【北海道3500】その7「ただいま最北端」(終)
※この記事は、2021年9月のふり返り旅行記です。
前回↓
最終日の朝
9月22日。
東の果て、知床からおはようござます。
長かった『北海道3500』も、今日で最終日。早く家に帰りたいような、休みが終わってほしくないような、複雑な気分です。
ささっと朝食バイキングと朝風呂を済ませてチェックアウトをし、車のエンジンを始動。6日間走りっぱなしの相棒は今日も快調なご様子。あと400km、よろしくお願いします。帰ったらオイル交換してあげるからね。
🚗三
今日はゴールの稚内まで走る予定ですが、その前に知床でアクティビティを挟んでいきます。
ホテル街から坂を下りてウトロの中心部を海に向かって進んでいくと、道沿いに大きな看板が立ち並ぶ賑やかな雰囲気の場所に出ます。
ここは小型観光船のチケット売り場です。
前回の北海道3500の記事や普段のSNS、発売中の『しろまる最北日記』電子版でも言っていますが、私は大学生の時に知床の観光船で住み込みのアルバイトをしていました。
知床は地元横浜と住んでいる稚内に次ぐ第3の故郷であり、観光船も大切な思い出です。
…というわけで、久しぶりに知床の海へ繰り出してみようと思います!
最果ての海へ出航〜!
知床ウトロには大型船と小型船の会社が存在していて、今回乗った小型観光船には大きく分けて3つのコースがあります。
①硫黄山コース…カムイワッカの滝で折り返すショートコース。約1時間。
②ルシャコース…ヒグマが多く生息する「ルシャ湾」まで行って折り返す、動物探索をメインに据えたコース。約2時間。
③知床岬コース…最果ての秘境、知床岬の先端まで行って折り返すコース。約3時間。
時間の都合上岬の先端まではいかず、ゴジラ岩観光さんの2時間コースに乗せてもらうことにしました!
乗船手続きを済ませた後、乗客たちは一度チケット売り場の前で整列してから、港まで3分ほど歩いて移動します。
乗り場に着くと、そこにはよく見知った定員50名ほどの小型船が浮かんでいました。係員の案内でタラップから中へ乗り込むと、自分が案内する側だった頃の記憶が蘇ります。懐かしい光景に見送られながら、2時間の船旅へと出発〜!
港外に出ると、船は想像以上のスピードを出します。私は何度も乗った経験があるので動じませんが、想定外の強風と水飛沫に一部の観光客が悲鳴のような声をあげています。わかる(初めて乗った時は自分もそうだった)。
船は船長さんの解説付きで、知床の断崖に沿って進みます。大型船は入り江の奥にに入ることができないので、断崖ギリギリまで近づいて間近の景色を見られるのは小型船の特権です。船酔いする人は大型船の方がおすすめですが、よりアクティビティを楽しみたいなら小型船一択です!
陸地からは見ることができない滝や洞窟は、観光船に乗った者だけが楽しめる最果ての神秘。遥か昔からそこに存在する大自然が、変わらない姿で私を迎えてくれます。スゴイ。
1時間コースの折り返し地点となる「カムイワッカの滝」をそのまま越え、ヒグマのメッカである「ルシャ湾」に着きました。このあたりは陸地部分の標高が低いために風の通り道となっていて、波が立ちやすく船が揺れます。私は乗り物酔いしない体質なのでセーフ。
船がゆっくり岸へ近づくと、船長、船員、乗客が一丸となって浜に目を凝らし、ヒグマ捜索タイムが始まりました。私もカメラの望遠レンズを覗いて捜索に加勢します。
大小様々な岩が無造作に転がるルシャの浜は、遠くからみるとそれが岩なのか熊なのかよく分からず、素人目でクマを見つけるのは至難の業です。
◆ ◆ ◆
この日は、熊がなかなか見つかりませんでした。
1時間のショートコースなら熊に出逢えないこともしばしばありますが、2時間以上のコースは遭遇率がかなり高いので、見れないことのほうが珍しいはず…なのですが。
……………みんなが諦めはじめた、その時です。
「いました!よかった」
スピーカーから船長の声が響きます。
指摘されたたあたりを探すと…いた!
岩の間で動く黒い影!
ヒグマです!
しかも悠然と浜を歩く親熊のうしろに、必死で岩を乗り越えている小熊の姿も見受けられるられます。親子です。
陸上では絶対に遭遇したくないけれど、こうして安全な場所から眺めるぶんには、とてもかわいいですね。
↑の写真は望遠レンズで撮影していますので、実際のヒグマは肉眼だと黒い点程度にしか見えません。
単に「熊を見たい!」というのであれば動物園のほうが満足できると思いますが、知床のヒグマは100%の野生です。飼育ではない野生の雰囲気を肌で感じられるのが動物園と一味違うポイントですね。
無事に目的を達成した船は、ウトロ港へと引き返します。
帰りは沖合を航行するのでだいぶ早く、2時間のコースは1時間20分かけて景色を見ながら折り返し地点まで行き、40分で帰る、といった時間配分となります。
船は定刻の10時半ごろにウトロ港へ到着。
クルージングを終えてすっかり満足した気分ですが、今日はこれから稚内まで帰り「北海道3500」のゴールテープを切らなくてはいけません。
知床から稚内までは距離にして約400kmはあります。気分を入れ替えて、最終日の移動いってみましょう!
🚗三
オホーツクを北へ
ウトロの町を出発したのは11時過ぎのことでした。
走り出してすぐの「オシンコシンの滝」と「天に続く道」を観光しつつ、国道334号線で網走を目指します。
途中、釧網本線の「北浜駅」にも寄り道をしました。この駅は海までの距離が非常に近く、ホームからオホーツク海を一望できる有名な駅です。冬の時期には流氷を見ることもできます。
木造のレトロな駅舎の待合室は、ここを訪れた人たちが残した名刺やメッセージで壁が埋め尽くされています。先人に倣って私も当時の名刺を貼りつけてきました。
お昼過ぎに網走へ到着。
お腹ペコペコです。
網走でごはんを食べる時は、行きつけのお店があります。レストラン「ホワイトハウス」です。お肉と海鮮が両方味わえるセットメニューが魅力で、完全に「ぼくの考えた最強のごはん!」みたいなノリです。そしてうまい。おすすめ。
「ごちそうさまでした」
網走の中心部を出発後し、念のため能取岬経由で距離を稼ぎます。
そのままオホーツク海沿いに戻って常呂町の市街地を過ぎると、広大な水面が道路のすぐ右側を埋め尽くしました。これは海ではなく、日本で3番目に大きな湖「サロマ湖」です。
国道239号線は湖の外周をなぞるようにくねくねと迂回するため、このあたりも道南の渡島半島同様に、想像以上の所要時間がかかります。
オホーツクを代表する都市のひとつ、紋別に着いたのは15時半。そろそろ日没が迫ってきました。明るいうちにゴールをするのは無理そうですね、、、
港にそびえる巨大なカニ爪オブジェは、高さが12mもあります。かつては流氷の季節に海上展示が行われたこともある、紋別屈指のフォトスポットです。
紋別を出て、興部、雄武、枝幸の町々を通過します。秋のオホーツク北部は雨が多く、この日も時折大きな音を立てて雨粒がフロントガラスを叩きました。
🚗三
オホーツク海に鋭く突き出した「北見神威岬」のトンネルを抜けて、18時頃に浜頓別の市街地へ着きました。
ここまでくると「帰ってきた」という実感が湧いてきます。
2019年にできたばかりの道の駅「北オホーツクはまとんべつ」で最後の休憩をとり再出発すると「稚内91km」と書かれた看板が目に飛び込んできました。果てしない旅も残り100kmを切っています。ラストスパート!
ただいま日本最北端!
国道238号線は、浜頓別と猿払の間で、一旦海岸線を離れます。それに伴って海側に出現する猿払の村道、通称「エサヌカ線」は直線が爽快なドライブコースですが、この時はすでに日が落ちていましたし、おうち帰りたい欲も出はじめていたのでパスしました。
それに、向こうの道は奴がよく出没するのでとても危険です。最後の最後でやらかしたら洒落になりません。
浜鬼志別の集落を過ぎてしばらく走ると、道端にカントリーサインを発見。そこに書かれていた市町村名は………?
[稚内市]
ついに、ついに稚内市へ突入しました。
ただいま!
稚内の市域へ入るとすぐ、国道から内陸へと向かう「道道1077号線」との分岐点があります。オホーツク方面から稚内市街地へ向かう場合、宗谷岬を経由せず、この道道を使ってショートカットしたほうが早く到着することができます。
しかしこれは北海道3500。
企画なのです。
ここまで徹底して北海道の端っこを攻めてきたというのに、日本最北端宗谷岬を踏まずして旅を終われるわけがありません。無論、近道などせず海沿いを直進し、北を目指しました。
時折現れる宗谷岬までの距離カウントが、みるみるその数字を減らしていきます。
見えてきたゴール、
走り慣れた道。
油断で集中力を切らさぬように注意しながら確実に進みます。
海岸線を走っていた238号線が再び内陸へと進路をとり、いくつかのアップダウンをこなしてから最後の海沿いに出て、まもなく宗谷岬といったところまでやってきました。
宗谷岬周辺にはそれなりに人家が建ち並んでいて、コンビニこそ無いものの、郵便局やガソリンスタンドなどから人々の生活を感じられます。ゆっくりと最北の街並みを抜けて、目的の駐車場に滑り込みました。
19時05分、宗谷岬到着。
普段であれば自宅から40分で来ることができるドライブスポットですが、今回はここに至るまでに3500kmという途方もない遠回りをしてきました。
シルバーウィークとはいえ、コロナ禍の夜ということで観光用の駐車場はガラガラ。ライトアップされた最北端の碑と愛車をシャッターに納めます。
なんか達成感がすごいですが、ゴールはスタート地点と同じ「防波堤ドーム」です。もうちょっとだけ続くんじゃ!
3500kmの旅路、ついにゴール!
宗谷岬から最終ゴール地点の防波堤ドームまでは約30km。これまでの行程を考えれば目と鼻の先です。
宗谷湾に沿って国道238号線を西へ進んでいくと、真っ黒な海の向こうに慣れ親しんだ稚内の街灯りが浮かんで見えてきました。稚内空港を過ぎたところで国道が片側2車線に道幅を増し、徐々にロードサイドの建物が増えてきます。
いよいよ稚内の中心部です。
潮見の交差点で旭川方面からやってきた国道40号線と合流し、稚内駅方面へ進行。6日ぶりの街並みを、ゆっくりと走ります。懐かしい気分になると同時にちょっぴり名残り惜しくもあります。
そして、どんな旅にも必ず終わりがやってきます。
2021年9月22日20時00分
『北海道3500』ゴール
お疲れさまでした。
スタートから6日と2時間45分、「稚内北防波堤ドーム」への到着をもって無事に企画終了となりました。
そして、
注目すべきはその走行距離です。
企画発足時、免除ツイートを行う前のいいね数による走行ノルマは「3551km」でした。そして、最終日にゴールした際のトリップメーターはなんと「3551.9km」。まさかのピタリ賞だったのです!
道南江差の通行止めによる迂回や、釧路での軽い迷子騒動、野付半島での距離稼ぎ。そして、フォロワーの皆さまがくれたいいねの数。旅に関わるすべての要素が積み重なって生み出された奇跡のピタリ賞です。
(ちなみに、6日間+αでかかったガソリン代の総額は、約26,000円でした)
◆ ◆ ◆
この企画を通して、北海道は高速道路を使わなくとも6日で3500kmもの距離を走れることが証明できました。
合言葉の「観光<移動」をさらに徹底して寄り道を全くしなかったり、ドライバーを交代しつつ夜通し走りまくったりすればもっと長い距離の移動も可能でしょう。北海道特有の信号と交通量の少なさの賜物ですね。
「東北2500」とか、「四国1500」とか、「九州2000」とか……続編を企画しようとすれば夢は無限大です。
……………えっ?
や、やりませんよ?
(北海道3500・おわり)