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天涯客引用古典籍 24章~28章

ここから曹兄の恋愛ポエム迷走講座?が始まります😂
曹兄の古典籍引用、色々間違っていたり混ざっていたりするので出典を探すのに一苦労🤣 でも、阿湘が大好きなのはよくわかる。本当によくわかる。曹兄はP大作品登場人物の中で夫として好ましい貴重な?人物。殺破狼の沈易とか七爺の烏渓とかもいいのだろうとは思うけど、なんというか、一番あほ可愛い……(ほめてる)。

24章


曹蔚寧の台詞
有道是①問世間情是何物,直教人生死相許,桃花潭水深千尺,不及……。
 
出典①
元好問『摸魚儿·雁丘词』(金末、元代) 
  ※「摸魚儿」は詞牌。

乙丑歳赴試并州,道逢捕雁者云:“今旦获一雁,杀之矣。其脱网者悲鸣不能去,竟自投于地而死。”予因买得之,葬之汾水之上,垒石为识,号曰“雁丘”。时同行者多为赋诗,予亦有《雁丘词》。旧所作无宫商,今改定之。
  ※ここまで前書。この下から詞本文。

问世间 情是何物 直教生死相许
天南地北双飞客 老翅几回寒暑
欢乐趣 离别苦 就中更有痴儿女
君应有语 渺万里层云 千山暮雪 只影向谁去
(※问世间 一作:恨人间/问人间)
 
横汾路 寂寞当年箫鼓 荒烟依旧平楚
招魂楚些何嗟及 山鬼自啼风雨
天也妒 未信与 莺儿燕子俱黄土
千秋万古 为留待骚人 狂歌痛饮来访雁丘处
(※自啼 一作:暗啼)
 
*書き下し文*(部分)
世間に問う 情とは是何物ぞ 直だ生死をも相許せしむ 
天南地北 双び飛ぶ客 老翅寒暑幾回ぞ
歓楽の趣 離別の苦 就中(なかんずく)更た痴儿女有り
君応に語有り 渺たり万里層雲 千山暮雪 只影の誰に向かひて去る
 
*私的意訳*
泰和五年、私は太原に試験を受けに行く途中、雁を捕らえている人に出会った。彼は言った。「今朝、雁を一羽捕まえ、すぐに殺してしまった。もう一羽は網を逃れたが、必死に鳴き続け、離れようとせず、最終的に地面にぶつかって死んでしまった。」私はその雁をその男から買い取り、死んだ二羽の雁を汾河の岸辺に葬り、石を積んで印とし、「雁丘」と名付けた。その時、一緒にいた多くの人々が詩を詠んだが、私も『雁丘辞』という詩を作った。以前の詩は音律が不完全だったので、今はそれを改め訂正した。
  ※ここまで前書。以下、詞本文。

世に問いかける。愛とは一体何なのか。互いの生死を共にさせるほど深いものなのか。
南に飛び、北に帰りゆく旅をする比翼の雁は、年を重ねながら幾度寒暑を共に越えてきたのか。
彼らには共に生きる喜びがあり、離別の苦しみがあり、その恋情は人のものよりもとりわけ深いものであるに違いない。
君(ひとり残された雁)は訴えているのだろう。
広大な万里、幾層にも重なる雲、雪に覆われた数多の山々の中、影(残された雁)は一体誰を追って行けばよいのかと。――ずっと共に生きてきた番に残され、孤独に生きていくことなどできはしないと。
 
汾水を渡る道(雁を葬った場所)、ここはかつて漢武帝が巡幸したというが、往時の繁栄は今ではすっかり消え去り、簫鼓の音もなく、昔のように荒野と化している。ああ、招魂など何の意味があろう、山の神は嘆き、むなしく風雨の啼き声をあげている。だが、双雁の深い愛情は天も妬むほどのものなのだから、彼らが他の鳥たちのように単に土に還るとは思えない。
彼らの情はこの先ずっと永遠に残るだろう。私はしばし詩人らをここに留めたいのだ。私は願う。彼らがこの雁丘を訪れ、痛飲し、高らかにかの双雁の情を詠み上げんことを。
 
*語釈*
・痴儿女=恋情に惑溺する、心を奪われる男女のこと。
・荒烟=荒涼とした場所。
・平楚=平野
・山鬼=ここは山の神、精霊と解釈。
・騒人=詩人のこと。屈原の離騒による。 

※なお、この詞は山河令第6話で温客行の台詞にも文言を変えて引用されている。(「你若不在了,千山暮雪,我孤翼只影向誰去啊?」 ※山河令設定資料集別冊より)また、金庸作品等にも引用されている。個人的にとても好きな詞なのに、日本では見かけない。作者の元好問の詩は日本でもそこそこ読まれているのに、なぜこの詞は日本であまり読まれていないのだろう……。哀しい。雁は日本でも馴染みのある渡り鳥なのになぁ😢

 
出典②
李白『贈汪倫』「桃花潭水深千尺、不及汪倫送我情」 

李 白 乗 舟 将 欲 行 
忽 聞 岸 上 踏 歌 声 
桃 花 潭 水 深 千 尺 
不 及 汪 倫 送 我 情 

*書き下し文*
李白舟に乗りて 将に行かんと欲す
忽ち聞く 岸上 踏歌の声
桃花潭水 深さ千尺
汪倫の我を送りし情に及ばず

*私的意訳*
私李白は今、小舟に乗っていよいよ桃花潭を出発しようとしている。
すると突然、岸の上から踏歌が聞こえてきた。
桃花潭の水の深さが千尺あっても、私を見送ってくれる汪倫の情の深さには到底及ばないよ。

*語釈*
・汪倫=村人の名前。美酒を造っていつも李白に飲ませていた人。 

※曹蔚寧は元好問と李白の詞を混ぜた上に杜甫の作と間違えている。間違えているが、まあ言いたいことはわからんでもない。
 

 

26章


曹蔚寧の台詞
關關雎鳩,在水一方,北方有佳人……君子好逑……
 
出典①
無名氏「關雎」『詩経』国風・周南
  ※『詩経』冒頭の詩

關關雎鳩  關關たる雎鳩は
在河之洲  河の洲にあり
窈窕淑女  窈窕たる淑女は
君子好逑  君子の好逑
 
參差行菜  參差たる行菜は
左右流之  左右に之を流(と)る
窈窕淑女  窈窕たる淑女は
寤寐求之  寤寐に之を求む
 
求之不得  之を求むれども得ざれば
寤寐思服  寤寐思服す
悠哉悠哉  悠なる哉 悠なる哉
輾轉反側  輾轉反側す
 
參差行菜  參差たる行菜は
左右采之  左右に之を采る
窈窕淑女  窈窕たる淑女は
琴瑟友之  琴瑟之を友とす
 
參差行菜  參差たる行菜は
左右芼之  左右に之を芼る
窈窕淑女  窈窕たる淑女は
鍾鼓樂之  鍾鼓之を楽しむ
 
*私的意訳*(部分)
かんかんと鳴く雎鳩(みさご)が河の中州にいる。
美しく淑やかな娘は立派な若者の素晴らしいつれあいだ
短いのや長いのや、色々な長さのあさざを、右へ左へと取りに行く。
美しくしとやかな娘のことを、寝ても覚めても思わずにいられない。
(後略)
 
*語釈*
・荇菜=あさざ。ミツガシワ科の水生の多年草。
・好逑=良きつれあい

 
出典②
「蒹葭」(詩経国風:秦風)(部分)

兼葭蒼蒼   兼葭蒼蒼たり
白露為霜   白露霜と為る
所謂伊人   所謂伊(こ)の人
在水一方   水の一方に在り
溯洄從之   溯洄して之に從はんとすれば
道阻且長   道阻にして且つ長し
溯游從之   溯游して之に從へば
宛在水中央 宛として水の中央に在り
  
*私的意訳*(部分)
荻や葦といった水草が蒼々と生い茂り、白露が霜となった。
噂のあの人は河の向こうにいる。(あの人に会いに行きたいけれど)
河の流れを遡って行こうとすると道が険しく遠く、
河の流れの隨に下って行けば、さながら河水の真ん中にいるようだ。

 ※この詩の解釈は諸説あり定まっていない。「伊人(あの人)」を賢人と解釈するものと、恋しい人と解釈するものと、神と解釈するものと、主に三つの説に分かれているが、曹兄は恋しい人説を採用している模様。私もこの詩は恋しい人に逢いたいのになかなか逢えないといった、七夕歌にも通じるような恋の詩ではないかと思います。
 

出典③
李延年『歌』(漢代)

北方有佳人
絶世而獨立
一顧傾人城
再顧傾人國
寧不知傾城與傾國
佳人難再得
 
*書き下し文*
北方に佳人有り
絶世にして獨立す
一顧すれば人の城を傾け
再顧すれば人の国を傾く
寧んぞ傾城と傾国とを知らざらんや
佳人は再び得難し
 
*私的意訳* 
北の方に美人がいる
世に並ぶ者がいないほどの絶世の美しさである。
一目振り返れば城を傾け、再び振り返れば国を危うくするほど。
もちろん傾城傾国を知らないなどということはない。
だが、(この機会を逃せば)美人を再び得るのは難しいことだ。
 
 
★曹蔚寧は3つの詩を少しずつ混ぜて使ったが、いずれも唐よりも前の古い詩を用いている。時代順に詩を学んだので近い時代の詩がある程度固まって出てきたのか、比較的素朴な味わいのある恋の詩が好きなのか? 性格的には後者かな(笑)。ともかく阿湘に夢中w

28章


葉白衣の台詞
乃不知有漢,無論魏晉

*出典*
乃不知有漢、無論魏晋。(漢があったことを知らず、もちろん魏や晋の各代も知らない。)(陶淵明集・巻6・「桃花源記」)

これは山に籠って俗世間との関りを絶っていた葉白衣が、世の中の動きを知らなかったことを示すもの。周子舒によって、とある人物が既にこの世の人ではないことを知った時の白衣の台詞。ここで桃花源記をもってくるのは納得。
桃花源記は陶淵明作のいわゆる桃源郷(ユートピア)の物語なので、白衣がいた長明山が現世と隔絶された世界のようなものだったことを示すのでしょう。ただ、桃花源記に描かれた桃源郷の世界の人々が自由に泰然自若とした生活を送っていたのに対し、白衣の長明山での生活は、少なくともその精神状況は泰然自若とはほど遠いものだったろうな😢 そして、桃花源記の主人公が二度と桃源郷に辿り着けなかったのと重なるように、葉白衣もまた二度と長明山には帰らない。彼の時間は動き出したのですね……。
この先、葉先輩が七爷に言った言葉も出典を出す予定ですが、それがもう……😭 後の展開と重ねて考えると、このちょっとした引用にもP大の古典籍の使い方の上手さがあるなと思います。


次は天涯客の無料章の最後で、P大オリジナルの詩が出てくる部分なのでここで一度分けたいと思います。
阿絮の〇〇(ネタバレ防止のため伏字)を知った老温の悲痛な叫びの詩……。

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