島とみなみ

当日の20時、提出しないといけないものを
チャットで社長に送りつけて、タイムカードを切って、パソコンの電源も切った。
急いで化粧品とパンツといろいろを持って家を出て
港通りのファミリーマートの前で待った。

レンタカーを借りて、工藤みなみが迎えにきてくれた。コンビニにいったん車を停めてディナー。
工藤みなみはたしかハンバーグ弁当、わたしは親子丼を食べた。彼女がめずらしく完食したのでうれしくなった。気になってた新発売のポテトチップスは、味がうすくてまずかった。
20時半、香川へ出発。

0時までにホテルにチェックインしないといけなかったから
工藤みなみは休憩なしで運転してくれた。
わたしは2週間の合宿で免許を取ったことに加え、空前絶後のペーパードライバーなので、ナビの案内を復唱することに努めた。まるで役立たず。
BGMはPUFFY。

無事、ホテルに到着。
わたしの好きな、重たい長方形のアクリルがついた鍵だった。
そのホテルはどこもかしこも黄緑色の蛍光灯で、部屋の壁に不自然な絵が飾ってあったりとかして、彼女が大げさに怖い怖いと言うのがおもしろかった。

一旦荷物を置いて、コンビニで飲みものとおつまみを買って部屋にもどる。
工藤みなみは、お風呂からすっぽんぽんで出てきた。
ベッドに着いてからバスローブに着替えて、サッポロの缶ビールを開けて幸せそうに飲んでいた。
わたしもコンビニの抹茶ラテを飲みながら彼女がおつまみに買っていたするめとしめ鯖を食べた。口の中がテクノポップだった。

ふたりとももういつでも寝られる状態になったときに、どっちからともなく「カラオケ行きたい」と言った。そこからもう一度服に着替えて、本当に行くのがわたしたちだった。

香川の夜道は人が全然いなかった。ホテルからカラオケは結構遠かった。
めちゃくちゃタクシーに乗りたかったけど、ワンメーターで乗るのはマナー違反だと聞いたことがあったから、なるべく誰にも嫌われないで生きていきたいわたしたちは元気に歩いた。

カラオケについて、工藤みなみは生ビールを注文。銀杏のBABY BABYとか、ネバヤンの明るい未来とかをふたりで歌った。
店員のお兄さんがポッキーをサービスしてくれた。左手に指輪をしていてがっかりした。

深夜3時半にまた歩いてホテルに戻って
ふたりとも秒速で就寝、そしてしっかり9時に起床。

朝とお昼のあいだに、セルフのかけうどんを食べた。たしか400円くらい。ぜいたくに卵もトッピングした。
頭がクラクラするくらいおいしかった。大阪の1000円のうどんの5億倍はおいしかった。

うどん屋を出て、フェリーが来るまでの間に駅のスタバでコーヒーを買って海辺で飲んだ。オシャレすぎる。
深夜3時半までカラオケにいた2人だとは思えない。

目の前につかつかやってきたハトが、
わたしたちに見せつけるようにうんちをして、またもとの方向へ戻っていった。香川のハトの性癖はどうなっているのだろう。

それからフェリーに乗っていざ女木島へ。と思ったらわたしの携帯がない。猛ダッシュでさっきの場所へ戻ったら、鳩のうんちの近くに置き去りになっているのを発見。よかった。

高校を卒業してすぐの春休み、2人で直島に行ったときは、300円のレンタサイクルに乗った。
体力のない私はしょっちゅう休憩をせがんだ。
このときは、その後何年にもわたって「自転車に乗れない女」というレッテルを貼られるとは思いもしなかった。
女木島では、1000円の電動レンタサイクルを借りた。大人になった。

工藤みなみはとにかく毛虫が大嫌いだった。
女木島は、どこもかしこも毛虫・芋虫・羽虫だらけだった。
泣き叫びながら電動自転車をこぐ姿が、とてもけなげだった。

がんばってペダルをこいで、山を登る。ぶら下がるシャクトリムシを左右に避けながら、きれいな新緑を堪能。

鬼の洞窟に着いたら、入り口で受付をしてるおじさんがトカゲがいるよって教えてくれて、3人で観察した。
そのあと、おじさんがパンフレットの説明をしようと移動した時に、そのトカゲを踏みつぶした。
工藤みなみと顔を見合わせたけど、おじさんはまったく気づいていなくて、本当によかったと思った。

つづく(=書けたら書く)

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