インフルと捻挫と、いちご。
与えられたい 与えられたい
そんなことばかりを切望する人生だ。
この2019年の年の瀬、来年はどんなドラマチックなことが起こるだろうと期待していた2018年の年の瀬の自分に申し訳ないほど悲惨な年の瀬である。
あ〜足首の骨っテーこんな鋭角に折れ曲がっても折れないんですネーというほどに捻挫をし、痛い足を引きずりながらなんとかクリスマスを越えて。
今年のクリスマスもクリスマスっぽく寒いなーと身震いしていたらいつしか悪寒に変わってゆき。
あれよあれよとわたしはインフル患者になってしまった。A型だ。
一応ね、検査しておこうねと言ってくれた白髪の優しそうな先生が、
「辛いでしょう」
と言った。
「いや、まだ熱もないしそんなに辛くありません」
と、返した。
先生が椅子に掛け直してゆっくりわたしの方を向き、
「辛いでしょう」
ともう一度言った。
わたしは先生の目を真っ直ぐ見て、
「辛かったです」
とだけ返した。
先生はゆっくり頷くと、咳止めと解熱剤も出しておくね。インフルの薬は少しだけ飲み方が厄介だから薬剤師さんにちゃんと聞くように、大丈夫、すぐ良くなるからね。
と言った。
わたしは熱がどんどん上がっていくのを感じながらぼろぼろ泣いていた。
看護師さんが、あらあらそんなに具合いが悪いのね。お会計すぐしましょうねと遠巻きに言う。
先生に一礼して診察室をでる。
捻挫をした左足をかばいながら帰り道をゆっくり歩く。
もう一生足は治らないし熱も下がらないし、このクソだるい身体のまま、家から一歩も出られないんじゃないかと思いながら。
12/31
久しぶりにでた外の空気はそれは暖かで、気持ちがいい。
駅のホームで、同じ年くらいの男の人が泣いていた。すれ違っただけだから理由は分からないけど。
そんな風に日常は流れている。
一生治らないんじゃないかと思っていたほど腫れ上がっていた足首は高いヒールのブーツにおとなしく収まり力強く地面を踏みしめているし、あんなにぶるぶる震えて全身鉛のようだったクソッタレな身体も、まだ遠いはずの春みたいな午後に浮かれてスキップをしそうになるほどに軽くなっていた。
来年の年の瀬、わたしは何をしているだろう。
何をしていてもいいけれど誰かに何かを与えられているといい。
辛いですと、すぐに言えるようになっているといい。
どうか、来年は少しだけ。
もう少しだけ良い年になるといい。