オタクは祝福されしもの~ありきたりな半生と超絶私感~
漫画やアニメ、ゲーム、アイドルを好む者はしばしば「オタク」を自称し、また他称される。
このような「いかにも」コンテンツ以外にも、あまたのジャンルが存在しており枚挙にいとまが無い。電車、プラモ、歴史、軍事、スポーツ、釣り、健康etc…対象は無機有機問わず、とにかく何らかのコンテンツに没入できる者がオタクと言えよう。
ここからはごく個人的な備忘録と持論をダラダラ書く。
ありがちの痛い内容含め面白さや為になるとかは度外視のため、暇で暇で仕方ないわ~みたいな方はおつきあいいただきたい。
なお、不愉快になる可能性もあるため、閲覧は自己責任でお願いします。
~自己紹介ざっくり~
もともと空想好きというか、空想の世界で遊ぶのが好きな子どもだった。
人や物がいる「ごっこ遊び」とは少し異なり、すべてをあくまで脳内で済ませるのだ。
現実の友達とも勿論遊ぶが、寝る前に布団にくるまって「冒険」するのが何より至福の時だった。この妄想についての話は友達に一切したことが無い。
(親からは『あんたまたなんかブツブツ言ってたよ』と気付かれていたが)
~空想世界について~
以下、その空想世界の設定について語る。
遠い記憶のため曖昧だが、空想世界のわたしは「スズカ」という名前の、短めのツインテール(この髪型にこだわっていた)の美少女である。
家には優しくラブラブなパパとママがおり、幸せな毎日を過ごしている。学園(学年は不明。おそらく中学校か?)では同性からも異性からも人気があり、スポーツ万能な「スズカ」。
容姿はとにかく細い。特に二の腕と太ももは群を抜く。基本ノースリーブにミニスカートを履いている。そして短めのツインテール(大事なことなのでry)。
ちなみに「スズカ」という名は本名とほど遠く、容姿も設定も現実を何一つ反映していない。スクールカースト上の理由でノースリーブとミニスカを着るなど、とても許されていなかった。
「スズカ」には美少女のお友達にありがちな、しゃべるペット(プ●キュアに出てくるあれらのキャラに近い)がおり、常に肩に乗っている。名前はまだない。
そしてだいたいピンチに遭う。道に突然異空間に繋がる穴があき、吸い込まれて異世界に行くこともしょっちゅうだ。そして何かしら攫われる。
今の主流なら、なんとかコンパクトやほにゃららステッキで自ら魔法少女や美少女戦士に変身して華麗に戦うだろう。しかし「スズカ」にはそんな力は無い。
しゃべるペットもなんで喋れるのか理由もないし、何の使命も負ってない。
「スズカ」はなんかいいかんじのペンダントを持っている設定だが、飛行石でもブルーウォーターでもなく単なるアクセサリーだった。
じゃあ誰がピンチから救うのか?
それは少女漫画界御用達のかっこいいヒーロー君である。彼の名前はころころ変わる。「シンイチ」(明らかに東の名探偵を意識)だったときもあったな、程度の記憶しかない。
少なくとも彼は戦闘要員で抜群の美男子だった。
「スズカ」はヒーロー君から無条件に愛され、どんな敵からも守られる。
そんな「スズカ」であるが、非力ながらもめちゃくちゃ悪い敵(敵についての設定は特になし。多分当時嫌いな奴らを凝縮したもの)と戦おうとする。
健気ないい子なため、ヒーロー君は更に「スズカ」を大切に思う。
学園に通いながらも戦う、心意気はさながら美少女戦士であるが、前述のとおり変身もできないし使命も負ってない。
ヤバくなればどこからともなくヒーロー君が姫抱きで助けてくれる。
そして締めはこうだ。「スズカ!大丈夫か?」「うん。あたし平気よ!」(この言葉遣いは普段しない)
抱き合う2人。くぅぅ~完璧!感動のフィナーレ。(敵はどっか行ってる)
ちなみにこの時の彼はウルトラスーパーギガアルティメットめちゃかっこいい。
ここまで書いてきて、ハ?これ何がおもろいん?と思う。漂う「いつもの」感。あるあるしかない設定。
ではなぜこれを書いたかというと、空想がどれだけ現実のわたしを助けてくれたのか、そして後のオタクへの道に導いてくれる下地となっていたか、を説明したかったからだ。
~わたしの現実世界について~
ここからは現実の子どものわたしを書く。
現実のわたしは美少女ではなく、むしろ…であった。(写真が大嫌いで、今でも見返したくない)
異性とまともに話せず、なんならいじめられ気味だったし、幸い友達はいたが、そうでない同性は苦手な部類だった。
席替えも班行動も大嫌い、1番の苦手科目は体育と算数(二つあるとか言わないで)、給食や掃除時間が心から苦痛、クラス遊び(学童保育でないにもかかわらず、決まった曜日に強制される)ではスポーツのできる男子から目の敵にされた。
中学校はさらにスラム化の一途を辿り、ガラスは割れるわ非常ベルは鳴りやまないわ、教師が「タバコは教室で吸うな」と不良にお願いする感じだった。
※タバコは20歳になってから!
異性からのいじめのようなものは陰湿になり、教師には分からない形で続いた。異性への恐怖心や嫌悪は人生最高値に達し、友達以外の同性との格差も高まっていった。
体育祭も文化祭も修学旅行もすべて欠席したかったが、それを許される時代でもない。
わたしの「問題」には気付かない教師からは、目立つ不登校の生徒への「お世話」を頼まれ使いぱしりにされたり、荒れる学級対策を考える会に放課後参加させられた。
スクールカーストという言葉すらなかった時代だったが、明らかにわたしはその下層だったにもかかわらず、だ。
家庭環境も、虐待はされていなかったものの、家族仲はお世辞にいいとは言えず、常に父の顔色を伺っていた。
障害のあるきょうだいへの折檻や罵倒、母への暴言暴力の横で、「自分だけはいい子でいなければならない」「何にも感じてない」「父はなるはやで〇ね」「わたしは高校で家を出る(方法はわからない)」と、肩肘張っていた。
家族が揃い諍いが起こりやすい土日は苦痛だった。しかし平日は大嫌いな学校で地獄だった。もはや何曜日だろうと嫌だった。
なぜ生まれてきたのだろう、なぜわたしは「スズカ」じゃないのだろう。
なぜヒーロー君に守ってもらえないんだろう。空想世界へはどうしたらいけるのだろう。
自殺という手段も知らず、ただただ生まれ変わりたい、逃げたい、「わたし」以外の存在になりたかった。
そんなわたしが唯一、完璧な世界で完璧な存在として謳歌できる場所。誰のことも恨まず、誰からも嫌われない場所。それが、空想の世界だった。
~運命の出会いと「土俵入り」、そして解放~
そんなわたしはご多分に漏れずアニメやマンガが好きであり、幼少の頃からアニメを視聴していた。そしてついに運命のルーレット回して、出会いを果たす。
ある日偶然友達から借りた某漫画の主人公に「初恋」をしたのだ。
漫画そのものの面白さにドハマリし、なけなしの小遣いをすべて単行本に費やした。
世はまさに大恋愛時代、同級生や上級生にワーキャー言う友達もいたが、そんなことはわたしには何一つ関係無かった。
3次元の人間は、う〇こはするわおならはするわ、他の誰かと付き合うしそもそも冷たい態度も取る。そして人を平気でいじめたり差別する。
そして何より、何より大事なことがある。「めっちゃめちゃかっこいいモノクロ静止画」を保存させてくれないことだ。
とにかく幻滅させられる点が多すぎる。
だが某主人公はどの異性とも違う。
彼は最強と賞された力を人のために振るい、次々に現れる悪に向かっていき、運命にあらがって生きていた。
常日頃は柔和な顔で、巨悪へは般若の顔で。
ひどい言葉も言わない、意地悪なことすら考えず、誰にでも好かれるが、真面目が故に己の罪に悩む彼。
時折見せる憤怒や哀憫の表情など、想い出すだけでゾクゾクする。
そしてなにより、「めっちゃめちゃかっこいいモノクロ静止画」の宝庫である。
彼のイラストを練習しては「これじゃない!!!」とキレてたし、原作の彼の放った技の衝撃波をなぞっては酔いしれため息をついた。
1番のお気に入りの扉絵の彼は、何十年経とうと脳裏に焼き付いている。
関連書籍は手に入るだけ買った。そしてこの頃偶然同人というものを知ったが、まだ強い戸惑いがあった。作者の描く彼だけが、わたしの彼だったからだ。
彼には約束されたヒロインがいたが、彼が誰を愛そうが関係無かった。愛されたいとも思わなかったし、そもそもわたしが彼に「認識」される必要も無い。この漫画の世界に行かなくてもいい。
ただわたしが彼の活躍を見て楽しみ、彼とその物語を好きでいられればそれでいい。
彼を思えば辛い現実から離れられた。もうわたしは、「スズカ」になる必要はなかった。
~生きる指針~
初恋の彼が無事にヒロインと結ばれたのを見届け、連載終了したため、いわゆる「ジャンル移動」をすることとなったわたしは、再び「恋」に落ちた。
某漫画某キャラの彼はとてもワイルドで、偶然にも初恋の彼と同じ武器使いだった。
彼にも過去に傷があるが、それを糧に夢に邁進していた。
外見の格好良さとストイックさ、高い戦闘力とたまに見せるまぬけなギャップ、それら全てがわたしを夢中にさせた。
なけなしの小遣いを単行本に費やし(デジャブ)、巻頭カラーで彼がいるときだけは掲載誌を買って切り抜き、ファイルを作った。
少し絵が描ける友達に彼を描いてもらっては家宝とした。
アニメは録画して繰り返し繰り返し見ては痺れて泣いた。
彼と同じ髪の色に染めたいと願ったが、奇抜な色だし中坊のため不可だった。
彼の勇姿を見たいから、応援し続けたいから、作者を尊敬してるから、彼を描く全ての人(すなわち同人作家)がいるから、こんなクソみたいな世の中でも生きていこうと思った。この頃にはすっかりオタクとして土俵入りを果たし、薄い本を血眼で求めた。
彼は強くなる、死なない、負けないと言った。わたしもそう思った。
~魂のお休み処、オタクという道~
ここから先、ドハマリするジャンルが増えていくので割愛する。
今最愛の「彼」は、もう既に作品中で亡くなっている。しかしその生き様に惚れているため、これからも永遠に心の中で生きてくれる。きっと二次元での最後の恋だと思う。
長々書いてきてひとつ見えたことは、「悲惨な現実から一時でも離れられる場所は重要だ」ということである。
現実を見ろ!逃避するな!夢みてんじゃねーよ!ぼーっと生きてんじゃねーよ!
そんな「励まし」のお言葉で溢れている現実世界だが、少なくとも小中学校の頃のわたしが現実しか見ていなければ、間違いなく死を選んでいた。
何の希望も見いだせない、どこにも逃げられない、抗う方法を知らない、気が休まらない。
不登校になってみよう、誰かに話してみよう、家を出よう。
そんな知恵も勇気も、子どものわたしには浮かばなかった。
今は違うのかもしれない。ネットが当然のようにあり、知りたいことがソッコーヒットする。でも、それで全てが救われるほど、この世界は生やさしくはない。
子どもであるが故に逃げられないわたしが心を休めるには、どうしても、空想世界に行くこと、そしてオタクになることだけが手段だったのだ。
生きている限り完璧なことなど無い。それはとうに気づいていた。自分が完璧な存在ではないのだから。それでも心からの安心を得たくて辿り着いたのが、オタクという道(ウェイ)だったのだ。
願わくば、全ての人に魂の「お休み処」があらんことを。