火守の使命
俺の家に聖火が一時的に安置されることになって半年が過ぎた。
H県某市のある寺、その地下500M、そこに今聖火が安置されている。
俺が実家に呼び戻されたのが、半年前、その日から俺がこの寺の主だった。
本来聖火が灯されるトーチも、台座も、特殊な儀式により穢れから守られているのだが、此度の病による騒ぎ、それによって儀式の効果がある内のリレーが不可能になり、このように緊急時のマニュアルに沿って、先祖代々この時の為に指名を受けた我が家に安置された。
「い班ろ班は班に班は二日間の休憩!ほ班へ班と班は準備を!」
『次の班の準備だ!』
そこでは世界各地、ありとあらゆる宗教の聖職者、悪魔払い、とにかく神仏に仕える者達が念仏を、チャントを、聖句を唱え、聖火を守っていた。
誰も彼もが一睡もせず、点滴で命を繋ぎながら聖なる守りを張っていた。
その時、バキャンと、換気口の一つが壊れた。
「火火火火ィィィィィ…聖ナル…穢ラワシイ火ィィィィィ…」
不定形の、腐肉によって肉体が構成された低級の悪魔が侵入してきたのだ。
今この時、ありとあらゆる悪神に仕える悪魔、悪霊、怪物達が聖火を消さんと狙っているのだ。
俺はそいつ目掛け、跳んだ。
「破ぁっ!」
俺は点滴に仕込んだ火炎槍をぶちこみ、火達磨にしてやった。
「火ィィィィィ!熱イィィィィィ!」
悪魔は灰と化し、一時的に撃退できた。
「建設班、あそこの換気口に聖別したひまわり油に漬け込んだ鉄線を張っておけ、暫くは気休めになる」
その言葉と共に、日本政府の勅命を受けた大工達が即座に工事に入った。
俺は、この寺の主、かつて実家を飛び出し怪物狩りを生業とした坊主。
今は聖火を守る使命を受けた男だ。