
鈴木貴雄と、PACAOを、語る
その知らせは6月16日、朝早く私のスマホに届いていた。
“PACAOさんがいいねしました”
?!?!?!?!
驚きのあまり飛び起きてすぐ確認した。
私がPACAO氏の誕生日にケーキの写真を載せてツイートしたそれに、本人からのいいねが付いていたのだ。
私のタイムラインでは、何人かがPACAO氏からのいいねをもらっていて同じように嬉しい気持ちをツイートに乗せていた。
どうやら、PACAOに向けて誕生日おめでとうとツイートされていたものに、本人がいいねをしているようだった。
まさか見られるとは思ってもいなかった。もう少しまともなツイートをしていれば良かったと。その、私のツイートがこれだ。
“貴雄もPACAOも、お誕生日おめでとう✨のケーキ🎂!
私がいただきます🙏🏻
(皿に直で描くの緊張する〜‼︎)”
全くふざけたツイートだ。文面からは、ただケーキを食べるぞ!という意気込みしか感じられない。ただ、その時に載せていたケーキの写真を見て少しでも私の想いが本人に伝わっていたら嬉しいな、と思う。(見出しにした画像がそのケーキの写真の一部である)
私にとって推しの誕生日は大切な記念日のひとつだ。前々から、ケーキやデザートを買って食べて勝手にお祝いしている。ただの自己満足でしかないと思っていたが、本人からのいいねをもらってはじめての感情が沸き起こった。
誕生日を遠くから祝っているファンが沢山いるということはもちろん知っていると思う。本人の知らないところで勝手に祝っていたはずが、本人にバレてしまった。
「見てくれて嬉しい、そしてありがとう。」
そんなPACAO氏のヒト状態である、鈴木貴雄氏の話をしたいと思う。
私が初めてUNISON SQUARE GARDENのライブを観たのはとあるフェスだった。ユニゾンと言えば斎藤宏介、他のメンバーのことはほぼ知らなかったのだがよく動くベースの存在はちょっと知っていた。それくらいだった。
ユニゾンのライブが始まって何曲目だったか忘れたが、ドラマーが突然上着を被り始めた。何も見えない状態でずっとドラムを叩いている。いや、被っているけど見えているのかもしれないと思うくらい演奏がブレない。何故上着を被るのかも分からない。スクリーンにその姿が映される度に、驚く。結局、そのフェスの後すぐにユニゾンにハマらなかったのだが、その姿はずっと忘れられずにいた。
そして、その後盟友SUPER BEAVERとの対バンを観てユニゾンに落ちた私は、アルバムやシングルなどの音源を買う前に「MODE MOOD MODE」のDVDを手に入れた。どうしても彼らのライブ映像を観たかった。彼らのライブが最高にカッコ良かったからだ。
その前に、借りてきた音源を聴いていて気付いたことがある。
このバンド、ドラムがとにかく凄い。
「MODE MOOD MODE」のDVDを観た。改めて見るドラマーの鈴木貴雄。その手数の多さとドラムのテクニック。ドラムに詳しくない私が見ても、桁外れに凄いものを持っている。
そして「オンドラムスタカオスズキ!」と斎藤くんのコールから始まったドラムソロ。披露されたそのドラムの音がとにかく凄い、それだけではない。スティック回しだけでなく、スティックも投げてすぐキャッチ。一瞬たりとも目が離せない。それでいて、ちょっとお茶目でサービス精神が旺盛だ。
すると、また上着を被り始めた。上着を被ってドラムを叩くのが彼のひとつの芸(?)のようだ。
まさかの違う楽器が出てきたり。雄叫びを上げてみたり。パーマヘアに髭という出で立ちがカッコいい。とても雰囲気のあるドラマーだと思った。
アンコールで田淵が好き勝手はじめる中で貴雄は着ていたTシャツを被りはじめる。斎藤くんだけがまともなのだろうか。ステージの上はカオスだ。貴雄はTシャツを被ったままドラムを叩き、立ち上がりコーラスまでこなしてしまう。もはやUNISON SQUARE GARDENというバンドが分からなくなる。カッコ良いライブバンドは、蓋を開けてみればこんな楽しいことまでやってしまうのかと。
はじめてワンマンライブの映像を最初から最後まで観て、私は度肝を抜かれてしまった。
そして鈴木貴雄というドラマーの凄さ、カッコ良さに気付いてしまったのだ。
その後、大阪の舞洲で行われたプログラム15thというUNISON SQUARE GARDENの15周年記念ライブへ行くことに決めたのだが、直前になり突然の台風発生。天候が悪くなることが予想され、私含め遠くから大阪に足を運ぼうとしていたファンは不安を感じていただろう。
その不安を吹き飛ばしてくれたのが、前日の貴雄のツイートである。ライブ前日、リハーサルをしていた彼らの前に大きな虹が現れた。その写真と共に、“明日楽しみにしてるね。”の一言がどれだけ心強かったことか。絶対大丈夫、と信じながら大阪へ向かったことを今でも鮮明に覚えている。
プログラム15thのMCでも、貴雄のMCには特に胸を打たれた。この頃の私はまだ彼らの過去のことはあまりよく知らなかった。ただはじめてあなたのドラムを観た日からその存在感は凄く、忘れられなかったことを伝えたいと思わせるようなMCだった。
それから彼らのライブにも沢山足を運んだし、ライブDVDも全て集めて観た。貴雄は髪型がよく変わる。髭もあったりなかったり、そしていつもお洒落だ。どうやら彼は服が好きらしい。気が付けば彼の好きな洋服のブランドとコラボしていたり、そう言えばUNISON SQUARE GARDENのグッズはすべて彼がプロデュースしている。このグッズ、私は毎回とても楽しみにしている。こだわりのタグもとてもお洒落だし、ユニゾンのグッズには貴雄のセンスの良さが感じられる。グッズが発表される時にそれぞれのグッズに一言コメントが載せられるのも楽しみのひとつだ。
貴雄は自分が似合うものを本当によくわかっていると思う。洋服しかり、髪型しかり。
そんな貴雄がゲーム、スプラトゥーンが大好きだということは機材車ラジオを聴いて知った。相当なプレイ時間を積んでいるのはもちろんだが、スプラトゥーン甲子園というイベントにチームで参加していたと知って更に驚く。貴雄は、ドラムの次に新たな生きがいを見つけた、と言っていた。彼がスプラトゥーンの話をする時は、本当に生き生きとしている。
貴雄がPACAOという名前でスプラトゥーンをプレイしていることは何となく知っていたのだが、ある日突然Twitterの“PACAO”のアカウントで自分はユニゾンなんとかというバンドでドラムを叩いていると彼は公表した。それは、PACAOが今後ゲーム実況をはじめるために必要なことだったのだが、今までユニゾンはSNSをやらず、ファンとの距離を保ってきたバンドだったために正直、驚いた。その後PACAOのnoteでこの件について語られていて、その優しく覚悟のある文章を読むと、当たり前のように応援したくなった。そのnoteには次のように記されていた。
“鈴木貴雄が言えないことをPACAOが言ってくれる。
PACAOが出来ないことを鈴木貴雄はやってくれる。”
鈴木貴雄とは若干の別次元に生きているインクリング、PACAO。ゲームには詳しくない私だが、PACAOの活動もちょっとずつ、追っていきたいと思った。
斎藤くんも田淵もユニゾン以外の活動をしている中、貴雄だけが唯一課外活動をしていなかった。ドラムのサポート等はしていたと思うが、バンドではない、スプラトゥーンとゲーム実況という形で彼がこんなに楽しそうに活動していくとは想像もしていなかった。
ちょうどPACAOがユニゾンなんとかでドラムを叩いていると公表したその頃、世の中はコロナ禍で、ライブは出来ない状況になり、その後緊急事態宣言も発表され迂闊に外を出歩くことすら出来なくなってしまった。
しかしこの状況は、ゲーム実況者としてのPACAOにとっては追い風となっただろう。ヒト状態の鈴木貴雄としての活動が普通にあったならば、頻繁にゲーム実況を上げていくことは難しい。PACAOは毎日のようにスプラトゥーンのゲーム実況、“PACAOのスプラジオ“をYouTubeで更新していった。全部は追えていないのだが、楽しそうにスプラトゥーンをプレイしてその様子を実況するPACAOの声が聴けるだけでも嬉しかった。何より、彼の声がとても聴きやすいし、話のテンポも凄く心地良いのだ。目まぐるしく変わるスプラトゥーンの映像を見ながらでも、ずっと聴いていられる。
コロナ禍でステイホームと叫ばれる中、気付けばPACAOのゲーム実況が私のひとつの楽しみとなっていた。
それが、“PACAOのUNDERTALE”、誰も死ななくていいやさしいRPGとして有名な、UNDERTALEのゲーム実況だ。
私は、UNDERTALEというゲームすら知らなかった。PACAOが大好きだと語るゲームのひとつ、そしてRPGならわかりやすいかもしれないと思い、見てみることにした。
どっぷりとハマってしまった。その世界観はもちろんのこと、PACAOの実況は分かりやすくストーリーも面白い。詳しいストーリーの内容については触れないが、ラストに向けて涙が出てしまう気持ちはよくわかる。最初のルートであるNルート(中立ルート)の終わりは、予想外の展開になり驚いてしまった。その後にプレイすることが可能なPルート(平和主義ルート)も、なかなかに予想出来ないストーリーが待ち構えている。あまりにも面白かったため、Pルートを見る前にNルートの実況を最初から見返したほどだ。途中まではプレイしたことがあると言っていたPACAOだが、彼もはじめて見るであろう展開を一緒に楽しめる醍醐味はとても大きかった。
Pルートのラストは、PACAOと同じく私も涙が自然と流れていた。
その頃と言えば、UNISON SQUARE GARDENの対バンツアー、「fun time HOLIDAY 8」の全公演開催延期が発表された頃だ。この先どうなってしまうのだろうか。楽しみがひとつひとつ削られていく中で、私はPACAOのゲーム実況に救われた一人だ。夜寝る前の時間を使ってゲーム実況を見ていた。先が見えない不安の中で、大好きなバンドの大好きなドラマーが別次元で楽しそうにゲームの実況をしている。今までであれば、きっとバンドとしての活動が止まってしまったらユニゾン3人の話を聴けるのは機材車ラジオだけであっただろう。それだけでも十分嬉しいのだが、PACAOとしての活動をはじめてくれたおかげで、私の楽しみもまたひとつ増えたのだ。PACAO、ありがとう。
スプラトゥーンの方でも、「PACAO杯」というものが企画され、当日予選から少し見ていたのだがPACAOの実況は本当に上手い。そしてPACAO個人賞を自ら選び、自ら景品を買いに行く。その様子はツイートを見ているだけでも、楽しさが伝わってくる。彼は本当に、スプラトゥーンが大好きなのだ。
PACAOのnoteを読むと、彼がとても優しい人だということがわかる。PACAO杯のラグの件もそうだが、そのことで彼が傷付いてなければいいと思う。noteを読んで、また色々なことに気付かされた。何かあった時、そこに批判や批評はいらない。人を成長させるのは「褒め」だと。
私はただ見ている側だが、PACAOのこと、PACAO杯運営の皆さんのことを褒めて褒めて褒めまくりたい。私のTwitterのタイムラインでも、PACAO杯を楽しんだ人たちのツイートが沢山流れてきた。あなたたちはとても愛されている。そしてPACAO杯は、とても良い大会だったのだ。またみんなが塗り合う日を、私は外の世界から見ていたい。
そんな優しいPACAOは、きっと忙しいであろう中、誕生日を祝うファンにいいねを押してくれたのだろう。
あなたと、あなたのヒト状態である貴雄に向けた私たちの誕生日メッセージ。少しでも気晴らしに、楽しく見てくれていたなら嬉しい。
鈴木貴雄とPACAOの人生に、幸多からんことを。
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