と詞合わせる時が絶対俺は言えねーが(…)」と歌っていて、(…)部分は何も言っていない。ただ曲名と直前の単語から、言葉に出さなくても押韻が脳内で補完されるような仕掛けがなされている(ちなみに歌詞カードを見るとちゃんと「幸せ」と書いている)。
もう一つ、2ndアルバム収録の「真夜中の談義」。
もう限度かって放っとけ~よ 貢献度だけDON'T FORGET
狂言と勝手そっとメンゴ 儲けとかって……
儲けとかって、の後に実際はホーホケキョという口笛の音が入り、口笛で韻を踏んでいる。
口笛でウグイスの鳴き声を入れて、そのあとに「ホーホケキョ」の母音で踏んでいく。踏むっていうところに新しい概念を入れ込みたい、ってその時すごく考えていて、それこそ動詞・名詞・助動詞・接続詞みたいなものとは、別系列のものを持ってきたかった
まだある。5thアルバムLEGACY収録「負ける気がしねぇ」。
だってRHYME喰い散らかすケダモノ
って俺らだけだもの
その野生の勘が左遷はさせん スイヤセン
見分けるダセーのは
↑歌詞カードはコレなんだけど、「俺らだけだもの(カーッ、ぺッ)」と唾を吐く音が入っていてそこでも韻を踏んでおり、スイヤセンは「サーセン」で発音しているから、そこでも韻を踏んでいる。発音通りサーセンと書いても別に良いと思うんだけど、意識的に書かないところに玉露さんの遊び心を感じる。
「韻トロデュース」で「性は愛す晩」と字を当てるなど、歌詞カードを見たときに一番驚きと発見があるのが玉露さんのリリックだ。
なおリリックについては、Podcast#38で「ラップは、誰が聞いても解釈のズレがないのはダサい。解釈の幅を楽しませたいししっかり意識してる。聞いて、これを言ってんのねと分かるとつまらない。あれってどういう意味なんですかと聞かれたら分かんないと答える、答えても仕方ない。ラッパーの書く文章に正解求めたらヒップホップじゃない」という意味のことを話していたので、質問しない方が良いんだと思う。FORKさんは逆に種明かししたい、みたいなことを言っていた。
◆オリジナリティ/Next Stage
声を聞かずとも、歌詞カードに名前が書いていなくとも、言葉を追うだけで玉露さんのリリックだと分かる。それほど強烈なオリジナリティがある。
3MCの個性を一番実感したのは、実はICE BAHNの曲ではなく、歌詞提供で参加したヒプマイ(=ヒプノシスマイク、キャラクターがラップするコンテンツ)。
この曲の初公開は、アニメ2期(2023/10/14)のED。ヨコハマのキャラが主役の回だったため、もしかしたら…と期待してリアタイしたところ、予想的中!ICE BAHN作詞曲だった。 リアタイした時は、作詞者のクレジットが出るのは結構後。一人目のサマトキ(FORKさん)までは「え、え?まさか?」て感じだったけど、二人目のジュートで確信。クレジットが出る前に分かった。
けりつく屁理屈にも笑み作る 目にもん見せたがmany many many more
この踏み方は玉露さん以外有り得ないからだ。
キャラを演じる声優さんは、玉露さんとは全く異なる声質(高めでキリッとしている)。それなのに隠せない玉露さんらしさ。本人がラップしていなくても分かるというのは、オリジナリティの極地。本人が歌わないことで、逆に個性が浮き彫りとなった。(ICE BAHNヘッズだからこう書きましたが、普通に聴いたらジュートのラップにしか聴こえないです、もちろん!)
▶︎もう一曲のHunting Charmという曲も玉露さん成分強すぎる。
◆家庭菜園と海と犬
玉露さんとKITさんがよく着ているOG classixは、IBとゆかりが深い方の旦那さんのアパレルブランド(Podcast#24)。
玉露さんは海が好き。そして家庭菜園とか植物を育てるのが好きらしい。緑が好きってそういうこと…?
玉露農園は、梵頭さんのYouTubeに登場する(2023年8月12日)。
葉山を観光した時に、やたらと「三浦野菜」とか地場産野菜を売りにしていたのを見た。
THE葉山の男!って感じなんだろうな。
犬好き(「言い逃げ」に愛犬が出てくる)。
酒は飲めない(「超聖水」)。
煙草は吸わない(Podcast#26)。
9歳の女の子と6歳の男の子の父。
ヘッズ成り立ての頃、玉露さんは風俗と巨乳の話をやたらとするな?演出かな?と思っていたけど、digを深めるにつれ、演出ではないと分かってきた。
◆玉露ブログ
玉露さんはブログをずっと書いている。長年の蓄積は膨大な量で私もまだ全部読めていない。昔の出来事調べる時の史料としても役立つ。すごい独特な言葉遣いで、面白い時と大事なことを急に言いだす時とがある。Twitterが主流になり、長文を綴るMCは少数派なのでは。最近も更新してるから是非チェック!
(ブログにある「ドキドキする事やめられない」は、リンドバーグ「今すぐKiss Me」から。オレンチ通信は、アダルト雑誌「オレンジ通信」から。RHYME GUARDは炭酸飲料「LIFEGUARD」から。IBは、そういうのが好きな人たち)
▶︎玉露さんのブログ
◆韻の地位を高めたい
最後に、玉露さんがいろいろなところでずっと言っていることがある。
日本のヒップホップって『音』の部分では凄いと世界的に評価されるけど、『韻』が凄いとあわよくば馬鹿にされるっていうか。『韻』っていうものの立場を『音』っていう立場と同じ位にしたい。日本語ラップでは韻の地位が低い
韻の地位を高めたい、というのはPodcastや他のインタビューでも聞いた。今のシーンを見る限り、多分目指すところは今後も同じだろう。日本語の押韻の気持ち良さに目覚めれば、ヘッズが行き着く先は、きっと皆ICE BAHNになる。
玉露さん、47歳おめでとうございます♪
たくさんの祝福を受ける週末でありますように。
▶︎今年3月のFORKさんの誕生日に合わせて書いた記事。FORKさんの好きなところを1万1千字書いてます。(KITさんは5月生まれだけど、知らなくて間に合いませんでした…)
▶︎今月のBEAT奉行さんの誕生日に合わせて書いた記事。お会いして聞いた本人の談話です。
▶︎ICE BAHN関連記事を、2024/9/27現在50本、計約28万字書いています。おすすめをピックアップしましたので、コチラもご高覧下さいませ。