第二十八話 倉庫屋
今回はこひなたんの視点でお送りします。
手帳を扱っている雑貨店で倉庫屋さんの場所を教えてもらったのですが、ちょっと不安ではあります。ただ、雑貨店が仕入れている倉庫屋さんなんだから、きっともっと幅広い情報を持っていることは間違いないでしょう。
Itto一派
教えてもらった道を進んでいくと、倉庫屋はすぐにわかりました。なぜなら、いわゆる倉庫!という感じの佇まいだったからです。エルフの私にもちゃんとわかります。倉庫の前にはたくさんの荷馬車が停まっていて、たくさんの人たちがその荷馬車にいろいろなものを運び込んでいるところでした。いわゆる人足といわれる人たちでしょう。
そんな中、ひとりだけぽつんと荷馬車の広場の中心に立って、全体を見渡している人がいます。この方が管理者ではないかと容易に想像できました。そして、とても大きな声を出して、いろいろ指示を出しているようです。なので、私たち二人はその作業が一段落するのを待つことにしました。事務所のような建物も見えませんでしたので。
30分ほど経つと、荷馬車が一台、二台と倉庫から出て行きました。20分ほどで全ての荷馬車が出払って、倉庫の前に立っていた管理者のような方だけがぽつんと取り残されていました。私たち二人とその管理者の方だけが倉庫に取り残されているような形になりましたので、先方も私たちに気づいたようです。
「君たち!何か用かい?」と声を掛けてきました。その手には、分厚い手帳がありました。
「はい。この先の雑貨屋さんからこの場所を聞いて参りました」とサガワン。
「そうかい。それでどんな用件だい?」
「はい、実は錬金術師を探しています」
「錬金術師か。火の国にはそれほどたくさんの錬金術師はいないからな。俺も大体の人は知っているよ。誰を探しているんだい?」
「はい、シノンという錬金術師です」
相手は急に小さな声になって「なに?シノンか。君たち、Itto一派以外の錬金術師に会いに火の国に来たのか?なかなかチャレンジャーだな」
我々も小さな声で「そうなんですね。事情を知らないものですから(^_^;」
「いいか、火の国の錬金術のギルドはItto一派が牛耳っている。それ以外の錬金術師はギルドにさえ入れないんだよ。特に、シノンはIttoから目の敵にされているから面倒だぞ。なにせ、シノンは自分でも錬金術師として研究を重ねながら、他国の錬金術師とも繋がっていて多様な手帳を研究している人間だからな。Ittoもあまりよく思っていないんだよ」
「なるほど、そういうことなんですね」
シノンとの出会い
「まあ、いい。俺に聞いたって言うんじゃないぞ。それで、シノンに何の用なんだい?良かったら聞かせてくれよ。」
じゃばらんだをサガワンが取り出したのを見て私は「ありがとうございます。実はこの手帳をシノンと一緒に研究したいのです」と言ってみた。
「ほう、見たことのないタイプだな。うちの倉庫にもこういうのは入ってきたことが無いぞ。前に、超5S手帳というのがあったが、あれに形状は似ているが、うちでは扱ったことがない。この手帳はなんて名だ?」
「じゃばらんだです」
「ほう、おもしろい名だな。で、シノンとこれを研究したり、作ったりしたいと言うことだな」
「そうなんです。どうでしょうか」
「シノンはこういうのには前向きなやつだよ。だからきっと話を聞いてくれるだろう」
「それは良かった。気がだいぶ楽になりました。で、シノンにはどうやったら会えますかね。どちらにいるか知らないですか?」と私は聞いてみた。すると、その管理者は言った。
「君たち、勘が悪いね。私がそのシノンだよ。気づかなかったのかい?」
「ええー!」
「じゃばらんだ、なかなかおもしろい手帳じゃないか。先月まで、念の国で帳面の話なども聞いていたけど、ちょっと新しいものがないかなとは思っていたんだよ。うちの倉庫も新たなもんを入れていかないと、雑貨店からそっぽを向かれてしまうからな」
「実は、今頃でなんなのですが、このような紹介状も持っておりまして」と賢者ダイからもらった紹介状をサガワンはシノンに差し出した。
「おお、これはダイからじゃないか。ダイにもいつも世話になっている。彼は人格者だから、彼の紹介状ってことならこれは無視できないな。ダイが作るブロックマンスリーは本当に良くできているし、弟子のゴウの方もダイの薫陶を受けて本当に良い青年に育っている」
「はい、私たちもとてもお世話になりました」と私はにこやかに伝えた。
「よし、そういうことなら話は早いな。ちょっと一緒に来てくれ」とシノンは倉庫の裏の方を親指で指さしながら私たちにウィンクした。
続き 第二十九話 倉庫の裏
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