【小説】ヒロインの定義 〜ヒロインの友人1サイド〜

彼とは高校のクラスメイト。

出席番号が同じのため、隣の席だったから

彼が話しかけてくれたのが最初。

でも、少女漫画のヒーローポジションの彼と

ヒロインの友人その1ポジションの私は

決して、恋愛関係にはならないと思った。

ヒロインとも、高校に入って出会った。

通学の電車が同じこと、

チア部に入りたいことで意気投合した。

かわいくて明るくて元気で

誰からも好かれるヒロイン気質だけど、

八方美人ではないところが

私はとても好きになった。

クラスでも部活でも一緒のヒロインが

私に恋愛相談するのに

そんなに時間はかからなかった。

相手はもちろん、ヒーローの彼。

出席番号順で組まれたオリエンテーリングの班は

彼と私は同じだったので、

何かとヒロインの班と一緒に行動できるよう

取り計らった。

ヒロインに頼まれて日直を代わったり、

中間テスト後の打ち上げと称してカラオケに行ったり、

部活後にごはんを食べに行ったりと、

気がつけば、ヒロインと私、ヒロインの友人2、

ヒーローとヒーローの友人その1その2の

6人で遊ぶことが増えていった。

私は、ヒーローやヒーローの友人1、2に

恋愛感情を持つことはなかったけど、

みんなでいることがとても楽しかった。

夏休みも少女漫画活動は忙しくて、

花火大会に海に、

宿題の見せ合いっこなど、

青春を謳歌していた。

文化祭のクラスの出し物は、ベタだけど

メイド執事喫茶で、

人一倍目立っているヒロインとヒーロー。

おかけで大繁盛した。

私は喫茶店の運営統括として

とても満足のいく文化祭だった。

体育祭では、運動神経の良い彼がバスケで大活躍し、

ファンが増えちゃった、とヒロインがぼやいた。

この頃からヒロインに焦りが見え始め、

クリスマスが近づくと、

告白してもらいたい派のヒロインが

自分からする気になっていた。

期末テストがあったから、

あまり気にしていなかったのだが、

ヒロインとヒーローはなんだか気まずい感じで

テスト打ち上げの恒例のカラオケに

ヒロインが行かないと言った。

なにがあったのかヒロインに聞くと

今度話すね、と

いつものヒロインスマイルだったから

なんだかちょっと安心した。

でも、いや、まさか、

ヒーローがヒロインを振った?

カラオケで、ヒーローの友人1が、

2人に何かあった?と聞いてきた。

私が聞きたいわ。

結局、ヒーローにも聞くことはできず

クリスマスを迎えた。

クリスマスはクラスでパーティーをやる。

もちろん、特別な相手がいる人は

不参加のやつだ。

しかし、クラスの大半が集まったところを見ると

そういう人は少なかったようだ。

幹事はヒーローとヒロイン。

いつの間にか気まずさは消えていて、

仲良く幹事の仕事をこなしている。

あれは気のせいだったのだろうか。

ボーリングをして、

クラスメイトのお父さんがやっているお店で

ごはんを食べて、二次会はなし。

ヒーローはサンタの帽子を被らされて

似てないモノマネを披露していた。

ヒロインのことだから、

ヒーローに送ってもらいたがるのかな

じゃあヒロインと同じ沿線の私は

先に帰ったほうがいいかな

と、考えていたら

「一緒に帰ろう」とヒロインに言われた。

帰りの電車で

「彼には好きな人がいるんだ。」

「友達思いで、気配りが出来て、頑張り屋で、

一緒にいると楽しくて、つい笑っちゃう、

そんな子なんだって。」

え、それってヒロイン一択じゃないかな。

「いろいろ考えたんだけど、

ヒーローの恋を応援することにしたよ!」

え、健気すぎるでしょヒロイン!

ヒーローの好きな人って誰だろうとか

全く考えなかった。

ただ、ヒロインがヒロインすぎて

ヒロインofヒロインだから、

ヒロインのことしか考えられなかった。

初詣はいつもの6人で行った後、

なぜかみんなでヒーローの家におじゃました。

3学期も、それまで通り

バカみたいに楽しく過ごした。

バレンタインは友チョコ作りで

ヒロインの家に集まった。

教室で友チョコを配っていると

ヒロインのファンなのか、

上級生がチョコ欲しそうにやってきたり

みんな恋愛で楽しそうだなと、

ちょっとうらやましくなった。

そして、もうすぐクラス替えがある。

彼は私に、

「来年も同じクラスで、出席番号同じだといいね。」

と言った。

そうだね!みんなと離れたくないなー

と言う私にヒーローは、

「俺はお前がいれば楽しいんだけどな。」

おや?

おやおや?

もしかしたらもしかするやつ?

え、ヒロインは私だったのか!?