#同じテーマで小説を書こう 超合神シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタム!(仮)

「わかっとるんか!次のハイパー戦隊シリーズ、レッドにジョニーズの新進気鋭で売り出し中の奴!他にも二世タレントやミス・ユニバースと錚々たるメンツなんやぞ!」

西映株式会社の会議室で監督の檄が飛ぶ。

「ハイ!わかっています!」

机を挟んで反対側、今回監督の下で働くことになるAPや音響、他にも大勢の人数が立っていた。

「話の内容も王道を征く内容で子供にバチクソに受けそうな内容なんやぞ!」

「ハイ!わかっています!」

今回新しく就く事になったAPが代表して、大声で返答する。

「映画化ももう決定して、今シリーズがメインになるって決まってるんやぞ!グッズ製作も決定済みや!快挙やぞ!」

「ハイ!」

ここまでの内容を聞くならば、諸手を上げて喜ぶべき内容のはずだが、監督は激昂している。

「なのになんやねんこれ!」

監督が持っていた資料を机に叩きつける。

そこに書かれていたのは…

『戦隊ロボ名・超合神シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタム』(これは自信作だ)

と書かれた資料だった。

「お前ゆーたやん!俺がいない間あの先生のことをよう見とけって!」

彼が言う先生とは、ハイパー戦隊シリーズや、フードライダーシリーズの脚本を長年務めている人物の事だ。

彼の書く脚本は人気が高く、今回も務めることになったのだが、彼には一つ悪癖とでも言うべきものがある。

自分の作品の登場人物や、武器、ロボットに妙な名前を付けてしまうのだ。

「すいません。ちょくちょく顔見せに行く傍ら監視してたんですが…完成した脚本受け取りに行った時に、すり替えられてたんです。僕が見た脚本ではもっとしっかりした名前だったんですけど…」

「だからゆーたやん!あの先生たまにトリッキーな真似して捻じ込もうとして来るって!てかなんやねん!仕事中に仕事終えて休暇中の先生から『今回のロボの名前は力作だよ』て言われてどっち方面での力作かわからず確認するまでドキドキしとった俺のこの感情はどないしたらええねん!俺休みの日に呼び出されて社長に確認されたねんぞ!本当にこの名前なのかって!休みが一日シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタムに潰されたんやぞ!」

「しかもこれもう受理しとるんやで!変更できんぞ!考えてみぃ!グッズ売られたときに子供が『おかーさん!僕シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタムが欲しい』って言うんやぞ!分かりずらいわ!母親何回聞き直すことになるねん!」

「それになんやねんこの長ったらしい名前は!一台一台のマシンの名前全部繋げるってなんやねん!ネーミングセンスゼロか!しかも1台『ス』やん!イエローの彼のマシン名前が一文字ってなんやねん!『来い!ス!』てしまらんわ!」

「しかもヨーグルタムってなんやねんこれ!何急にヨーグルト要素ぶち込んできたわけ!?今シリーズ一切飯関係ないねんぞ!乗るのがピンクの彼女だからと言って女の子要素がヨーグルトっていつの時代やねん!」

「あと今回初期メンバーが4人で中間差し掛かる辺りで追加メンバーにシルバーカラー入れることになってるんやぞ!彼の乗るマシンの名前はどうするんや!スプーンか!?フォークか!?ナイフか!?」

「ハーッ…ハーッ…」

ヒートアップしていた監督は、椅子にもたれかかり、深呼吸をした。

「…しゃーないから、これで進めるけど、お前ら一蓮托生やからな。高評価も低評価も全員で分かち合うからな。逃げるなよ」

資料を手早く纏めた監督は、会議室から素早く出ていった。

監督の足音が聞こえなくなってから、集められていたスタッフたちは溜め息を吐き、愚痴を吐きながら、会議室から出ていった。

そして最後まで残っていたAPが、独りごちた。

「良いと思うんだけどなぁ…シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタム」