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【奈良の旅】狭井神社と大神神社で過ごす静寂のひととき
山の気配に包まれて、大神神社へ
奈良を訪れたときのこと。
三輪駅で知人と会う予定があったのだが、到着までの6時間をどう過ごそうかと考えていた。
せっかくだから奈良らしい場所を巡りたいと思い、Googleマップで近くの神社を探してみると、「狭井神社(さいじんじゃ)」という名前が目に留まった。
正式には「狭井坐大神荒魂神社(さいにいますおおみわのあらみたまじんじゃ)」。
三輪山の荒魂を祀る神社で、病気平癒の神様として信仰が厚いという。さらに、春に行われる鎮花祭は「薬まつり」としても知られ、古代からこの土地の人々に親しまれているとか。
神社の後ろにある井戸が「狭井」の名の由来で、太古から「薬水」と呼ばれるこの湧き水は、万病に効くと伝えられてきたそうだ。
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私は健康には恵まれているほうだが、それでも風邪や胃腸炎になったときには、普段の健康がどれほどありがたいかを思い知らされる。
また、祖父が体を壊して入退院を繰り返していたことや、母が膝の手術をしたこと、友人がヘルニアを患ったことなど、身近な人々の健康問題も私の心に刻まれている。
そんな経験から、健康祈願や病気平癒を祈る神社に足を運ぶのが習慣となった。
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狭井神社は、古代に疫病を鎮めたとされる最古の神社、大神神社の摂社でもある。まずは大神神社を参拝することにした。
その日はどこからともなく小太鼓の音や祝詞が響き渡り、催事が行われているようだった。
霧が山の気候を象徴するように漂い、神聖な雰囲気をいっそう引き立てていた。屋根からは湯気のようなものが立ち上っているのが見え、不思議な気配を感じた。
家族や友人の健康を祈りつつ、感謝の気持ちを伝えたあと、「くすり道」と呼ばれる道を通って狭井神社へ向かった。
この道には薬業関係者が奉納した薬木や薬葉が植えられていると後で知り、奈良らしい歴史の深さを感じた。
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狭井神社では拝殿の後ろにある薬井戸で神水をいただくことに。
奈良に来てから飲む水がどれもおいしいと思っていたが、この井戸の水は特に澄み切っていて、体にしみわたるような気がした。
「次に来るときはペットボトルに汲んで、親に届けよう」と心に決めた。
狭井神社での参拝を終え、帰路に立つころにはすっかり腹ペコに。
三輪そうめんを探しながら出会ったバイカーのお姉さんとの話は、また別の機会にでも。
健康を祈ることは、単に病を防ぐだけでなく、自分や大切な人を思いやることだと再確認した旅だった。
奈良の山々と静寂の中で、心がじんわりと温かくなるようなひとときだった。
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