恐怖のバイオブロッコリー! #同じテーマで小説を書こう

「ハーッ!ハーッ」

黒人の、特殊部隊の装備を付けた男が、荒い息を吐く。

舞台は壊滅、生き残ったのは彼一人だった。

事の発端は、ある企業の研究所が、テロリストの襲撃に遭ったことだった。

エコテロリスト、それも、特に過激な。

狙われたのは、農業関連の会社の研究所、農薬だの、品種改良だの研究を行っていた場所だった。

事件が起きてから一時間、突然木や根っこが研究所の建物を貫き、まるでファンタジーの様な外観になり果てた。

そして、特殊部隊による鎮圧が決定されたのが、事件開始から二時間たった時のことだった。

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生き残りはゼロ、ほとんどの人物、研究所で勤めていた人間、研究所に押し入ったマスクを被り重武装していた男女数名、木の根に貫かれ、壁に磔にされていた。

それ以外は、何か、恐らく動物に食い荒らされていた。

何があったか確かめるためセキュリティオフィスに向かい、監視カメラの映像を再生して見入ったのが、失敗だった。

テロリストたちは、研究所の各所を破壊し、研究の再開を不可能にしていった。

そして、地下の廃棄予定の薬剤の保管庫に火を放ったのが原因だということが分かった。

気化した薬剤が煙と一緒に建物内に充満した結果、農薬のテストの為、建物の中に植えられていた木が異常に成長し、こうなった。

その事実に気づいた瞬間、彼らの部隊は、何者かに襲撃された。

天井の通気口、そこから何かが襲い掛かった。

狭い室内を縦横無尽に跳び回り、部隊の隊員の喉笛を噛みちぎる。

そいつが、食い荒らされた死体の、犯人だった。

部屋から出られたのは、彼一人だった。

他の部隊のメンバーは、襲撃者の手にかかって、部屋から出られなかった。

建物から出ようにも、成長し続けた木の根が、出入り口を全て封鎖していた。

後ろから、何者かが走ってくる音が響くのを聞いた彼は、エントランスの柱の裏に隠れ、やり過ごそうとした。

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彼は息を殺した。

来た、女だ。

研究者だったのだろう、白衣に眼鏡、髪は纏めていた、まるでフィクションに出てくるような女研究者だった。

その女だったモノは、頭にブロッコリーを生やしていた。

ブロッコリーは、頭蓋骨をぶち抜いて、脳味噌から生えているのだろう。頭皮が捲れ上がり、脳味噌が少し付着し、ブロッコリーは血を啜り、真っ赤だった。

ソイツは目は血走り、歯を噛み鳴らし、コッコッコッコッという音をエントランスに響かせていた。

指はまるで枯れ木のような細さで、爪は鎌のよう、その爪が多くの命を切り裂いた。

「GRRRRRRRR……」

女は獣のような唸り声を上げながら、スンスンと鼻を鳴らし、周囲を警戒している。

彼は、口元に手を当て、僅かに漏れる呼吸も聞こえないように、嗅がれないように努めた。

女は、コッコッコッコッと歯を噛み鳴らしながら、四足歩行でエントランスから研究所の奥へと消えていった。

「ハーッ…」

彼は、息を吐き出した。

「ARGHHHHHHHHH!」

その息を、女が聞きつけた!

警察犬のように素早く、獰猛に、よだれをまき散らしながら、エントランスに現れ、飛び掛かる!

「クソっ!」

男は、横っ飛びで女を躱し、アサルトライフルを女に向け、撃ちまくる!

「GRRRRRRRR!」

女はそれを、壁を走って躱す!爪を鉤爪にして!

「化け物が!」

男が悪態をつき、フラッシュバンを投げる。

エントランスは光に包まれる!

「ARGHHHHHHHHH!!!」

女の怒声が響き渡る。

男はエントランスから逃げ出した。

恐らく数秒時間を稼げる、その間にどこかに隠れ、外に救助の連絡を求める。

しかし、男の予想に反して、女はすぐに男を追いかけてくる。

「何故ッ!?」

その答えはすぐに分かった。

ブロッコリーに目が生えている!ギョロギョロと辺りを睨め付ける!それで瞑れた目の替わりに男を補足しているのだ!

「化け物めっ!」

「ARGHHHHHHHHH!」

女が飛び掛かる!

「ぐあっ!」

避けようとした男の首筋を、女の爪が掠める。

男は、近くにあった部屋に飛び込んだ。

そこは何かの研究室だった。

エレメンタリースクールの理科の実験室の様だった。

男は、足がもつれ、床に倒れこんだ。

「GRRRRRRRR…」

女が、男の目線の先にいる。

舌なめずりをしながら、近づいてくる。

それと同時に、ブロッコリーから、根のようなものが触手のように蠢きながら、男に近づいてくる。

あれは、まずい。

殺されるよりも、まずい。

本能がガンガンに、男へ警鐘を鳴らしていた。

それと同時に、逃げられないという予感が、男にあった。

ここで、目の前の化け物を殺さねば、まずい。

男は、視線を動かす。

その時、女の近くのテーブルの上に、ある瓶が乗っているのが、男の目に入った。

男は、とっさにその瓶を、拳銃で撃ちぬいた。

瓶には、あるラベルが張られていた。

『除草剤』

「ARGHHHHHHHHH!?」

女が叫ぶ。

脳天から生えていたブロッコリーからシュウシュウと煙が噴き出す。

ブロッコリーは傘のように、除草剤から女の体を守ってはいた。

その証拠に、除草剤は一滴も女の体に飛んではいなかった。

その時、ブチブチという音が、ブロッコリーから響いた。

「……」

ブロッコリーが、女の脳味噌から切り離された!いや!寄生していたブロッコリーが、女の体を捨てたのだ!

ブロッコリーの目が、男を射抜く!

ブロッコリーが男に飛び掛かった!

「死にやがれ化け物がぁぁぁぁぁ!」

アサルトライフルの弾丸が、ブロッコリーの全身を、赤と緑色の体を貫いた!

「……」

ブロッコリーは地面を転がり、ピクピクと痙攣した後、動かなくなった。

女もばたりと倒れ、地面に血だまりが広がってゆく。

「……終わった、のか?」

しかし、男の呟きを否定するように、研究所内に、ある声が響き渡る。

―――……HHHHHH

「……まだいるのか?あの化け物ブロッコリーが」

男はよろよろと立ち上がる。

「…いいだろう、かかってきやがれ。化け物ブロッコリーどもめ。全員、ぶっ殺してやる」

戦いはまだ、始まったばかりだ。