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理解出来るって楽しい!『LIFE SCIENCE(ライフサイエンス)長生きせざるをえない時代の生命科学講義 』

本書を読んで思ったのは、私も生命科学を理解できるんだな、という単純すぎる驚きです。私は科学に憧れがあったので、流行りのものや面白そうなものは一通り読んでいました。しかし、ワクワクするまではいかない。たとえば、伝記スタイルであれば、科学者の破天荒な人生に惹きつけられて楽しめることもあります。でも、「一から分かる科学〜」のような、科学の魅力をストレートに伝える本は、頭をフル回転する必要があり、娯楽というより勉強になってしまうのです。

本書は、その苦手意識を超え、まさに娯楽の本でした。いつのまにか「オートファジー」を説明できるようになっている、という感覚です。著者の吉森保先生は、大阪大学大学院で細胞生物学を研究しています。研究のきっかけは、20数年前に大隈良典先生(2016年のノーベル生理学・医学賞を受賞)との出会いでした。その後、哺乳類のオートファジー研究でトップを走り続け、世界的に有名な研究者となりました。

なぜ、本書を最後までワクワクして読めたのか。そこだけこのレビューでお伝えしたいと思います。吉森先生が面白くて素晴らしいのは言わずもがなですが、本書はとことん初心者の目線に合わせて説明してくれます。そして、基本の土台を頭の中に構築し、これまで散らかっていた様々な知識を、棚に収めるように整理整頓してくれます。

たとえば、階層を知るということは、頭の中に棚を作るイメージです。

 小さすぎて、大きさそのものをイメージするのは大変なので、細胞と細胞の中や外にあるものたちの大きさの違いを意識することがポイントです。大きさの違いによってグループ分けできます。生命科学者はそれを階層と呼びます。階層があること、つまり階層性は生物を理解する上でとても重要です。

 「タンパク質」は細胞を語る上で非常に重要なので、タンパク質が生命のサイズの最も小さいところ、階層のいちばん下に位置していることをざっくりと頭に入れておくだけで十分です。

細胞、オルガネラ(細胞小器官)、タンパク質が異なる階層であることが理解できれば、細胞の中の構造をイメージしやすくなります。また、ウイルスの階層が超分子複合体(オルガネラと高分子の間)というのが分かれば、布マスクがウイルスにとって効果がないことが科学的に理解できました。

さらに、「相関」と「因果」という考え方を知ることも整理整頓には欠かせないツールです。

 相関というのは、目に見える関係です。研究の観察結果でもあります。たとえば、さきほどの例だと、「暗い部屋に入ってスイッチを押したら電気がつく」のは相関関係です。そして、この情報だけだとスイッチを押すことで電気がついたとはいえないと先ほど言いました。つまり、相関関係とは「原因と結果ではないかもしれない」関係です。  因果関係とは、確実な「原因と結果の関係」です。相関関係には因果関係が含まれていていることはありますが、相関=因果ではありません。でも人は相関関係を因果関係と思いがちです。

因果関係を示すためには、実験や検証をして確かめなければなりません。本書でも、吉森先生は相関関係と因果関係を何度も使い分けて説明しています。何が証明されていて、何がまだ不十分なのか。相関関係と因果関係の理解が深まると、私はいろんな物事を長期的に理解することが出来るようになりました。今は全体から見てこの段階の実験しているんだな、この相関関係から因果関係を導くための実験なんだな。生命科学の世界だけではなく、私たちの日常の中でも非常に役に立つ考え方です。

本書はこのように、「科学的な考え方」を身につけたあとに細胞の中へと進んでいきます。吉森先生は細胞の中を宇宙のようだと表現されています。宇宙を感覚的に理解出来るってすごく嬉しいことです。そして何より、今後、生命科学系の本をより楽しみながら読めることが最高のご褒美です。これは知識ではなくて、まさに武器です。私は本書を読んで武器を得ました。自分自身を生命科学に夢中にさせることができる武器です。読書って本当に楽しいですね!

 『LIFE SCIENCE』を読み終えてから本書を読むと、ビジネスの話に集中出来て読みやすかったです。

『LIFE SICENCE』を読んでから本書に戻ると、より理解が深まりました! 



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