安全保障貿易に関する会社の管理責任
ビジネス講座運営中のアスクねこです。
安全保障貿易管理の概要について思います。
1. 安全保障貿易に関する企業の管理責任について、お話しします。
企業は、事業活動を営むにあたり、武器そのものや軍事的に転用されるおそれのある貨物・技術が、国際社会の安全性を脅かす国家やテロリスト等、懸念活動を行うおそれのある者に渡ることを防ぎ、国際的な平和及び安全の維持を目的として輸出管理を担う責務があります。
多国籍企業である場合、本社のみでなく、グループ全体に厳しい社会的責任が問われることになるため、チェックリストなどを活用して、各社が適切な輸出管理を行っていることを担保することが、有効な手段となります。
2. エンドユーザの確認
安全保障貿易の管理で、重要なプロセスとして、エンドユーザの確認があります。
エンドユーザの確認プロセスでは、自社の輸出品が、どのようなユーザに最終的に使用されたのか、特定する必要があります。例えば、次の項目を組み入れたチェックリストを作成して確認します。
・核兵器の開発、生産、使用または保管が行われているエンドーユーザか?
・化学兵器用の化学薬品の開発、製造、使用または保管が行われているエンドーユーザか?
・生物兵器用の細菌剤の開発、製造、使用または保管が行われているエンドーユーザか?
・化学物質を分散させるための機器の開発、製造、使用、または保管が行われているエンドーユーザか?
・化学兵器用の薬剤または生物兵器用の細菌剤の開発、製造、使用または保管が行われているエンドユーザか?
・核燃料材料または核原料の開発、生産、使用が行われているエンドユーザか?
・核融合に関する研究が行われているエンドユーザか?
・大量破壊兵器の開発などがが行われているエンドユーザか?
3. 安全保障貿易管理ガイドブック
経済産業省から、次の項目にかかる説明が規制されたガイドブックが、安全保障貿易管理ガイドブックが出ています。
①安全保障貿易管理とは?
②日本の輸出規制
③リスト規制品・技術
④キャッチオール規制とは?
⑤技術提供について
⑥技術提供の形態について
⑦輸出と技術移転のライセンス
⑧輸出業者のコンプライアンス要件
⑨違反した場合の罰則
⑩リスト・コントロール・フローチャート
⑪キャッチオール・コントロール・フローチャート
各項目の要点は以下のとおりです。
①安全保障貿易管理とは、国際的な平和と安全を維持するための手段の一つとして、兵器そのものだけでなく、高性能な工作機械や生物兵器の材料となる細菌など、軍事転用が可能なものが、大量破壊兵器の開発者やテロリスト集団など、懸念される活動を行う者の手に渡ることを防ぐことです。
②日本の輸出規制では、外為法に基づいて輸出管理が行われています。輸出する際には事前にライセンスが必要です。
③兵器そのものや兵器の開発に使用される可能性のある高性能な汎用品をリストアップしています。
④キャッチオール規制では、リストコントロールに該当しない商品の輸出について、その最終用途やエンドユーザーに基づいて規制しています。
⑤技術提供では、外為法では、商品の輸出だけでなく、技術移転も規制の対象になります。
⑥技術提供の形態には、海外からの留学生の受け入れや共同研究への活動なども、外為法で規制対象となる技術のやり取りに、含まれることを明記しています。
⑦輸出と技術移転のライセンスには、規制の対象となる商品の輸出や技術の移転を行う前に、事前にライセンスを取得することを求めています。
⑧輸出者等遵守基準では、リスト規制品の反復または継続的な輸出等を行う事業者が遵守すべき事項を定めています。
⑨違反した場合の罰則として、ライセンスを取得せずに規制品を輸出したり、技術を移転した場合、外為法違反となり、同法に基づく処罰の対象になる可能性があります。
⑩リスト・コントロール・フローチャートでは、次のようなフローチャートがあります。
物・技術の引き合い
↓
物・技術の該否判定
↓
物・技術の該否判定の結果、該当する場合、例外規定の適用可能性に関する決定を行います。
例外規定の適用可能性がある場合は、さらに、次のとおり、商品と技術ごとに、どのような状況が該当するか、判定して、許可申請の要否を判断します。
・商品|低価値商品の免除など
・技術|パブリックドメイン、基礎科学分野の活動など
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