値上げには勇気が要る
値上げには勇気が必要だ。中小企業診断士という仕事をしていると、たくさんの中小企業の社長さんたち、特に、小さな、零細と言われるような社長さんたちと会う。口を揃えて彼らは言う。「値上げには勇気が要る」と。
下請けの場合
いわゆる大手企業などの下請けで仕事をもらっている場合では、この勇気はさらに大きいものが必要らしい。確かに、「値上げしたい」と言った瞬間に「なら別の安いところへ」ということを言われるだろう。厳しい。
競争力のある技術や製品を持っていれば、他社へ切り替えられてしまうことは少ないわけだが、なかなか難しい。同じような技術や製品を他社も持っている場合、どうしても価格競争になるから、値上げは言いにくい。
小売やサービス業の場合
小売とかサービス業の場合も似た感じになる。
「値上げする」と顧客ーこの場合、多くは消費者になるわけだが-は、「他の店へ」となる。特に、一般的と言われるような商品を扱っている場合は、その傾向が顕著に表れる。
下請けの場合と同じように、競争力のある商品を販売している場合はそうは簡単にならない。他でそれを買えないからである。
メーカーの場合
独自製品を作っているようなメーカーの場合はどうだろう。
取引先は問屋だったり、小売店だったりするが、卸価格を引き上げると伝えると「なら取引を止める」と言われることはある。似たような他の製品に切り替えていくということも起こる。
独自性がどのくらい強いか、そしてその製品にどのくらい一般消費者などが付いているかによって変わってくるだろう。
結果として、独自性が大切
結果として言えるのは、「独自性」がどの程度あるかで「値上げ」の通りやすさが変わると言えよう。もちろん、それだけではないだろうが、大きな要因ではある。
競争力のある製品やサービスならば、大幅な値上げでない限り、顧客は離れにくい。もちろん、理由なき値上げは顧客も受け入れがたいだろうから、正当と思える理由が必要ではあろう。
で、弊社は?
正直、「値上げ」に対する心理的ハードルは弊社にもある。
見えているお客様というのは、大抵、弊社の製品を気に入ってくれている人たちであるから、「値上げ」を比較的頑張って受け入れてくださる。もちろん、中には「これまでも高かったのに、まだ上げるのか」という疑問を持つ人も居よう。
ただ、弊社としては「存続の危機」がいずれ来ることがわかっている状況下で、それを放置することはできない。存続が怪しくなれば、製品の提供は続けられなくなる。ま、正直、「飾り原稿用紙がなくても生きていける」わけだが、生活の潤いがいくらか減る可能性はあるかなぁ。
信じて、値上げしてみよう
理由なき値上げは良くないが、顧客を信じて(理由を明らかにして)値上げしてみよう。
もし、それで顧客が離れるなら、いくつか理由があるが、それを見直そう。
ひとつは「製品の独自性、競争力がない」ということである。
ふたつめは「顧客との関係性が構築できていない」ということである。
他にも理由はあるかもしれないが、この2つが大きいと思う。これを改善しよう。
弊社はどうだろう。値上げした今月以後、その結果がわかる。わかったら、必要な改善を施したい。