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M&A後の取得原価(PPA)の配分プロセス

【PPAとは】
企業結合後のPPA手続きについて、解説します。PPAとは、Purchase Price Allocationの略語であり、日本語では、取得原価の配分を意味します。日本においては、2008年に、企業会計基準21号「企業結合に関する会計基準」が導入され、買い手企業はM&A実行後から1年以内にPPAプロセスを完了することが義務づけられています。

【PPAプロセスの留意点】
PPAプロセスの留意点は次の4点です。
1点目は、無形資産の評価は、日本会計基準においても2010年4月1日以降実施される企業結合から強制適用となっています。

2点目は、不動産の評価は、不動産鑑定士による鑑定評価などの客観的な証憑をベースに、合理的に算定された価格を時価とすることができます。

3点目は、機械設備等の動産は、再調達価額に基づき、時価で評価します。ただし、動産は、一定の使用期間が既に存在しており、どの程度の割引が合理的かの算定が困難であることから、実務上、無形資産や不動産のような評価が行われていません。

4点目は、企業結合前に認識された営業権(Goodwill)の取消し、新たな商標・顧客契約および顧客関係の公正価値の認識、および識別・評価されたその他の無形資産、繰延税金負債の調整への対応です。無形資産を公正価値で認識することにより、これらの資産の帳簿価額と税務上の金額との間に差異が生じます。帳簿価額と税務上のベースとの差額については、法定税率で繰延税金を認識する必要があります。

【国際財務報告基準】
IFRS第3号では、企業結合で取得したすべての識別可能な資産及び負債を、取得者が公正価値で計上することを求めています。市場価格は、公正価値の算定に利用されます。市場価格が入手できない場合、公正価値の見積りは、類似の資産・負債の価額や他の評価技法を用いることになります。いずれにしても客観性のある証跡を残す必要があります。実際には、有形・無形資産の評価に3つのアプローチが用いられます。これらは、インカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、コスト・アプローチです。それぞれ基本概念を解説します。

【インカム・アプローチ】
インカム・アプローチは、各資産から将来どの程度のキャッシュ・インがもたらされるかの経済的利益の流れを想定して、独立企業間取引に基づき、当該資産が販売される価格を推定します。インカム・アプローチでは、各資産から得られる経済的利益の流れを、通常は予測キャッシュフロー(forecast cash flow)に基づいて計算します。また、適切にリスク調整された割引率で現在価値を算出します。インカム・アプローチは、無形資産の評価方法に用いられる一方で、機械設備等の動産に係る有形資産の評価では、有形資産ごとに予測キャッシュ・フローを紐付けることが難しいため、ほとんど用いられていません。

【マーケット・アプローチ】
マーケット・アプローチは、評価対象の資産を直近の市場取引で売買された類似の資産と比較することで、 資産の公正価値の指標を算出します。公正価値の見積りは、通常、観察可能な市場データから利用可能な資産または多数の類似した資産の取引価格を参照して算出します。そのような特徴から、無形資産が一般的に、継続企業の売却の一部としてのみ譲渡され、個別的な取引ではないこと、さらに、無形資産は特定の事業体に固有のものであることなどの特徴を踏まえると、マーケット・アプローチが適切な計算手法とは言い難いと言えます。機械設備等の動産に係る有形資産の評価では、有形資産の対象資産の数が多い場合、中古市場での価格が参照できるケースは限定的であることが想定されます。そのため、有形資産の評価には、マーケット・アプローチは、頻繁には適用されません。

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