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雑感 2024/12/1 「BOYS and」セルフライナーノーツ

「BOYS and」がリリースされて、既に1か月が経った。
新曲が少ないが故に、何故だかあまり聴き込めていないのだが、BARKSで、メンバー5人が、このアルバムに込めた想いを語ってくれているので、それについてコメントをしていきたい。

なお、最初に私が書いたレビューを見たい方は、こちらをどうぞ。

まず、「and」の意味。
「つながる」「一緒に」という思いを込めているとのこと。
ここで、「そして僕らは老けて行く…」が引き合いに出されているのが、私はとても嬉しい。
初めて買った(厳密に言うと買ってもらった)SOPHIAの映像作品は「philosophy-III TOUR'98「ALIVE」"そして僕らは老けて行く..."」だった。これを、何度見たことだろうか。VHSだったから、文字通り擦り切れるまで見た。
なぜ、この映像作品のサブタイトルが「そして僕らは老けて行く…」なのか、当時中学生だった私にはさっぱり分からなかったけれど。そして、当時の彼らは20代後半だったのだけれど。
今、彼らも、私たちも、当時から25年、30年の年齢を重ねてここにいると、このタイトルは言い得て妙だったということがよく分かる。こんなところまで進んでこられるなんて、黒柳の言葉を引くまでもなく、誰も思っていなかった。
そういう意味で、1995年の「BOYS」からこの2024年までのつながりを「and」と表現したのは頷ける。


選曲も、私が知りたかったことの一つだ。"State of love"が入ると知って飛び上がった私だから。
でも、トイズの新旧の担当者が選んだというのは、予想とは違った。メンバーが選んだと思っていたから。


リテイクにあたっての心構えについて。
松岡さんの、「作曲者の意向が最優先」というのは、特に都曲を聴いて感じていたことだったので、本当にそうだったのか!と納得。
黒柳の、昔はできなかったことや発想を音にした、というのも、キスブルのBメロとかで感じるところ。でも、それ以外の曲でどれだけアレンジが変わったのかが、正直聴き取れていない。楽器隊の中でいちばんアレンジが変わっていないのが黒柳なんじゃないかと思っていたから。もちろん、演奏の仕方とかは変わっているんだろうけど。それは、トモくんの言葉も同じなのかもしれない。
都さんの言葉、「大人の音楽」というのもしっくりくる。「BOYS and」を聴いて感じる「都感」は、旧作でも同じように感じるのだけれど、でも全くもって同じではない。


ここから、全曲解説。
まずは"State of love"。
この曲がデビュー前からあったのだということは知らなかった。なんせ、収録されているのが「Kiss the Future」だからね。
そして、"Like forever"と双璧を成す、というのも驚き。そんなふうに感じたことは一度もなかったから。"Like forever"のエピソードは聞いたことがあったけれど、"State of Love"に関しては何も知らなかったし。

黒柳の「頭っからパーンとキーボードが鳴るSOPHIAらしい曲」という表現は、私が感じていることと同じで嬉しい。黒柳って、都さんのことを心の底から尊敬しているんだなっていうことを言葉の端々から感じる。

ところで。私はずっと、この曲の「State」は「国」を意味していると思っていた。「United States of America」的に。なので、この曲は「愛の国」なのだと。
ところが、今回の話を聞いていると、このStateは「状態、形」という意味で使われているそうな。もちろん、Stateにそういう意味があることは分かっている。しかし、松岡のことだから「愛の国」とか言いたかったのだろうと、勝手に思っていた。「失われた街で最後までなくならないものは、目に見えない形もない愛だけさ」なんて歌うのだから。
…いや。改めて読むと、「形もない愛」、つまり「愛の形」を歌ってるんだって分かる。どっちかというと「失われた街」に引っ張られたな。

聴きたかった、冒頭とエンディングのささやきについてのコメントは無し。


2曲目は"Like forever"。
サビまでシンセ1本で行くアレンジになった経緯が知れて嬉しい。しかもそれが都さん主導の上に松岡の意見が乗ったのだということも。
トモくんの「自分にとっての応援ソング」という言葉も、とてもリアルに感じられて、この30年という歳月を思い起こさせる。なんせ、当時のトモくんは20歳だからね。

そして、これを書きながら、2008年のスターライトコウベの"Like forever"を見返してしまった。胸に迫る、ピアノフィーチャーのアレンジ。正直、私はこれに近いバージョンが「BOYS and」に収録されるのではないかと思っていた。しかし、その思いを都さんは見事に裏切ってくれた。
"State of Love"と"Like forever"。曲調は結構異なるし、共通項があるなんて考えたこともなかったけれど。この話を聞くと、これからの曲の聴き方が変わる。

この記事を読むときに、この曲のコーラスについて言及があるかと思って期待したけれど。それはおあずけ。どこかで機会があったら、ぜひ、黒柳に訊いてみたい。


3曲目。"あなたが毎日直面している世界の憂鬱"。
これに関しては、これがすべてだろう。

SOPHIAの歌詞の世界観のひとつにある、社会の中の自分や、社会と切っても切り離せない存在の自分っていうものを、当時は稚拙だったけど「State of love」と「Like forever」で表現した

前半3曲で「SOPHIAとは何者なのか」ということを30年越しに表現したということ。そして、その考え方は表に現れる形を変えながらもずっと通底していること。それが、私が彼らのことを25年以上も見続けている理由だ。
松岡が歌う世界がブレていたら、きっと私は彼らから離れていた。現に、そう感じた時期もある。でも、松岡は変わらなかった。24歳だった松岡の見ていた世界は、53歳になっても変わらない。理不尽で、足掻いたってなにも変わらなくて、でも、どこかに大切な何かがあって、それを抱きしめて生きる。それを歌うのが、SOPHIAの松岡充だ。

初めて聴いた時には度肝を抜かれた"世界憂"。こんな曲聴いたことなかったし、まさかこう来るとも思っていなかったから。
都さんに言わせれば、これも「年相応のサウンド」ということになるらしい。都さんは、日々進化しているから。


ここで、趣がガラッと変わる。
4曲目。"Secret Lover’s Night"。

"Believe"と同時期からある曲だということは、「SOPHIA」に収録されていることからも分かるけれど、同じ立ち位置の曲だとは知らず。
どこから、この2曲の運命が別れたのかは分からない。もちろん、"Believe"のシングルリリースが大きなきっかけであったことは間違いないだろうけど。逆に言うと、"Secret Lover’s Night"の方が音源リリースは先だったのだから、その判断をどこでしたのかを聞いてみたいとも思う。当時の持ち歌のほとんどを収録したという「BOYS」「GIRLS」に、何故"Believe"を入れなかったのか、ということを。
もっとも、今回それが30年越しに実現したのだとも言えるが。

そして、黒柳の言葉。

脱ヴィジュアル系みたいなものが、ポップなサウンドに表れていると思う。そういう気持ちがあったから、俺たちは最初から全員がステージネームみたいなものではなく、本名を名乗ってたんだよ。サウンドとしても、キーボードがいるヴィジュアル系バンドなんて、当時周りにはいなかったと思う。

黒柳自身から、この話が聞けるとは思わなかった。私は、2005年にこのことについて黒柳に質問して、採用されている。文字起こしをしていないので当時の正確な発言は分からないけれど、趣旨は同じこと。
ヴィジュアル系バンドと括られたくなくて、本名を名乗り、キーボードを入れ、長い髪を切り、ポップな曲を歌った。皮肉にも、それが黒柳の忌避するアイドル的扱いの要因にもなったわけだけれど、

さらに、「キーボードがいるヴィジュアル系バンド」。これが少数派なのは確かで、これと、都さんの卓越したセンスが、他の(ヴィジュアル系)バンドとの差別化に寄与したのは疑いようもない。そして、そこを黒柳が誇りに思っていることが、本当に嬉しい。


次。5曲目は"Kissing blue memories"。
この曲でいちばん気になっていたBメロの話が冒頭から。
ああいうの、ハーフテンポっていうのね。ノリが倍になるから(2分でテンポを取るからなのかも)、語感としては伝わるけど。
都さんがそういうアレンジにしたかったというのは、なんだかとても嬉しい。当然、それに合わせてみんながアレンジを変えていて、特に黒柳のスライドを生かしたアレンジが私はとても好き。最初は、いきなりビートの取り方が変わって、つんのめるような違和感があったけど、慣れてくるととても心地よい。

もう一つ、トモくんのお話。苦手な2ビートの曲だったとのことだけど、2ビートが何なのか分からなかったので、4ビート、8ビートとの違いを解説する動画を見てお勉強。例としてプレイされていプレイを聴いていたら、"Yes,attention"が頭に浮かんできたから、そんな感じなんだな。でも、キスブルで2ビートが典型的に聴こえるのってBメロだと思うから、そここそがハーフビートになっているっていうのが、ジルくんの言葉を借りれば「最新型SOPHIA」なのだろう。


6曲目。"Believe"。
私にとっては、意外に思い入れのない曲なのだけれど。やはり、メンバーにとっても「始まりの曲」であるということは意味のあることだということが分かる。

都さんの「Aメロのコードももっと滑らかで美しい流れにしましたね」という言葉が印象的。私は、今回のアレンジで何がいちばん好きかって、都さんのピアノと、そのピアノで奏でられるAメロのコード。それを、都さんは「なめらかで美しい流れ」と言葉で表現している。そう。あのピアノは「美しい」。"Believe"って、どっちかというと攻撃的で激しい曲だと感じているけど。あのピアノがあることで、一気に切ないラブソングになったと私は思う。


最後。7曲目は"I & I Wish"。

この曲にこれまでの曲やツアータイトルを詰め込んだという話は、松岡進化でもしている。が、そこでは話していなかったことが2つ。

1つ目。イントロがシタールだという話。
そうだろうと思ってはいたけど、私の耳が狂っていなかったことが判明して嬉しい。しかも、やっぱり"君と揺れていたい"をモチーフにしていたということも嬉しい。あの時、都さんがこだわってシタールを入れたんだって話をしていた記憶があるから、余計に。

このポストは、松岡進化で"I & I Wish"を聴いた時の感想。

2つ目。

SOPHIA初期を総括するように、この曲のエンディングではトモ(赤松)がドラムで「街」のフレーズをフィーチャーしてるんです。

え。何それ。どこのこと?
そう思ってアウトロを聴き直す。でも、それっぽいところが見当たらないので、もう少し巻き戻してみると。
…あった。
「大人になること夢見て」の後。
"街"のイントロのドラムフレーズだ…。

私、"街"ですごく印象的なのは、復活武道館の前のMステ出演
あの時、松岡が当然映るべきイントロド頭の出だしで、カメラはトモくんを抜いていた。ものすごく粋な演出だと思った。復活するSOPHIAの第一声を、トモくんが切り出す。その姿が、全国に地上波で流れる。あれが、SOPHIAの再出発。

この曲について、メンバーが声をそろえて「The 松岡充」だと言うのが印象的。詩は、確かにそうだけれど、メロディーは、これまで聴いたことがないと感じたから。…否。そう感じるのは、シタールの導入だけかもしれない。あれに度肝を抜かれて、意識を持っていかれて、でも松岡らしいメロディーが続いて、そのまま鳥肌が立ったまま曲が終わる。初めて聴いた時の感想はそんな感じだった。
私の感想は、"material of flower"。"ALIVE"とは違う感動を感じるこの曲と、似た空気を感じる。


このアルバムを総括して、「揺るぎないSOPHIAサウンド」とジルくんは言う。
ここで引き合いに出すのが適当かは分からないが、私がここ最近のリテイクアルバムできちんと聴いたのは、FANTASTIC◇CIRCUSだけだ。彼らは、ベースとドラムにサポートメンバーを入れており、だからこそNATCHINもLEVINも「原曲に忠実なコピーを心がけた」と話していて、元のFANATIC◇CRISISをそこまで聴き込んでいない私の耳には、努くんの歌い方が変わったかな、くらいしか差を感じなかった。(FANTASTIC◇CIRCUSの方はサブスクがあるが、FANATIC◇CRISISはないので、公式では聴き比べしづらいのが辛い。)

それがいいとか悪いとかいう話ではない。でも「BOYS and」は、前回のセルフカバーアルバム「15」のような失望感はなく、ただただ前に進んだな、という感覚だけが残る。そう。「揺るぎないSOPHIAサウンド」がそこにある。たまにはジルくんもいいことを言うのだ。


2025年の春。次は「GIRLS and」だ。
どんな曲が、どんな思いで選ばれ、どんなアレンジがされるのだろう。

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あたか@青空自卑感
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