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【イベント実績】アスワクVol.1(2024.11.8)

アスピアが新たに定めたVISION【「つくる」ことで心を豊かにし、喜びを分かち合う世界を実現する】。

私たちは何を・どう“つくる”のか、そして“豊か”とはどんな状態なのか。VISIONから紡ぎ出される問いを、地域内外のみなさんとともに探求していきたいと考えて立ち上がったのが「アスワク」プロジェクトです。

2024年11月8日には、記念すべき初回イベントを開催。『パブリックライフ―人とまちが育つ共同住宅・飲食店・公園・ストリート』(馬場未織共著)を出版され、10年以上日本各地で地域の日常づくり・関係づくりに取り組んできた株式会社まめぐらし代表・青木純さん、都市デザイン、プレイスメイキングを専門として松本市の松本城三の丸エリアのまちづくり『松本三の丸エリアプレイスメイキングプロジェクト』にも参画されている有限会社ハートビートプラン共同代表・園田聡さんをゲストに招いて実施しました。

ここでは、当日の様子をお伝えします。

心の豊かさを“つくる”とは?「アスワク」プロジェクトに込めた想い

当日参加されたのは、企業の皆さま、学生、市議会議員など46名の方々。地域内外から足を運んでいただきました。ご参加いただきました皆さまありがとうございました!!社員も24名参加し、合計70名の大いに盛り上がるイベントとなりました。

進行を務めたのは、アスピアのプロジェクトメンバー 白鳥(しろとり)。
冒頭で「アスワク」プロジェクトへの想いを語りました。

プロジェクトメンバー

「これまでの建設会社は『建物をつくりたい』という方々に対して、高い専門性や豊富な経験で応えていくことが主な仕事でした。そして、安全・安心な建物をつくることが、そのまま豊かさにつながっていました。

でも、今は安全・安心な建物をつくるだけでは、地域の豊かさにつながらない。“心を豊かにする何か”をどうつくればいいのか。この『アスワク』プロジェクトで、地域のみなさんと語り合いながら、一緒につくっていきたいと考えています」

その後、参加者同士の自己紹介の時間に。みなさんで語り合う場をつくっていきました。

自己紹介する参加者の皆さま

“育つ賃貸住宅”青豆ハウスから考える豊かさ

オープニングの後は、ゲストトークへ。まず登壇したのは、株式会社まめぐらし代表・青木純さん。「パブリックライフ」をキーワードに、全国各地でさまざまな活動を展開している経験をもとに2つの事例を紹介しました。

株式会社まめくらし 青木純さん

1つめの事例は、“育つ賃貸住宅”というコンセプトを掲げグッドデザイン賞も受賞した、住む人と訪れる人が一緒に暮らしを育む共同住宅「青豆ハウス」です。

「2014年に東京・練馬区で8世帯の共同住宅『青豆ハウス』をつくりました。これは、人と人、人と街、人と自然……それぞれの関係性を楽しく育むことで時間の蓄積を価値へと変えていくことを体現する賃貸住宅です。
東日本大震災を経て、これから賃貸住宅をつくるのであれば、スクラップアンドビルドで『建てて終わり、壊されて終わり』のような意味のないものはつくりたくないと思いました。この『青豆ハウス』は、たとえ数十年先に更地になってしまう未来が訪れたとしても、『この賃貸住宅があったから、この地域はよくなった』と感じてくれる人が1人でも増えてほしいという考えで立ち上げた事業です」


そして、この青豆ハウスで生まれる風景を紹介。軒先にミシンを出して裁縫を行っていたら通りがかる人が立ち止まるようになった、その風景を見ていた子どもがカップヌードル屋を始めた……そのように青豆ハウスを軸に、コミュニティが育まれていくエピソードを挙げていきました。

「その中で、僕たちも思いも寄らなかった風景が生まれたんです。カップヌードル屋を始めた住民のお子さんが、この場に立ち寄ってもらいたいと一箱図書館を始めました。そこで、『本を置くだけだとおもしろくないから』と本棚の前にノートを置いて、通りかかった人が記入してくれたコメントに返事を書いていくようになったんです。

しばらく経ったある日、とあるおばあちゃんが訪れて、軒先で泣き始めて。話を聞くと、旦那さんに先立たれ、家に一人でいる日々が続き、暗い気持ちで過ごしていたところ、散歩中に、このノートを見つけて試しに一筆書いてみたら、かわいい返事をもらえるようになった、と。そして、そのやり取りを繰り返しているうちに心が豊かになって、化粧をしたり、洋服を選んだり、再びおしゃれを楽しめるようになって、これからまた人生が楽しくなりそうだと言ってくれました」


危険な街から優しい街へ。池袋エリアで育まれている豊かさ

もうひとつの事例として挙げたのが、青木さんが生まれ育った街でもある池袋エリアでの活動。ここでは、行政や地域企業との協業によって、街の風景を変えていった取り組みを紹介しました。

「池袋がある豊島区は、もともと東京23区で唯一“消滅可能性都市”だったエリア。治安も悪く、ネガティブな印象もつきまとっていました。そんな中、“治安の悪さ”の象徴ともなっていた南池袋公園のリニューアルに関わることになったんです」

そして、公園内のレストランを活用したウエディングを皮切りにパークシネマやヨガイベントなどを実施。新たな前例を重ねていく中で、徐々に醸成されていったポジティブな雰囲気を公園外にも広げていこうと考えるようになったそうです。

「地道に前例を積み重ね、公園のイメージが育っていった。一方で、『街そのものを公園化しなかったら、居心地のいい街にならない』といった課題意識は、行政側にもあって。そこに取り組もうと考えたんです。そして、地域のランドマークでもあるサンシャインシティさんや、元々池袋に本社があった良品計画さんと協力して、プロジェクトを立ち上げました」

そして、池袋駅東口に位置するグリーン大通りや南池袋公園を中心に、池袋のまちなかでリビングのように居心地良く過ごせるマーケットやストリートファニチャーの常設化に向けた社会実験などを行っていったそうです。

「コーヒーを淹れたり、編み物を編んだり。普段家でやっているようなことをストリートのベンチでやってみる。そうした仕掛けを行うことで、それまでただ通り過ぎていた場所が、仲間に出会えるような目的地に変わったんですよね。次第に、自分が暮らし、働く街としての愛着が生まれて、自然とゴミを拾うようになったり、ベンチの補修を行ったり。自治の意識が宿るフィールドになっていきました。いつの間にか危険だった街が、優しい街に変わっていったんです

その後、質疑応答に。
とある参加者からは「私が住んでいる自治体では、『枝が落ちて危険』『鳥の声がうるさい』といった理由で木を植えない方向で進んでいて違和感を覚えています。どんな対話をして、街全体で緑を増やす方向に舵を切るようになったらいいのか、ヒントをほしいです」といった質問が挙がりました。

その質問に対して、青木さんが回答します。

まずは相手とのコミュニケーションを諦めないこと。僕らが池袋で活動を始めたときも、『どうやってメンテナンスするのか、誰が見回りするのか』といった話題が挙がりました。そのときは『まず僕たちが責任を持って巡回します。そして、しばらくしたらチームをつくり、個人の負担を減らして持続可能な体制をつくっていくつもりです』と答えました。まずは自分たちでできる方法で第一歩を踏み出しつつ、仲間を増やして体制を整えていくことが鍵だと思います」

誰かにとってのお気に入りの場所をつくる

その後、有限会社ハートビートプラン共同代表・園田聡さんのトークへ。プレイスメイキングというアプローチ、そして松本城三の丸エリアのまちづくりの取り組みについて語っていただきました。

有限会社ハートビートプラン 園田 聡さん

「街にお気に入りの場所があるということは幸せなこと。そこに関わっていきたいと考えています。そのためには、誰がどういう気持ちで訪れて、どういう風に過ごして、どんな人と出会える場にするかの設計が大切。その視点が抜け落ちると、施設をつくったものの、誰も使わないといった状況が起こりえます。誰かにとってお気に入りとなる『いい場所』になるには、そうした誰かの気持ちや活動に合わせてつくること、そうしたプロセスをデザインすることが大切です」

そんな園田さんが取り組む松本城三の丸エリアのまちづくり地域を流れる女鳥羽川沿いで日常的に楽しめる気軽なアクティビティを実施したり、ストリートファニチャーによる憩いの空間づくり、定期的なマルシェ開催を行ったりとさまざまな活動が展開されています。
そうした活動をもとに、園田さんが考えている“豊かさ”を生み出すための視点について話しました。

「僕が大切だと感じているのは、価値基準を転換していくこと。たとえば『人がいっぱい来たらいい』ということだけを指標にすると、なかなか豊かさにはつながらないと思います。そうではなくて、たとえばそこから文化的な活動が生まれていく。そうした営みが根づいていくことが大切だと考えています」

最後に、プロジェクトを始めるときに大切なことについて語り、トークを締めくくりました。

何かを始めるときの主語は『私』であることが大事だと思います。『松本のためにこうあるべき』では、評論家っぽくなってしまうし、結局誰も動かない。たとえば『ここでコーヒーが飲みたい』『この川沿いで遊びたい』といった『あなたはこの地域で何をしたら楽しいか』を起点にするのが重要かなと。自分がやりたいことに仲間を誘って巻き込んでいくうちに、気づいたらみんなで共有できる楽しめるものが生まれているんだと思います」


参加者みんなで考える、これからの豊かさ

ゲスト2人のトークの後、参加者全体でワークショップを実施。リラックスした雰囲気の中で、参加者が少人数のグループに分かれて意見交換を行う対話手法「ワールドカフェ」という仕組みを取り、「これからの豊かさを、どうワクワクしてつくっていきたいでしょうか」というテーマで意見を交わしました。


「物々交換やモノが循環する仕組みなど、お金にとらわれすぎることなく生活を営める方法があると、日々が豊かになりそうだと思いました」
「旨いビールで乾杯したい、という気軽な動機で始めた方がおもしろいことが生まれそう」
など、グループごとユニークな視点で豊かさを考えていきました。


最後は全員で記念撮影!

最後に、ゲストの2人の挨拶ののち、イベントは終了。その後の懇親会では、ゲストや参加者同士、交流を楽しみました。

「アスワク」プロジェクトは、1月中に第2回を実施予定。ぜひ楽しみにしていてください。



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