女でも痔瘻になったから、入院して手術してきたわよ ~入院から手術編~

入院初日

 大荷物を抱えて、指定された日時に病院へと赴いた私は、この元気な尻ともしばらくお別れか……と考えながら待ち椅子で待機。保険証と入院申し込み書、限度額適用証を提出して入院病棟へ案内される。
 入院病棟のナースステーション内のソファに座らされ、入院日の相談をした日に取られた血液や尿、入院1週間前のPCR検査の結果を渡された。看護師さんは忙しそうで、私に「これを読んでいてくださいね」と、手術の注意事項が書かれた紙を渡し、どこかへ消えていった。

 しばらくすると戻ってきた看護師さんから、キンッキンに冷えたモビプレップを頂いた。モビプレップって下剤の名前として100点ですよね。ネーミングセンスがよすぎる。この後夕食後にも下剤を飲んでもらうと言われる。麻酔や服薬についてもこのときに説明された。
 手術は下半身麻酔で行われる。麻酔の副作用だか影響だかで、麻酔後に目を酷使すると頭痛や吐き気を催す場合があるので、安静にしているようにと言われた。
 あとケツ毛を剃られた。

 案内された病室は二人部屋で、同室の女性と日本人特有のお辞儀バトルを繰り広げた。看護師さんから「あとでレントゲンと心電図をとるので、呼ばれたら外来病棟に行ってくださいね」と言われてそのときを待った。二時間くらい待った。コンセントは2口のみで、1つはコインテレビ、1つはパラマウントベッドに接続されていたため、テレビのコンセントを引っこ抜き、スマホの充電器をブチこむ。テレビ出力するためにNintendo Switchのドックまで持ってきたのに、ついぞ使用することはなかった。
 パラマウントベッドはあまりにもQOLのあがる家具だったので、介護が必要でなくても導入の検討の余地ありとみた。

 入院病棟の設備はバカ古で、トイレは男女共用だし風呂はキンッキンに冷えるタイル張りの装いだった。キンッキンに冷えるのはビールかモビプレップだけでよい。トイレを案内されたとき、普通におじさんが小便器の前で用を足していたのを見て「マジか」と声に出た。
 その後、トイレの個室から出たらおじさんがいたとか、トイレの個室に入ろうとドアを開けたらおじさんがいたとか、そういうことが数度あった。時は西暦2022年。頼むからリフォームしてほしい。
 飲んだモビプレップが効いてきて、腹がずっとぐるぐる言っているが、便意はない。
 レントゲンと心電図もとり終え、夕食を待つ。

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 夕食はこちら。お吸い物はだしが効いていて、肉も臭みがなく、非常においしい夕食だった。
 この夕食を食べた後、看護師さんに4錠の下剤を貰い全てのみ、一生腹がぐるぐる言う苦しみの中「明日は一日絶食かあ」という悲しみにくれる。

 購入したゼルダの伝説ブレスオブザワイルドは、コンセントの都合テレビ出力ができなかったため特にさらわず(あとテレビのスペックがゴミだった)、「バディミッションBOND」の3周目をやるか、「チ。~地球の運動について~」を読むかのどちらかで時間を使った。

手術日

 朝起きて看護師さんに体温を測られ、排便の回数をきかれる。んなもん覚えてねえ。夜中に一度起きてトイレには行ったので、その旨を伝える。
 この日は一日絶食なので、前日からの流れでバディミをプレーするかチ。を読むかのどちらかが基本だった。突然部屋に知らない女性の声が鳴り響き、私に対して「手術前にお風呂に入りませんか?」と素敵な提案をされたので「いいですねえ」と返事をしたら笑われた。なぜ。
 お風呂を出た後は手術着に着替え、尻を切られるまでの準備を始めることになる。

 昼前になると看護師さんがやってきて、点滴をセットしていった。あと安定剤とやらも渡され、飲む。古い院内設備を、点滴のガラガラを引き連れて歩くのは難儀した。点滴のガラガラよりかわいいポメラニアンを連れて歩きたい。
 手術の順番は私が一番最後らしい。昼下がり、滴り落ちる点滴の様を見ながら、チ。のことを考えては「はあ……学ぶということは素晴らしい……」などと胸のすくような気持ちだったが、生憎私は学生のころマジで1ミリも勉強していない。

 いよいよ私の順番が回ってきた。点滴のガラガラを引き連れ、看護師さんと手術室に向かう。手術室で「手術着も下着も脱いでくださいね~」と言われ、まさかの全裸マスク中年女が爆誕した。絵面が本当によろしくない。
 手術台に仰向けに転がり、心電図をとるための器具を取り付けられたり、助手の先生に「晩ご飯何するんですか?」ってきいたり、「病院リフォームしないんですか?」ってきいたりして気を紛らわせていた。晩ご飯は手羽を焼くらしかった。焼いた手羽うまいよな。

 しばらく世間話をしていると私の尻を切り刻む先生がやってきた。体を横に向けられ、腰に麻酔の注射を刺される。注射の後はすぐさま俯せになれという指示があったため、言われた通りにする。
 手術が始まる。心電図をとるための一定の電子音と、手術器具の金属音を聞きながら、ケツになにかされているなという感覚だけがあった。痛みはマジでない。先生と助手さんの会話に割り込む余裕さえあった。
 時間は2~30分程度で終わった。下半身がまったく動かないという感覚に驚きつつ、気づけば私は病室のベッドに転がされていた。手術着の下にはおむつをはかされていた。数十年後、私はずっとこうなんだろうから、今のうちに経験しておくのも悪くないな、とかしょうもないことを考えていたら、いつのまにか寝ていた。

 麻酔はすごい。本当に。数時間後、私は文明の素晴らしさに感謝することになる。

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