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忘年会もクリスマスも消えた…年末の布団から見えた景色【エッセイ】

年末の予定は、すべて消えた。
忘年会も、鍋パーティーも、クリスマスパーティーも。
手帳にびっしりと書き込んだ楽しい予定たちは、
私の風邪一つで、あっけなく無効になった。

最初の兆候は、ほんの喉の違和感だった。

それが、気づけば大量の鼻水と咳、熱でぼんやりした頭と重い体に変わっていた。
「大丈夫、寝れば治る」と自分に言い聞かせたものの、翌朝、身体を起こすだけでふらつく有様。

これはもう無理だと観念して、予定のキャンセル連絡をした。
メッセージを打つ手が震えたのは熱のせいか、悔しさのせいか分からない。

「楽しみにしてた」「残念だけど、また来年ね」という友人たちの言葉は、優しくてあたたかかったけれど、それが余計に胸に刺さる。

どれだけ謝っても、準備にかけた時間も、期待していた時間も戻ってこない。

風邪を引いた自分が情けなくて、何もかも投げ出したくなった。


布団の中で、ただ天井を見上げる。
なんでこうなったんだろう?と考えるたびに思い出すのは、無理を重ねた日々。

仕事終わりに寒い夜道を駆け抜けて仲間と飲みに行ったあの日。
大荷物を抱えて歩き回り、プレゼント選びに精を出したあの日。
そして、疲れた身体に鞭を打って夜更かしを続けた日々。

全部、楽しかったからこそ、私は気づかなかった。
少しずつ、身体が悲鳴を上げていたことを。

「風邪を引いたのは、自分のせいだよな」とぼんやり思う。
誰のせいでもない。
無理をした自分のせいだ。
それを責める気力も、もう湧いてこない。
ただ、「しょうがないか」とため息をついて目を閉じる。

そんな日々が3日続き、気づけば12月はもう残りわずか。

布団から出たとき、鼻が通り、咳が収まっていることに気づいた。

治った、と実感した瞬間、安堵感とわずかな虚しさが押し寄せた。

楽しみにしていた予定は全部終わってしまったけれど、だからといって12月がすべて終わったわけではない。

カレンダーには、まだ大晦日が残っている。この日をどう過ごすかは、私次第だ。

吹っ飛んだイベントの代わりに、せめて小さな幸せを拾い集めるくらいはできるはず。


温かい飲み物を用意して、久しぶりに映画でも観ようか。
それとも、少しだけ散歩をして、冬の空気を吸ってみようか。


無理をしたせいで風邪を引いた自分。

それはしょうがない。

でも、だからこそ、残りわずかな時間は無理をせずに、自分を大切にしてやりたい。

今年を振り返り、静かに、でもあたたかい気持ちで締めくくりたい。

2024年の最後は、健康でいられることに感謝しながら、ひっそりと楽しむ年末にしよう。それで十分だ。

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飛鳥井はる
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