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SNSに生活圏の写真をあげると特定されやすくなる理由

『SNSに自宅や職場付近の写真をあげるな』

Twitterでは定期的に上がる話題です。
場所の特定は意外と簡単でわかってしまうものだよ、という注意喚起で行われるのを年一くらいでよく見られます。しかし具体的にどういった経緯で分かってしまうのか、意外とピンと来ていない人が多いと思われます。
…どういったところから自宅バレするの?
この記事を見たら、とてもじゃないけどその場で写真をあげなきゃいけないBeRealなんて恐ろしすぎてできなくなるはずです。
旅行とGeogusser(ストリートビューで場所を当てるゲーム)で遊ぶのが大好きな自分が、20秒で大体の県まで確定してしまうよ、ということまで注意喚起として残しておきます。

建物や風景に書かれた文字を映してはいけない

港の風景ですが分かる人はすぐに特定されます

いい感じの漁港ですね。一見どこにでもありそうな港町ですが、一発で県まで簡単に特定できます。
答えは徳島県海部郡牟岐町です。
どこにヒントがあるでしょうか?
答えは写真中央の店にある看板と船に書かれた印字です。

拡大してみると、奥の看板に電話番号「088-4XX」と書かれています。
これは市外局番と呼ばれるもので、地域ごとに異なる電話番号が割り振られています。0884で始まる電話番号は徳島県阿南市、海部郡、那賀郡に割り振られる番号なので、これだけでそのあたりの港だろうということが分かります。日本の市外局番はかなり法則性が分かりやすく、パッと見ただけでどのあたりの地方か確定してしまいます。
https://blog.goo.ne.jp/chi_ri_jin/e/23f98fdcc071f570854a5b9e6e0422d6

また、船には頭文字「TO」と書かれています。漁船は漁船法に基づいて漁船登録番号を船に書かなければなりません。その頭文字は都道府県ごとに取り決めがあるため、これを見ただけで特定の都道府県までわかってしまいます。

このように街の風景に映る文字情報は意外なところで場所を特定する材料になります。店の名前だけでも危険です。例えば「ゆめタウン」は兵庫県以西にしか存在しないスーパーマーケットですし、個人商店などもGoogleMapで調べれば簡単に発覚します。日本語で取れる情報はとんでもなく分かりやすいのです。

電柱や交通標識や建物を映してはいけない

こんな場所分かるわけないだろ?そう思いますよね?

次は旅行先で撮った何気ない長閑な農村の一枚です。
今度はほとんど建物は遠くにしか映っていません。
しかし、これだけで何県何市まで分かってしまいます。
先に言っておくとこれは新潟県三島郡出雲崎町で撮った写真です。

どこで分かるかって?
まず決定的に分かってしまうのが右下にあります。拡大すると分かると思います。

自治体名が書いてある

このように交通標識や電柱などには細かい自治体が書かれていることが多くあり、簡単にその自治体名が分かってしまいます。恐ろしいですね。

ただ、これが仮になかったとしても新潟県まで絞ることは容易です。
簡単に見るだけでもこれだけ情報があります。

①電柱の上部についているピンは碍子といいますが、電力会社で特徴があります。このタイプは東北地方+新潟でよく見られる要素です。
②電柱には電力会社のプレートとNTTのプレートがついていることがあります。ここだけで実は新潟県が確定できます。
③支線ガードと呼ばれる黄色と黒のポールにも地方性があります。これは北海道や東北、新潟でよく見られるものです。
④家の特徴で地方が絞れます。黒く光沢のある瓦は鳥取から青森の日本海側に特にみられるもので能登瓦や黒の石州瓦と呼ばれます。特に富山、石川、上越、鳥取、岡山山間部に多く、これだけで細かく地方が分かってしまいます。
⑤スノーポールも地域で特徴があります。これは豪雪地帯でよく見かけるポールで、このタイプは新潟や北海道でよく見かけます。

このように複数の要素を絡めていくと、おのずと新潟県でしか見られない特徴と分かってしまうわけです。
例えばこういったもので県や地方まで分かってしまう要素は他にもあります。

  • 交通標識のポールの素材や付属物

  • カーブミラーの形や色

  • ガードレールやフェンスの種類、色、デザイン

  • 街灯のデザイン

  • 道路に書いてある「止まれ」のマークや横断歩道のダイヤマーク

  • 道路の幅や補修具合、角度

  • 電柱に書かれている掲示物

  • 擁壁の種類

  • マンホール

  • 建物の材質やデザイン

  • 道端の石造物

  • 信号の設備

  • バス停のデザイン

  • 踏切や線路、高速道路の規格

特にマンホールは市町村ごとで特色があり、これだけでその写真が撮られた市町村が分かります。

兵庫県佐用郡佐用町で見つけたマンホール。ご丁寧に自治体名が書かれている。

マンホール集めは街歩き趣味ではよく知られる趣味の一つで、ネットで調べればそれらを網羅したサイトは簡単に出てきます。
知っている人ならどこの自治体のマンホールなのかすぐにわかるでしょう。

植物や生き物を映してはいけない

じゃあさすがに人工物が一切なければいいんじゃないか。そう思うこともあるでしょう。

これならわからないはず…?

これだけでも日本の地域をある程度絞り込めてしまいます。
左下の植物が致命的です。

道端に大きな葉っぱが見えます。これはフキです。
これほど大きい葉っぱのフキが見られる地域は限られており、北海道と北東北が主な植生地となります。ちなみに北海道にはラワンぶきと呼ばれるクソデカフキがあります。
https://www.town.ashoro.hokkaido.jp/kanko/tokusan/tokusan-1.html

要するにこの一枚だけで北東北より北側の地方で撮ったものと確定するのです。ちなみに通称「北海道キャベツ」なんて呼ばれます。ちなみにこれも北海道で撮ったものです。
こういった農作物や道端の植物、果ては山の地形や土質の種類などからおおよそ場所を絞り込むことも可能です。日本の地域によって生息地が違うため、ある程度場所の判断材料となってしまいます。
いかがでしたか?怖いでしょう?

日常のつぶやきにはたくさんの情報がある

こう見ると写真がいかに人の住環境を特色づけているかよく分かるでしょう。日本にはこれだけの地方性があります。こういうのを調べるのが地理学だったり民俗学の一端だったりするわけです。

そもそもあげる写真に気を付ければいいだけともかぎりません。例えば、リアルタイムでこういうことを呟くだけで場所が特定される危険があります。

  • 家の間取りや通っている学校の制服

  • ゲリラ豪雨などの近所の天気や気温

  • 鉄道の遅延情報や渋滞情報

  • よく行くレストランで提供される料理

  • 特定の方言や風習

こういう情報が積み重なっていけば、どんどん特定されやすくなっていきます。

結論

SNSの運用には気を付けようね!!!


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