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形のない意味あるもの


「まさか…私を置いてもう帰るの?」

「はいはい(また言ってるよ)、帰るから。またねー」

職場でどちらかが早く帰る時、高確率である人と私はこんな会話をする。
どういう意味があるの?と聞かれると困ってしまう。

だって意味はない。なんてことない言葉のやり取り。
本気で引き止めたいわけでもない。



生産性のかけらもない、この時間が私は好き。



生産性のあるものがすべて

私はこれまで、無駄な時間は排除しなければ。そう考えながら、生きてきた。
いかに効率よく終わらせて、次に向かうか。

その結果どうなるかというと、頭が今にも割れそうな風船のように、パンパンになる。

それでも無駄な時間は無駄、と切り捨てている自分。
無駄な時間を過ごそうものなら「あぁ私は何をしているのだ」と天を仰いで自問自答した。

改めて文章にして考えると苦しさしかないね。

ゆるめるスイッチ

仕事は思考がonモードになりやすく、さらに子育て中の私にはタイムリミットがある。
生産性のあるものを優先させて、限りある時間でこなさなければならない。

そんなモードでがむしゃらに働いた終わりに、冒頭に書いたやりとりが行われると
ふっと私の心がゆるむんだ。
相手は笑わせようとしているのか、意味なく冗談で言っているのか、その辺は分からない。
通例行事のようなものだと思う。

理由はなぜだかわからないけれど、私の心をoffにしてくれることは確か。私をゆるめてくれる。

生産性のないもの

一見、生産性のかけらもない会話が私の日々の入りすぎた力をゆるめてくれる。
生産性だけを求めていた私が生産性のないものを、求める。

なんだか笑いが込み上げてきた。


そして今日も会えたら今度は私から。
「えー私より先に帰るんですか??」

相手はクスッと笑いながら返してくれる。
「はいはい、あと少しがんばってねー」

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