デザイナーが社会や環境に対して果たすべき責任とは?
社会や環境に対する、デザイナーの最も重要な責任のひとつは、
それは、単に環境を美的に改善するということではなく、クライアントさんやお客様の先にある、または背景にある社会課題を解決するものであること。
まず導入した素材や技術が、環境に与える影響に配慮すること。
もう一つは、デザインを通して伝えるメッセージに責任と配慮を持つこと。
これは、わたし年に一度イタリアで開催される国際デザインコンテストの審査員を務めているんですけど、その審査の際にも、そのデザインがただ美しいだけでなく、本当の意味で、世の中をより良くするものなのか、あるいはその可能性を秘めたものなのか、という点を考慮します。
自分のジュエリーブランドを立ち上げた理由もそこ
自分のジュエリーブランドを立ち上げようと思ったのも、そういった理由があります。まずは自分が提供するジュエリーは、見た目にも背景にも配慮したもので、みんなの笑顔につながっていくものを提供したいなと、使命感を感じた瞬間があったからなんですね。
というのも、10年以上ジュエリー業界にいて、ジュエリーの世界で技術力を高めながら得た知識を財産に、たどり着いたのが、エシカルジュエリーでした。
あらゆる物もそうですけど、ジュエリーが作られるためにも、さまざまな物や人が関わっています。
特に、ジュエリーの元となるもの、金やダイヤモンドなどの原材料の採掘の現場、鉱山労働者の方達って、結構苦しい思いをしながら生活しているのが現状なんですね。
例えば、強制労働で子供が働いているだとか、紛争地域では反政府軍が地元民を強制労働させて、そこで生産されたダイヤモンドは武器調達の資金源とされるなど、そういった背景があると。
大手ブランドであろうと小さなブランドであろうと、宝石の採掘から販売までのサプライチェーンというのは相当入り組んでいて、とても複雑な経路を経ているんですね。
そのため、「お店のショーケースにたどり着く頃には、その原産地がどこか、そしてそれは環境汚染や人権侵害を引き起こしたものかどうかわからなくなっている」という、現状を目の当たりにしてきて、そういった業界の当たり前にすごい疑問を持つようになりました。
ダイヤモンドって、人生の大切な瞬間を刻む象徴的な存在ですよね。そもそもジュエリーって人の思いが深く反映されるもの。
そういう人の深い想いを繋いでくれるはずのジュエリーの裏で、そういった悲惨な背景なんかあってはならないのではないか。
宝飾業界に限らず、これまではその裏側にある負の側面をシークレットにして儲けることが当たり前とされていたわけですけれども。そういった常識みたいなものに疑問を感じて、そんな社会が変わって欲しいと思った時、
まずは自分が変わろうと。まずは自分が変わることで、その微力な行動が積み重なって結果的に世の中がちょっとでも変われたら。と思って、せめて自分が提供するジュエリーは、そういった背景にも配慮したもので、身につける人も現地にいる人も笑顔があるような幸せなジュエリーを作りたい、と思うようになりました。
そうして私自身、クリエイティブなプロセス自体は変わっていないけれど、
ジュエリーを作る意味、提供する意味が変わって、自分のジュエリーブランドを立ち上げようと決意したんですね。
なので、
と、思っています。