見出し画像

あの時の服が入るようになった話

 この自粛生活で家にいる時間が増えに増えた。より快適に過ごせるよう、今日はユニクロへパジャマを買いに行った。人生のサンブンノイチは寝てるのだから、ベッドや枕やパジャマはこだわりたい。適当なシャツとズボンで寝るか、パジャマで寝るかは翌日が全く違う。かくして、午前中は買い物、帰宅して風呂、そして新しいパジャマを着てみて今。昼寝を挟んだが、非常に快適である。いい買い物をした。やっぱりユニクロはものがいい。何度洗濯しても毛玉はできにくいし、着心地が良い。そして思い出すのはやっぱりシンジさんのことである。

 シンジさんは沖縄出身のダンサーの先輩で、大学生の当時大変あこがれていて大変お世話になった。最後に会ったのは3年前の春の博多駅で、シンジさんが眼鏡を買いに行くところを、わたしが見つけて声をかけた。その時のわたしときたら、日々の不摂生がたたってまあまあ体重が増えていたものの、会うなりシンジさんは「おお、やせた?」と聞いてきた。そして、卒業式の同じくシンジさんにお世話になった仲間と写っている写真を見せて、握手して別れた。それっきりである。

 さて、大学生の頃、シンジさんと、他の先輩と、わたしの友人とでH&Mへわたしの服を買いに行ったことがある。何がきっかけだったか、当時某有名アパレルショップの店員だったシンジさんは、わたしの服を見るなり、「ださいな。買い替えよう。」と言ってのけたのだ。4人で天神の西通りまで出向いた。そして、ビルを1周して、黒のジャケットに黒の細身のパンツ、白のTシャツに黒のブーツと、なんだか遠くから見ると就活生のような装いになったもののわたしは1式購入した。お世辞にも腕や足が女性の平均くらいとは言えないわたしは、少しいつも自分で買うのとは違うタイトなサイズ感に焦った。そして、もう少しちょうどいいサイズの服にしたいと申し出たものの、シンジさんは「それが似合うくらいに痩せればいいだろ」とぶっきらぼうに一蹴した。わたしは納得した。けれど、それから時は流れた3年前の最後にシンジさんに会った時ですら、きっとその時の服が片腕も入らないくらいにはなっていたから、その後その服に似合う努力は結局出来ないままだった。

 さて、これも何がきっかけだったか、つい最近クローゼットを整理していると、あの頃の服が出てきた。わたしは当時のタイトさを思い出しながら、何となく着替えてみた。なんと、ジャストサイズだった。その服をきれいアイロンがけして、そして着替えて、わたしは街へ出かけた。この服に窮屈さなんて感じない。どうしても当時の着心地は覚えている。不思議なこともあるものだな~となんだか誇らしくなった。シンジさんは元気だろうか。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?