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【ブラジルファベーラ生活】「デカ壁パーティ」とサバイバルな日常

爆音パーティを悪利用

私が住むキロンボ(Kilombo Tenondé Coutos)はブラジルの貧困地区いわゆるファベーラの端っこの海辺にその敷地がある。

最近近所のビーチでparedão(パレダン)と呼ばれる大音量のパーティをやってはそれを悪利用し、助けを呼んでも近所に聞こえない間を縫って泥棒に入る輩が出没している。

近所のカルメンおばちゃんは回覧板のようにそういうニュースをWhatsApp(Lineのようなアプリ)で送っては注意勧告をしてくれ、先日もまた同じ輩が泥棒に戻って来たと通知が来た。

ポルトガル語では例えば大きい「grande」→非常に大きい「grandão」のように「-ão」を語尾に付けることで「とても、非常に…」といった意味合いになる。

そしてparedãoというのはポルトガル語で「壁=parede」から来ており、「大きい壁=paredão」というわけだ。

なぜ大きい壁が爆音パーティなのか?
それはレゲエパーティでよくある壁のように大きいサウンドシステム=スピーカーで大音量で音楽をかけるからだ。

↑このサムネのようなガンダム風?の強そうなスピーカーが定番。
大きくて強そうであればあるほどいいらしい。笑ってはいけない。しかしDQNという懐かしの2ちゃんワードが頭に浮かんでしょうがない…

↑または車のトランク部分を全てスピーカーにする。
こういうのが道端や海岸沿いに集合して来ると、どこからともなく超タイトミニのショーツと上はビキニのお姉ちゃんたちが集まって来る仕組み。

カルメンおばちゃんが言うには、近所のビーチでこのパーティの爆音をかけてその仲間がその周辺の家に押し入っているのだとか。

そもそも年金生活者たちも多い近所では爆音パーティは非常に迷惑がられており、それ自体がもはや公害。それに便乗して主に犬のいない年金生活者の家を狙っているというから悪質だ。

無意味な「デカ壁パーティ」禁止令

実はこのparedão自体ちょうど一年前の今頃、2021年10月にはサルヴァドールUruguai地区ファベーラのデカ壁パーティでギャングが6人を銃殺、12人を負傷させる事件があり、州知事がparedãoパーティ禁止令を出したため「一応」バイーア州では法的に禁止になった。

この禁止令以前にも道端で行われているparedãoに武装警察隊が立ち入っているのを見たことがある。そして禁止令など気にせず現在もそこかしこでパーティは行われている。

リオのファベーラのファンクパーティ「Baile Funk」バイリファンキなどと同様こういったパーティはギャングたちによるドラッグ売買や売春の温床となるため、特に若年層にとっては安易な娯楽の手段が犯罪へつながる可能性が高い。

しかしながらこういった貧困地区では就職するのも困難で、お金に困れば安易な道を示すのはギャングたちであり、その道へ進む若者は後を絶たない。

爆音パーティがファベーラの若者たちに人気なのも、中心街へ出る金銭的余裕も無く他に娯楽も無い時の身近なストレス発散の場であるから、根本的な社会的背景が何も改善されていなければデカ壁パーティ禁止令など意味が無い。

ギャングと泥棒の意外な関係

だが実は地元のギャングたちは基本的に自分のコミュニティの住人を泥棒することは無く、住民に対して悪事を働くのは大抵コミュニティ外から来る泥棒や強盗たちである。

むしろ地元のギャングたちはドラッグ売買の縄張り争いもあるため、外から来て自分たちのコミュニティで悪事を働く者たちに対しては厳しい。

今年に入ってから特に近所では、リオから来たギャングたちとの縄張り争いが絶えないため銃声を聞く機会が増えた。ただ一般市民を巻き込むことはあまり無い。

今回の泥棒も「戻って来た」という言い方をされていたため、おそらく他の地域から狙って来ている輩であろう。

キロンボ敷地内では保護犬たちが7匹パトロール?に回っているため比較的安全とは言え、実は犬に慣れた輩が平気で何度も侵入して来ている。

Paredãoの音はしょっちゅうなので慣れてしまっていた。しかし、音が近い時は泥棒侵入に気をつけねばならなくなり、まあこのくらい気を引き締めていた方がいいのだろう。

サバイバルな日常とカポエイラ

日常生活でこのレベルの気の引き締め具合が必要なのは、一見ストレスが溜まるかと思われるだろう。

しかしカポエイラというブラジル発の格闘技の一種をやっている私にとっては、こういう日常の中でこそカポエイラが生まれて来たのだと思う。そういう面を肌で感じることができるのは貴重だと思っている。

また日常生活の中で危険な場面に遭遇しても今までなんとかギリギリ回避できて来たこともあり、うちの師匠にはカポエイラをやっていたからだ、と言われたことも印象深い。

キャンプで野生のサバイバル術が磨かれるように、ファベーラ生活では別のサバイバル術が身について来る。キャンプ的な日常を送れるキロンボ的生活はいざという場面では役に立って来るはずだ。

危険が隣り合わせのファベーラ生活は不安や不便なことも多い。しかし、こういう生活の中でこそ研ぎ澄まれる感覚もあるのだと、個人的にはプラスになっていると解釈している。


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