第二十七話 覚醒
語り部TTである。サガワンとこひなたん、濁流に飲み込まれるのか?というところで、来週に続く!みたいになって、なんともテレビ的になったが、続きである。
モーゼは誰か
サガワンとこひなたんに危険が迫っている。決壊した堰は、その決壊の速度を上げて2人に迫っている(って、キャプテン翼ばりに引っ張っているが(笑)。
二人は懸命に走っているが、もう間に合わないことは確実だろう。と、こひなたんが思った瞬間、サガワンが走るスピードを一気に緩める。
(サガワン!何考えてるの!飲み込まれるわよ!)とこひなたんは思った。首を振ってサガワンの顔を見ると、サガワンは何かに取り憑かれたように無表情である。
「サガワン!何やってるの!走って!」
と叫ぶこひなたん。だが、サガワンは立ち止まる。そして、顔つきが変わる。鬼の形相だ。さらに、瞳が紺、深緑、灰色と三色で目まぐるしく変わり始める。何が起きたのか。
サガワンはゆっくりと聖剣 邪破乱打を抜くと、天に向かってまっすぐと両手で立て、空を突き刺すように掲げた。刹那、それを勢いよく振り下ろし、川底だった場所に剣を突き刺した。すると、轟音を立て川底が割れ始めたのである。慌てて、下流側の川底に飛び移るこひなたん。そして、サガワンもゆっくりとこひなたんと同じ側に。。。
大きく割れた川底は両岸まで続き、割れ目の幅は10メートルにも達した。そこへ先ほど決壊した川の水が轟々と流れ込み、割れ目から下流には水が一滴も流れなくなった。
SHREDDERが堰を使って川をせき止めたとき、SHREDDERはモーゼか?と思ったが、モーゼはhoririumだったようだ。それの証拠に、サガワンは川底にヘナヘナと座り込み、割れた大地を驚愕の眼差しで見ている。手には聖剣があるが、自分で動かしたことは覚えておらず、何が起こったのか、いや、起こしたのか、自分でもわかっていないようだった。
おかげで、走らずとも反対の岸にたどり着くことができた二人は、遠くから聞こえる
(シュイーン、ガリガリ)
というSHREDDERの音に耳を澄ましていた。
記憶
「一体、何が起こったの?」と問うサガワンに対して、こひなたんは言った。
「全然、覚えてないの?」
サガワンは大きくうなづく。
「あなたとその聖剣が大地を割ったのよ」
「ええ!またあ(笑)、悪い冗談だなあ」
「いいえ、私は間違いなく見た。あなたが覚醒するところを。瞳の色が紺、深緑、灰色と目まぐるしく変わりながら、鬼の形相になり、聖剣を振り下ろしたところを」
「そんな馬鹿な」
「いえ、何かにのりうつられていたようだったわ。サガワンではないみたいだったけど、物理的にはあなたそのものだった」
「そうか。全然覚えていないや。きっと、聖剣の力だね」
「きっとそうね。さあ、ぼやぼやしていると日が暮れるわ。火の国では夜は荒野を出歩かないほうがいいから、早めに街に入りましょう」
「わかった。行こう」
こひなたんは本当にこの人が大地を割ったのかしら?と思いながら、サガワンの背を追った。
シノンの探索
火の国に入り、街を目指した二人は日が暮れる前になんとか、街に到着した。街外れの小さな空き家を拝借して、夜を明かした。相変わらず、何も食べていないがお腹はすかない。
朝になって、街に賑わいがではじめた頃、二人は街に出て、まずは錬金術師を探すことにした。一番、手っ取り早いのは手帳を売っている店に行くことだろうと考え、近くのお店に入り、
「手帳を扱っている店はないか」
と聴き込んだ。三軒目で、有力な話を聞いた。
「ああ、2ブロツク先の門に、ittoの手帳を扱う店があるよ」
とのこと。そこへ行ってみることにした。
店の名はフットといった。手帳だけではなく、いろいろな雑貨品を扱っている、屋根が深緑の店だった。ドアを開けて入ると早速、手帳が並んでいた。少し店内を二人で眺めていると、店員が声をかけてきた。
「手帳を探しているんですか?」
「いや、実は錬金術師を探している。ここに来れば、手帳を扱っているからわかるかと思って」
「なるほど。うちは錬金術師から直接手帳を入れていないので、この先にある倉庫屋さんに行くといい」
と教えてくれた。礼を言って出ようとすると呼び止められた。
「でも、注意してね、Itto以外の手帳のことを訊くなら」
二人はなぜだろうと思ったが、あまり気に留めず、倉庫屋へ向かった。
続き 第二十八話 倉庫屋