貴族気分を味わう👑万年金欠庶民の某日〜心は常に大金持ち👛〜
とある秋の私の平日。
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朝、仕事へ行く夫を見送り、軽く洗濯物を畳む。
部屋干しのため、カラッと渇いてくれないことに若干の残念さを抱きつつも、洗濯物がなくなりスッキリした空間に気持ちが晴れる。
今日の午後はお出かけなので、お気に入りの格好で行こうと、コーディネートを前日から決めていた。
・・・にも関わらず、いざ着てみると、スカートの丈感がイマイチ過ぎて、スカートを脱ぎ捨てる。ロング丈をあれほど毛嫌いしていたのに、今となれば半端な丈はダサいと感じ、ロング丈を求めている。突然服の寿命を突きつけられた気分だった。渋々、別のスカートに足を通す。
まあ、どちらもGRLなので正直大差ないと言えばない。
めげずに私はフレンチトーストを焼く。
朝ごはんは食べないことも多いため、ちゃんと用意するのは珍しいが、今日は昼を食べるタイミングがないため、腹ごしらえをしておく。
痩せたいので砂糖を控えめにしたが、本当に痩せたい奴はそもそもフレンチトーストなど食べない。そして、砂糖を控えめにしたことを後悔した。
フレンチトーストのお供は、KALDIで購入したインスタントコーヒー。フレンチトーストはちょっと失敗やったけれども、最高の朝!
お腹が満たされ、YouTubeを見て時間を潰し、午前のうちに近所のマダム宅へ歌のレッスンへ伺う。
上品なのに気取らず、いつも明るいマダムのレッスンで私も元気をいただき、マダム宅を後にして向かったのは帝国ホテル。
今日は、知人が出演するチャペルコンサートが開催されるのである。
帝国ホテルまでは、JR大阪駅からシャトルバスが出ている。
阪急の大阪梅田駅に降り立った私は、見事、皆さんお馴染みの梅田ダンジョン沼にハマり、予定よりも15分遅れてシャトルバス乗降場に到着。自他ともに認める方向音痴のため、15分遅れは想定範囲内であるが、JRで行けば良かったと若干の後悔をするなどした。
そんなわけで、帝国ホテルにたどり着いた。
やはりホテルというのは、ブライダル等で各所に出入りしているにも関わらず、客として行くとテンションが上がる。
そして、照明暗すぎやろと毎回思う。
エスカレーターでチャペル階まで上がり、ホテルの雰囲気を味わう。スタッフに丁寧に案内される。庶民の私にもこの丁寧さ、とても嬉しい。
時間になり、オルガンとステンドグラスがキレイなチャペルで演奏を聴く。
チャペルはよく響き、いや、響きすぎて逆に歌いにくいんではないかとは思うけれども、生の演奏を全身に浴びて、心が満たされる。
今回は演奏されていなかったが、プッチーニのオペラ《ラ・ボエーム》中で、貧乏な詩人の青年が歌う超有名な曲で、以下のようなフレーズがある。
日本語にすると、
「楽しい貧しさ中で、紳士のように愛の詩や讃歌を贅沢に嗜んでいます。
夢や幻想、空に描くお城のおかげで、私は大金持ちのような心を持っているのです。」
みたいな意味になる。
このフレーズは音楽や芸術を愛する全ての人に刺さるんじゃないかと思っているし、実際私は演奏会に行くたびに、この曲のこのフレーズを思い出し、自分の置かれた環境に幸せを感じる。
そして、今日はこれだけでは終わらない。
今日の演奏会で楽しめるのは演奏だけでなく、終演後に帝国ホテル内レストランにてケーキセットがいただけるのだ。
もらったプログラムをお気に入りのポレーヌのバッグへしまい、レストランへ移動する。
紅茶かコーヒーかを選ぶ際にコーヒーを選んでしまったが、後から英国フェアがやっていることに気が付き、どうせなら紅茶にすれば良かったと、まあ、恐らく、セットの紅茶に英国フェアの影響はないとは思うが、なんとなく後悔した。
とはいえ、スイーツにコーヒーの組み合わせにハズレはないため、良しとする。
本日のケーキは、【ダークチェリーのタルト】。
最近行った海外の話をしている隣のマダム達を横目に、秒で完食。
こういう本物の貴族たちによって、私たち音楽家は支えられている。
タルトもコーヒーももちろんとっても美味しかった。
音楽をやっていなかったら、こんな空間でタルトをいただくことはなかっただろうとしみじみ思う。食べたとしても、ダークチェリータルトを選ぶことは多分ない。
食べ終えたらサッとレストランを出る。
庶民の私は、この後自宅でAmazonの荷物を受け取らねばならない。
シャトルバスまで時間が少しあるため、先ほど行き損ねた御手洗に行く。
ホテルのトイレはもはや部屋。入るだけで気持ちが高揚する。
用を済ませ、トイレの割に重たい扉のドアノブを握り、体の重みを乗せると、向こう側に人がいた。
「すみません、どうぞ」と譲ると、キラキラが施されたカーディガンが印象的なマダムに、今日履いていたRANDAのキラキラバレエシューズを褒められた。「私もキラキラ大好きです♪」と。確かに好きそうですね!!!ww、、、とは返さず、微笑んでお礼を言った。
こんな時くらい大騒ぎせず貴族に扮したい。
シャトルバスがホテルから出発しJR大阪駅に到着すると、一気に現実が押し寄せる。
高架下のラーメン店のにおい、電車の音、排気ガスのにおい、どこからともなく聞こえる救急車の音、いろんな国の言葉。
わたくしの平日昼下がり貴族タイム、これにて終了。
帰りはスムーズに最寄駅まで帰ってくることができた。
先日、うっかり寝違えてしまったのがなかなか長引いているため、ドラッグストアで湿布を買って家へ帰る。
Amazonの荷物も受け取り完了し、明日の楽譜を見直した。
明日は初めての現場へ行くので、やれることはやっておきたい。
今日は夫の帰りが遅い。夜に今月の本番の練習がある。
晩ご飯のメニューは決めていない。
だけど、演奏会の感想や、夫の今日の練習での話をしながら食事をする時間が楽しみだ。
今日の晩ご飯はきっと、どんなホテルのタルトよりも美味しいだろう。