腐敗防止基本方針
【動向】
贈収賄・腐敗行為に関する法規制が国内外で強化されています。背景には、近年の企業活動のグローバル化の進展に伴い、公正な海外市場での商取引の機会の獲得を得るには、不正な利益供与行為は防止すべきという問題意識が国際的に高まっているためです。実際、摘発された企業に対しては、重い課徴金が科されています。多国籍グループ企業では、公務員等に対する贈賄等防止基本方針を各社ホームページに掲載し、対外的なアピールにも努めています。
【各国の規制】
OECD:国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約では、不当な利益の取得のために、外国公務員に対して金銭等の不当な利益を供与することを締約国の国内法において犯罪と規定することが求められています。
日本:刑法、不正競争防止法第18条において、外国公務員等に対する不正な利益の供与等を禁止しています。
米国:Foreign Corrupt Practices Act 1977(米国FCPA)
英国:UK Bribery Act 2010(英国UKBA)
海外進出企業先の政府関係者が親会社所在国(日本)を訪れ、工場視察などを目的に日訪した際、日本本社の接待の仕方には、留意が必要です。特に、外国公務員の家族の観光費用を負担したり、過剰な接待を施すことは、基本的に控えた方がよいです。また、ファシリテーション・ペイメントは、海外進出企業国の行政手続き促進の見返りに、比較的少額の対価の支払いを行うものです。ファシリテーション・ペイメントは、金額の多寡を問わず贈賄に抵触する恐れがあるため、注意が必要です。以下、会社において、腐敗防止基本方針を規定化する際、一般的な記載項目と概要を列挙します。
【腐敗防止基本方針を規定化する際、一般的な記載項目と概要:①目的】
会社の事業の健全な発展を促進することです。
会社の役員および従業員が、事業に関連する腐敗の防止に努めること、および腐敗に対して自主的かつ予防的な措置を講じることです。
【②定義】
「公務員」とは、すべての公務員、政党、公職候補者のほか、国有・政府の支配下にある企業を含みます。
「取引相手」とは、自社が取引を実施する全ての取引相手方を指します。
「賄賂」とは、公務員その他の者に対し、事業獲得・維持や不当な利益を得る目的で何らかの価値を供与することを指します。
【③贈収賄の禁止】
従業員は、国内外を問わず、会社の業務を遂行する過程で公務員に賄賂を提供してはなりません。実際に賄賂の提供の実態がなくとも、提供を申し出たり、約束したりする行為が、贈収賄に該当すると認定される場合があります。
従業員は、会社の業務を遂行するにあたり、他社の役員・従業員や私企業の従事者に対して、違法行為や背任行為を誘引する目的で、利益を提供したり(提供を依頼したり、約束したり)、利益を受領したり(受領を依頼したり、約束したり)してはなりません。
【④公正かつ自由な競争の促進】
従業員は、公正かつ自由な競争の原則に従い、人為的な手段で不当に競争を制限することなく、当社の事業を推進しなければなりません。
【⑤従業員の義務】
従業員は、業務を遂行するにあたり、腐敗防止の原則を理解し、実行に努めなければなりません。
【⑥内部統制】
内部統制システムの一環として、従業員は、腐敗防止プログラムを実施します。
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