
銀座の売掛金(ツケ)の仕組みについて/回収できないとどうなるの?
夜のお店で働いたことがある方でしたら「クラブは売掛があるから大変だよ」という言葉を一度は耳にしたことがあるかもしれません。売掛とは俗にいう「ツケ」って呼ばれているのですが、最近銀座でもツケはかなり減っていますし、キャバクラやラウンジでは無いシステムなので馴染みがない方も多くいらっしゃると思います。
でも「バブルの頃は売掛が払えなくて風俗に行ったホステスが多かった」とか「売掛が入らないと自腹を切らないといけない」など、噂自体は耳にしたことがある方も多いと思います。
その売掛ってそもそも何?自腹とはどこからどこまで?というところから今回は説明していきます。
売掛ってどういう仕組み?
例えば4月15日にお客様が3名でお越しになって、40万円の飲食をしてツケで帰られたとしましょう。この4月15日の飲食代の請求書は、4月中にお客様の会社に出すホステスが一般的です。翌日に請求書を送付するホステスもいれば、月末に当月の売掛を一気にまとめて請求書を送付するホステスもいます。
今回は仮に1週間後に請求書を出すとしましょう。
そしてこの売掛には期日があります。大体のお店がご飲食日から60日前後のサイトを設けています。サイトというのは売掛をこの日までに入金しないと、ホステス給与から相殺しますよという期日です。
今回の飲食代の支払サイトは6月15日になります。この日までにお店に入金がないと、翌月のホステス給与の支払いの日に自分が立て替えてお店に支払わないといけません。給料日が月末締め翌10日払いだと、7月10日の給料日から40万円が引かれてしまいます。
ママクラスになると何百万も稼いでいるので、例えば500万円から40万円を立て替えることはさほど大変じゃないですが、週3,4日のアルバイトのホステスだと給与が5〜60万円程しかないのに40万円も引かれると生活できなくなってしまいます。
このように売掛とは、期日が来たらお店に対し自分が建て替えしないといけない飲食代金なのです。お客様の飲食代で計上された4月分のプラスになったスライド分の売り上げが引かれるのではなく、まるまるお客様の飲食代が引かれてしまいます。
それはホステスが業務委託により、お店という箱を借りて個人商店をしているという業態だからです。
つまりは売掛=信用なのです。
売掛を払ってもらえないとどうなるの
売り掛けはそれなりの名前の通っている企業でしたら安心感はありますが、名前の聞いたことのないような中小企業や自営業のお客様になると多少リスクがあると考えています。
売掛を払わない方を「ツケを踏み倒す」とか「飛ばす」とかいうのですが、そういうお客さまは銀座の中にもいらっしゃいます。
売掛を飛ばしてもそのまま悪びれずに銀座の他のお店で飲んでいる場合もあります。あまりに悪質だと弁護士を立てて内容証明書を送って取り立てに行きます。でもほとんどのお客様が、そんなことになって「あの人支払いが悪いよ」と銀座の噂になるとカッコ悪いのできちんと支払ってくださいます。
また、連絡を全く取れないや着信拒否されてるなどひどく誠意がない踏み倒しの際は、クラブは紹介制なので紹介者のお客様のところに相談に行くケースもあります。そうするとその方が責任持って払ってくださったり、支払わないお客様に伝えてくださって入金されることもあります。
紹介者の方の顔が潰れるので、大体は払ってくださいます。
他にもお支払い実績が怪しいお客様、遅れがちのお客様は他店の黒服やママが教えてくださることもたくさんあります。(あの人は売掛にはさせない方がいいと)
銀座は村と呼ばれるほど狭く働く人たち同士のネットワークが張り巡らされているので、飲食代踏み倒しはすぐお店同士の噂になりますし、お客様にとっても不名誉でかなりカッコ悪いことだと言えます。
売掛を断るとどうなるのか
これは本当に難しいのですが、怪しいお客様の売掛を断ったときに「俺は信用ないの?」だの「ホステスは売掛ができないと一人前じゃない」だの言ってくるお客様もまぁまぁいらっしゃいます。
私はこの食い下がってくる層は何言われても切り捨ててもいいと思っているのですが、毎月の売り上げが少なくその人の比率が大きくて頼ってしまわないといけないホステスや、名前が通っている昔からのママだと断る(お客様にあなたのこと信用してないのよと伝えるようなもの)はちょっと、、、ということで受ける方の方が多いと思います。
でも今はカード持ってない方はいらっしゃらないですしね。どこに行ってもサインで飲める=かっこいいってそんな時代じゃないと思います。
一度売掛を打診してお店側が難色を示したなと感じたお客様は、以後気持ちよくカードか現金でお支払いされて、「飲み方が綺麗なお客様」として実績を積みお店と付き合う方が、お客様も良い評判が付くのでずっとwin winだと私は考えています。
また逆のパターンもあります。紹介者筋がしっかりしていたり、銀座で飲まれている歴が長く「昔からそうしてるから」と、売掛を認めることによって、お店に足を運んでくださる頻度が上がるお客様もいらっしゃいます。勿論、入金も早く支払いが綺麗なお客様もたくさんいらっしゃいます。(というかほとんどがそうです)
この人は売掛させてもいい、この人はさせちゃダメというのは長年の経験や、お客様との信頼関係で作っていくものだと私は思います。
まとめ
元はと言えば社用族が接待で使う紹介制の街なので、売掛制度とは切っても切れないものがあるのですが、今ではクレジットカードを持っていない人はまずいらっしゃらないので売掛はかなり減っています。私の実感では100人いたら3,4人です。
これはバブルの頃だともっと売掛の方がいたと推測されます。1986(昭和61)年8月8日、60年代に導入されたクレジットカードが普及し、この年に発行数が1億枚を超えた背景からも、当時はまだまだ現金払いやサインで帰られていた方は多かったはずです。
しかもこの頃は、毎日毎日お金が入ってくる時代。飲んでも使っても次の日何千万とお金が入ってきたと聞くので、何百万という飲食代をツケられる方も当たり前にいたそうです。そういう方が毎日いらっしゃるとあっという間に何千万のツケになります。しかもサイトは2ヶ月ですから、2ヶ月間の飲み代がたまると2千万、3千万と恐ろしい額になりますね。
今ではそんな派手な飲み方の人は怪しくて仕方ないので、その金額をツケで許容されるというのはまず考えられないです。またお客様の中でも、形に残らない多額の飲み代が後日シラフの時に回ってくるのは嫌だからと、自ら当日に支払いたいとおっしゃる方もいます。
組数が増えてくるとどうしてもこういった売掛問題にはぶつかるのですが、打診があっても焦らずこの人ならという方だけを売掛にして、そこまでのリスクを背負うのが嫌なら断るのが一番かと思います。
じっくりお客様の飲み方やご紹介者様、そして一緒にいらっしゃるお連れさまの傾向を観察して、信用できるお客様か否か見る目を養うことが大切です。
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