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傾斜地の設計者 ~熱海の崖に家を建てる【設計編】
最初のnoteをリリースしたのは、土地の決済できると思ったからなのです。ところが諸事情が発生し、もう少し時間かかりそうなことがわかりました。最初の土地売買の契約からすでに2年3ヶ月かかっていますから、ここまでくると多少の時間は誤差です。果報は寝て待て、ですね。
実は土地の決済を待ちきれず、設計者と設計を始めてしまっています。今日は彼らとの出会いの物語。
熱海の崖に家を建てようと思います。
名付けて、熱海Case Study House。
自腹でケーススタディしながら、
今そこにある技術・アイデアを実装した
現代のCase Study Houseを目指します。
LiDARで森を計測
LiDAR(ライダー)の実物をみたことある方、いらっしゃるでしょうか?
レーザー光を照射、物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間を計測し、物体までの距離や方向を測定する機器です。
ニュース番組で、自動運転車の上でぐるぐる回っている機械をご覧になったことがある方もいらっしゃるかもしれません。
2年前2019年の夏、現地をみたいと言って、熱海の崖にVUILDの秋吉浩気代表取締役がやってきました。大学時代の指導教官であった慶應義塾大学の田中浩也教授とともに、メンバーの背負子にLiDARを括り付け、森をウロウロ歩き始めたのです。
その日の夜、田中先生がシェアしてくださった3D地図には、森の木が一本一本描かれていました。冒頭のサムネイル画像がそれです。
LiDARで計測したのだから、木々の距離や形状、位置関係を三次元で把握できるのは驚くことではないのかもしれません。
私からすると、山林の計測にLiDARを使うなんて思いもよらなかったし、その描写があまりにリアルで、妙に感激したことを覚えています。
脱線しますが、田中先生のチームは鎌倉の街全体を3D化するプロジェクトもされているそう。街をVRで楽しめるようになると熱海の新しい使い方が生まれそうです。スケールの大きなケーススタディ!
やりたいことが拡がりますね。
ホームセンターでの出会い
話をもとに戻しましょう。
私たちがVUILDを知ったのは、ダンナの検索癖のおかげでした。
この日はネットの海から、"オリジナルな椅子をつくる"ワークショップをみつけ出し、休日のレジャーに出かけたのです。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/51834245/picture_pc_4dea075c28e05bc60114196be8ccafea.png?width=1200)
当時、Shopbotという木工CNCルーターの総代理店として、デジタルファブリケーションを活用し木材を加工、家具をつくるサービス(EMARF)を展開しようとしていたVUILD。
多摩境のホームセンターで開催されたワークショップに参加した私たちは、そこにいたVUILDの社員さんから、代表がダンナの大学後輩であることを聞き、VUILDに一層興味を持ったのでした。
こちら↓がそのサービス(EMARF)で制作した椅子。色まで塗って2時間くらいだったかな。
さんかく椅子って、スペース効率がよいのです。家のどこにおいても邪魔になりません。2年たった今でも重宝しています。
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46144541/picture_pc_8f468509b5ee410cd1eb0b92d5562c80.jpg?width=1200)
その場で代表の秋吉さんにLineで連絡を取って下さった社員さんのナイスアシストのおかげで、私たちは後日川崎の事務所まででかけることになりました。
「熱海の崖に現代のCase Study Houseをつくろうと思っています。VUILDさん、ご提案お願いできませんか?」
当時、住宅設計実績ゼロのスタートアップに頼む私たちも私たちですが
「僕たち、住宅やりたいんですよ」
そう言って熱海Case StudyHouseのコンセプトに興味を持ってくれ、設計提案を引き受けてくれた秋吉さんも相当です。
私たちとVUILDの関係は、こうして始まりました。
ワクワクと心配の同居
LiDARでの森の計測をふまえ、彼らは森から突き出す船の屁先のような、とても印象的な設計CGを提案してくれました。
素直にわーっとなるワクワクする提案。
でも、間取りは正直イマイチ。
コーポラティブ住宅ではありますが、自由設計の内装を二度経験値しているフィフティーズからすると、生活感がなさすぎます。
構造も、実現にはお金がかかりそうなアクロバティックさ。
しかも傾斜地の建築です。
前に進めるのは、ちょっと心配です。
そうこうするうちに、進めていた土地取得が暗礁に乗り上げてしまいました。この話は後日詳しく。
前に進めないまま、 VUILDとの関係は一旦ストップ。
背中を押す材料がほしい
コロナが小休止した2020年の秋、土地取得に目処がたちはじめ、私たちは再びVUILDにアプローチしました。
すると、彼らも状況が変わっていたのです。
幸いなことに、ファーストユーザーを見つけ、住宅設計の経験を積み始めていました。
しかも場所は私たちと同じく、熱海の傾斜地。
安心材料が増えた!
最初に会った時から彼らには才能がある気がしています。
VUILDと一緒につくると
新しいワクワクを体験できそう。
一方で、心配はつきません。
個人でそれなりの金額を投じるのですから
安心材料に加えて、背中を押してくれる何らかの材料がほしい。
全国に11万件ある設計事務所
110万人いる設計者の中から
VUILDを選ぶ理由がほしい。
ワクワクと心配を天秤にかけ
どうしようと悩む日々が続きました。
平地の建築の常識を超えていく
海から急に山になる熱海は急坂だらけです。
この地形に対応するように、熱海の住宅は3階建が多い。
建築面積が小さくなるので、基礎にかかる費用が少なくなる上、延床面積が確保できるというメリットがあるのでしょう。
50歳を過ぎた私たちが住むとしたら、足腰を考えるとなるべく上下動が少ない家にしたい。けれど狭い平屋も本意ではありません。
森の鳥の声で目覚めるような、森に馴染む建物でありたい。
フットプリントを小さく、木を切る本数を減らしたい。
結果、基礎にかかる費用も小さくしたい。
崖を選んでおきながらなんですが東南海地震エリアでもあるので、安全な基礎と工法は絶対条件。
その上で、絶景が楽しめ、遠くからみても特徴的な外観でありたい。
こう考えると、平地に建てることを前提とした通常の工法で解決策を見出すのは難しそうな気がしてきました。
一品生産的な取組みが必要な感じです。
サラリーマンな私たち夫婦は、ダブルインカムなので少しはお金があるけれど、無尽蔵にお金があるほどではありません。
そこそこリーズナブルに、一品生産的な建築に取り組むにはどうしたらよいか?
VUILDのデジタルファブリケーション工法による木造の家が、その解なのではないか。
平地の工法に対する挑戦。
まさに、崖建築のケーススタディ。
まとめ
デジタルファブリケーションを活用して、一品生産の建築をリーズナブルに実現する。
平地の工法を無理に適用するのではなく、森の計測にLiDARを持ち込んだ発想で崖建築に挑戦するのだと思います。
熱海Case Study Houseのコンセプトを面白いと思い、一緒に取り組んでくれるVUILDの秋吉さん、高野さん、中澤さんに感謝。
一歩、前に進みます。
次回は、土地取得の話がお届けできるとよいのだけれど。お楽しみに!
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