天涯客 引用古典籍 2章〜8章
※こちらの記事を書く際の私のスタンスや参考資料については、「はじめに」の記事にまとめています。
一度ご参照頂ければ幸いです😊
2章(1)
阿絮の台詞(顧湘との場面)
憑酒借紅顏(酒の力で美女に寄りかかろうか)
*出典*
李德裕『句』(唐)(全唐詩/巻475)
検経求緑字 憑酒借紅顏
君不見秋山寂歷風飆歇 半夜青崖吐明月
寒光乍出松筱間 萬籟蕭蕭従此発
忽聞歌管吟朔風 精魂想在幽巖中
銀花懸院榜 神撼引鈴絛
葳蕤輕風裏 若銜若垂何可擬
自從一夢高唐後 可是無人勝楚王〈(《賦巫山神女》,見《雲溪友議》)〉
牛羊具特俎
心悟覺身勞 雲中棄寶刀
久閑生髀肉 多壽長眉毫
書空蹺足睡 路險側身行〈(德裕嘗吟此句,雲是先達詩。附記見《桂苑叢談》)〉
誰家幼女敲箸歌 何處丁妻點燈織
魚蝦集橘市
休咎占人甲 挨持見天丁
洛下推年少 山東許地高
世上文章士 誰為第一人
老生誇隱拙 時輩毀尖新
奇觚率爾操 諷諫欣然納
*語釈*
・緑字
1.古代石碑に刻まれた文字、色漆を使ったために緑字と言う。
2.河図(河图)に使用された緑色の文字。
・憑借(凭借)
1.~を頼る、~をよりどころとする。
2.~に基づいて、~によって、~に頼って。
・紅顔 若者の紅顔を指す。少年のこと。また女子の美しい容顔を指す。
✻書き下し文*(部分)
経を検め緑字を求め、酒を憑みに紅顔を借る。
君見ずや秋山の寂歷、風飆歇(や)み、半夜青崖に明月の吐すを。
✻私的意訳*(部分)
経典を調べ昔日の人の言葉を探求し、酒の力で紅顔の若者と語り合う。
君は見たことがあるだろうか。うら寂しき秋山の嵐が止み、夜半の青崖に名月が昇るのを。
2章(2)
阿絮の台詞
寄言全盛紅顏子,應憐半老白頭翁。
*出典*
劉希夷(劉廷芝)『白頭吟』(初唐)
※「年年歳歳花相似 歳歳年年人不同」の部分が日本でも有名な詩。
洛陽城東桃李花 飛來飛去落誰家
洛陽女兒惜顏色 行逢落花長歎息
今年花落顏色改 明年花開復誰在
已見松柏摧爲薪 更聞桑田變成海
古人無復洛城東 今人還對落花風
年年歳歳花相似 歳歳年年人不同
寄言全盛紅顏子 應憐半死白頭翁
此翁白頭眞可憐 伊昔紅顏美少年
公子王孫芳樹下 清歌妙舞落花前
光祿池臺開錦繍 將軍樓閣畫神仙
一朝臥病無人識 三春行樂在誰邊
宛轉蛾眉能幾時 須臾鶴髮亂如絲
但看古來歌舞地 惟有黄昏鳥雀悲
*書き下し文*(部分)
言を寄す 全盛の 紅顔子 應に憐れむべし 半死 白頭の翁
此の翁 白頭 眞に憐れむべし 伊(こ)れ昔は紅顏の美少年
*私的意訳*(部分)
いま全盛の紅顔の若者たちよ、我が言葉の意を理解してほしい。
もはや死にかけている白髪の爺さんのことをそなたらは憐れむべきなのだ。
この爺さんの白髪頭は実に哀れな様子だが、これでも昔は紅顔の美少年だったのだ。
6章
地の文。顧湘の台詞に対する周子舒の驚きを表す文章。
最後那句簡直是語不驚人死不休(最後の一言はまったく人を驚かせるような言葉を吐かないでは死にきれないとでも言うのかというほど驚くような内容で)
*出典*
杜甫『江上値水如海勢聊短述』(唐代)
為人性僻耽佳句
語不驚人死不休
老去詩篇渾漫与
春来花鳥莫深愁
新添水檻供垂钓
故着浮槎替入舟
焉得思如陶谢手
令渠述作与同游
✻書き下し文*(部分)
為人、性僻にして佳句に耽り
語、人を驚かさずんば死すとも休(や)まず
*私的意訳*(部分)
私の性質はひねくれていて、日々佳句を求めることに耽溺し、人を驚かせるような語(佳句)が出来なければ、(佳句を追い求めることを)死んでも止められない。
8章
周子舒が魅曲秦鬆を笛で撃退したところに出てきた温客行が放った台詞
此夜曲中聞折柳,何人不起故園情——如此星辰如此月,周兄和琴音撫長笛,如此雅事,非美人不可行也。
(此夜、曲中に折柳を聞く、何人か起こさざらん故園の情。――これほどの星々と月明かりの下、周兄が琴の音に合わせて笛を奏でるなんて、これほど雅なことは美人でなければできないな。)
*出典*
李白『春夜洛城聞笛』(唐代)
誰家玉笛暗飛聲 散入春風満洛城
此夜曲中聞折柳 何人不起故園情
*語釈*
・折柳 別れの際に歌われる折楊柳の曲のこと。古代の横吹曲の曲名の一つ。魏晋時代には古い歌詞が失われたが、晋の太康末期には京洛(現在の洛陽)で「折楊柳」という歌が流行し、その歌詞には多く兵士の苦労を詠んだ内容が含まれていた。南朝の梁や陳、唐代の詩人たちは、この曲を春を惜しみ別れを嘆く詞に多く用い、特に遠征に出た人を思う作品が多い。
*書き下し文*
誰が家の玉笛ぞ 暗に聲を飛ばす
散じて春風に入り洛城に満つ
此の夜 曲中に折柳を聞く
何人か起こさざらん故園の情
*私的意訳*
一体誰の家の玉笛か、暗夜の中に響く。笛の音は春風に乗って洛陽の城中に満ちていく。今宵、その曲の中で折柳を聞いた。この曲を聞き故郷を想わずにいられる人がいるだろうか。
一旦ここまでとしたいと思います。
阿絮と顧湘のやり取りの中で引用される作品はコミカルなやりとりの中にうまく入っていて、こんなやりとりの中にまで古典作品を入れてくるのか‼️😳と唸ってしまったところです。
次は陳情令でもお馴染み「青山不改、緑水長流」を扱いたいと思います。
あまりにも用例を突っ込みすぎたので、この1例だけで1つの記事にします……。
そのあとは概ね10章分ぐらいを1記事で扱っていく予定です。
宜しければ最終章までお付き合いください😄