[詩歌]セピアの音色

夜更けの街を歩く。

月明かりはなく、街灯が儚げに揺れるだけ。
そんな中、風に乗る旋律が耳に届くような感覚に足を止める。

眼前に広がるのは懐かしい風景。
奏者と笑い、指揮者となってくれた存在と過ごした愛しい日々———

それはセピアに色褪せながらも、心の奥で確かな輝きを放ち、無数の単音が一つの音楽として奏でた証として、今でもボクが「ボク」でいさせてくれる。

かつて個としてアイドルとして、叫んだ旋律。
その響きは静寂と喧騒に埋もれ、今も心を震わせる静かなるノイズとなった。

そしてその波形は、ボクという人生に刻まれた楽譜となり、新たな音色に彩られ、未来への道を照らし出す。

あすの色はどんな旋律を奏でるのだろうか——。
かつての調べと、静かな決意を胸に、冷たい風が暖かさを運び、それを背にボクは流れに身を委ねる。
空にも音色が付き始めた。

夜明けはすぐそこだ——

2024/12/7