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マズロー心理学 欲求階層論の誤解と真実④ 欲求の相対的満足度

先にも述べたように、欲求には相対的な優先度があります。これは欲求階層論の重要な論点でした。しかし、下位の欲求を100%満足しなければ、次の欲求が生じないかというと、そういうわけではありません。人は低次の欲求を100%ではなくある程度満たすことで、より高次な欲求が現れると考えるのが妥当です。

この点に関してマズローは、一般的な人間について基本的欲求の満足度について、独断であてはめた数字を示しています(『人間性の心理学』)。これによると、一般的な人間では、生理的欲求が85%、安全の欲求が70%、所属と愛の欲求が50%、承認の欲求が40%、自己実現の欲求が10%、このようにそれぞれを満たしていると見立てています。

マズローが示した数字が正確かどうかはともかく、この考え方を流用すると、先に見た5層に分けたピラミッド図とは別のビジュアル・イメージを想定できます。従来のピラミッドを四角形の中に取り込んだイメージです(図2)。

図2:欲求の階層の新たなビジュアル

ご覧のように四角形は5層の区分になっていて、それぞれがマズローの指摘した五つの欲求に相当します。この四角形の中央に従来のピラミッドが位置します。

では、ピラミッドを中に含む四角形を、私たちが潜在的に達成可能な自分がなり得るすべてのものになった状態だと考えてください。その上でアミのかかったピラミッド部分に注目してください。

この場合、アミのかかったピラミッド部分は、四角形(完全な自己)に対して、未だ完全な自己に至っていない現在の不完全な自分自身だと定義できます。そして、一般的な人ではその達成度が、生理的欲求85%、安全の欲求70%、所属と愛の欲求50%、承認の欲求40%、自己実現の欲求10%になるというわけです。

このように、マズローの欲求階層論を四角形とピラミッドの組み合わせで表現することで、いまだ潜在的な能力が開花せず、その結果自己実現に至っていない私たち自身を象徴的に表すことができます。つまりマズローに従えば、私たちは成長の途上にあるのであって、不完全な三角形を完全なる四角形へと変ずるよう努めるべきなのです。

このようなイメージが湧く四角形とピラミッドの組み合わせは、従来の「5層のピラミッド図」よりも示唆にあふれていると思います。

続く

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この記事で紹介した内容は、拙著『マズロー心理学入門』(FLoW epublication)でより詳しく解説しています。マズロー心理学ついてもっと詳しく知りたいという方は是非ともご一読ください。

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