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運命の輪 第2章 第4話

第4話 静かな復讐


1. 普段通りの妻でいること

「おかえりなさい。遅かったわね」

夜11時を過ぎた頃、浩介が帰宅した。

スーツのネクタイを緩め、疲れた顔で玄関をくぐるその姿。

これまでなら、「お疲れ様」と労い、温かいお茶を出してあげていた。

でも、今の私は違う。

「ちょっと仕事でね」

浩介はそう言いながら、ソファに座る。

「ふぅん」

それ以上、私は何も言わない。

彼の言葉を疑っていることを、悟られないようにするため。

——だって、本当は知っているのだから。

浩介が誰かと密会していることを。
そして、その相手が安河紗枝という女であることを。

今すぐにでも、「ふざけないで」と言ってやりたい。

でも、ダメ。

まだ決定的な証拠が足りない。

男というものは、自分に都合の悪いことが起こると必ず言い逃れをする。

「ただの友人だ」
「仕事の付き合いで会っただけだ」
「お前の勘違いだ」

それができないほどの証拠を突きつけて、初めて勝負になる。

だから、私はまだ戦えない。

その瞬間が来るまでは、いつも通りの「良き妻」を演じなければならない。

それが、何よりも辛かった。


2. 秘密裏の調査


数日前、私は探偵からの報告を受けた。

「おそらく、相手はこの女性です」

そう言われて見せられた写真の中には、浩介が安河紗枝とホテルに入る姿が映っていた。

2人が一緒に過ごした時間は、たった数時間かもしれない。

けれど、その事実がすべてを物語っていた。

——裏切り。

胃がひっくり返るような感覚を覚えながら、私は冷静を装った。

「まだ、決定的な証拠ではないですね」

「そうですね。離婚や慰謝料請求を考えるのであれば、もう少し確実な証拠が必要です」

「お願いします。徹底的に調べてください」

この場で泣き崩れることは簡単だった。

でも、私はそんなことはしない。

泣いて済む話じゃないから。

浩介の裏切りに対する報いを、私は必ず受け取る。

3. 感情を押し殺す夜

「みどり、もう寝るのか?」

ソファに座る浩介が、スマホをいじりながら聞いてきた。

「ええ、少し疲れたから」

「そうか」

私は微笑み、寝室へと向かう。

背後で、浩介がスマホをいじっている。

きっと、不倫相手と連絡を取っているのだろう。

「今度飲みに行かない?」

そんな軽い言葉を送っているのかもしれない。

……ふざけないで。

私はドアを静かに閉め、深く息を吐いた。

怒りで体が震えそうになる。

すぐにでも彼を責め立てたい。
「あなた、浮気してるでしょ」と問い詰めたい。

でも、まだ。

まだその時じゃない。

彼が言い逃れできない証拠を突きつけるまでは。

そう決めたのだから。

私はベッドに横になり、目を閉じる。

眠れるはずがない。

だけど、私は今夜も耐える。

その先に待つ、最高の復讐のために。



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あすみ
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