テオルボ(キタローネ)の曲集(普段練習しているものを中心に)
テオルボ、と書くと18世紀のジャーマン・テオルボを指すこともあるので、イタリアン・テオルボと書くか、イタリア語のカナ転写でキタローネあるいはティオルバと書いた方が本当は良いのだろうけど、テオルボという名前の方がまだ知られているようなので、悩ましいし難しい。
テオルボ(キタローネ)はもともと通奏低音の楽器として作られたので、その後ソロ曲集が生まれたとは言え、決して多くはない(アーチリュートほど少なくはないが)。
その中で、普段練習していたり本番で弾いている曲集を中心にまとめてみたい。
G.G. Kapsperger: Libro quarto d'intavolatvra di chitarone (Rome, 1640)
後半に色んな小品があって、易しくはないけど楽しい。色んな調がある16のプレリュードは、調が違う歌曲のそれこそプレリュードとして選択。12あるトッカータも17世紀半ばらしく、よりキャッチーな感じ。
B. Castaldi: Capricci a due stromenti cioè tiorba e tiorbino e per sonar solo varie sorti di balli e fantasticarie (Modena, 1622)
前半がティオルバ(キタローネ)とおそらく小型で1オクターヴ高いティオルビーノのための曲集で、後半はティオルバのソロ曲集。対位法が多く、リュートの曲のようで、かつキタローネの音域をフルに活かしていて、なかなか難しい。でも!魅力的な曲がいくつもある。同時に同音を鳴らすのが好みらしい。「ファンタスティカリエ」という曲種を独自で名付けているらしいが、多いのはコッレンテで、ガリアルダなどもある。そして、2枚人物が写っている写真があって、1人で弾いているのは本人?2人で弾いているのはティオルバとティオルビーノだろうか。
A. Piccinini: Intavolatura di liuto et di chitarrone (Bologna, 1623)
前半がリュートといっても13コースの「アーチリュート」じゃないと弾けない曲集。後半がキタローネの曲集で、13のトッカータ、10のコッレンテ、4つのガリアルダ、その他にチャッコーナや舞曲の変奏が含まれる。何と言っても当時のリュートの奏法について記した34章にわたる序文が貴重(日本リュート協会の会報に邦訳あり)。曲も教則本らしくきっちり書かれている印象で、基礎練習になると思って必ず練習(ただし易しく感じられる曲で)。
その他の曲集は、必要があれば引っ張り出してくるもの。
Kapsperger: Libro Terzo d'Intavolatura di Chitarone (1626, Rome) おもにトッカータで、後半にArcadeltとGesualdoの歌曲(マドリガーレ)の編曲(インタブレーション)が入っているが、Kapspergerキタローネ曲集第3巻に入っている2つの歌曲の編曲で書いたように歌曲と同じテンポで弾けるとはとても思えない。また、後半にパッサッジすなわちディミニューション集(!)や音階で上がっていく時の和音など、教則本の要素があるのがユニーク。
Kapsperger: Libro primo d'intavolatvra di chitarone (Venetia, 1604) 上記の第4集、第3集と比べると圧倒的に見やすく、HKさんとしてもきっちり書いているという印象。トッカータの他、当時よく知られた舞曲の変奏としてのパルティータが多数。その中に、キタローネのソロ曲の中ではたぶん有名と言えるアルペッジャータが入っている。
G. Kapsberger, A. Piccinini, G. Viviani: Intavolature di chitarrone : Mss. Modena (Archivio di Stato di Modena [Prot. n. 2087/V.9]) これは某有名奏者の方から「やりやすいですよ」と勧められた曲集で、Vivianiはたぶんこの曲集だけ。手稿譜で欠けもいくらかあって、HKさんとAPさんのはなぐり書きのようでかなり読みづらい。一方で、Vivianiはとても見やすいが、♭系の曲が多い印象。
その他、バロック・ギターやリュートの曲も書いているde Viséeはいくつかの写本に、バロック・ギターの(難しい)曲集を2つ残しているBartolottiもいくつかの写本に、Pittoniの通奏低音付きの曲集が2つ、そして通奏低音の教則本や、レアリゼーションの実践例が付いている歌曲集もあるけど、いずれまた。