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隔絶された小空間
※画像はお借りしました
今から10年以上前。母、妹、私の三人で温泉に行ったときのこと。
温泉には家族でよく行っていたが、このときは母の大サービスで「露天風呂付き客室」に泊まった。
露天風呂が付いた部屋は、それまで一回ぐらいしか泊まったことがなかったがそれほど良い感じではなかった。
が。
そのとき泊まった旅館は、なんというのか、、、「静謐」って言葉が頭に浮かぶほど、とても静かで。ものすごく良い旅館だった。
そこは露天風呂付き客室メインじゃなかったはずなのに、不思議にロビーの混雑や客の気配を感じなかった。
…そして自分は、客室の印象しか記憶に残ってないのだ。
部屋に通されると。
寝室兼居間には、壁を頭にベットが三つ並んでいた。
程よい空間を隔てた反対側の壁の、キャビネットの下にCDプレイヤーがあり。そこからなんとも言えぬ良い音楽が流れている。(今思えばヒーリングミュージックだ)
窓の外、向かって左側にゆったりとした露天風呂スペースがあり、右側はそのまま居室が張り出したカタチで、隣室との仕切り兼眺望が楽しめる。
丸い石造りのゆったりした風呂にはたっぷりと湯が張られ、湯気を上げている。湯口からは滔々とお湯が流れていた。
母が早くも?服を脱ぎだして露天風呂に入る気満々になっていた😅
窓の外は向かい側の山肌だけ。樹木が茂るひたすら静かな光景だ。
日が暮れてライトを点けてみると、ほの暗い中にオレンジ色の灯がともり、露天風呂がぼんやりと浮かび上がった。
そのヒーリングミュージックは、不思議なほど心地よかった。
今思い出してもまた聞きたいと思う。CDのタイトルを書き留めておかなかったのを何度悔やんだことか。
食事は別室だったが、これまた客にはほとんど会わなかった。
部屋に戻るとき、宿の売店を覗いてみると。
売店には客も売り子も、ひとっこひとりいなかった。
「…売る気全然ないよね😅」
と、妹と話した。
だがその前に、なぜこの旅館がこんなにひと気がないのか、わかる気がした。
なんというか。
一度部屋に入ったら。そこで完結してしまうのだ。
部屋から出る気がなくなるくらい、満足しちゃうのである。
事実、大浴場があったはずなのに、私も妹も母でさえ。行ってないのだ!信じられる?
私たちはひがな一日、風呂に入りだらだらし。
張り出した窓から露天風呂にいる家族に手を振ってふざけたり。
ベットに寝転んで音楽に浸り。
この隔絶された空間を愉しんだ。
文字通り、最高の旅館だったのだ!
ところがこの旅館、岩手のどこかだったことは覚えているのだが、どこの温泉だったのか?旅館の名前も覚えていない。
また行きたいけど、どれくらい宿泊料がかかるのか。きっと高いに違いない。(あのときは三人だったし、土日は避けて安い料金のときを狙って行ったはずだ)
高級旅館、と言われる場所は数多くあるだろうが、本当に居心地の良い空間、というのに出会ったのはあの旅館が唯一である。
皆さんも、もし旅に出て、旅館に泊まるなら。
気持ちの良い満足のいくサービスと空間に出会えますよう、心から願ってます😊