街裏ぴんくさんのこと
人の夢の話聞くのっておもしろいですよね。
あ、「将来の夢」とかそっちの方じゃなくて、寝てる時みる方の夢のことです。
たまに「夢の話きらい」って言う人いるけど、あれって信じて聞いてたら結局夢オチだった、とかそもそも現実の話だとしても大しておもしろくない、とかにがっかりするって事であって、「夢の話であること」「非現実的な話であること」自体が嫌いな人ってそんなにいないんじゃないかな、と思うんですよ。
だって『ゴジラ』の映画とか『スター・ウォーズ』とかみて「あんな巨大な生き物、現実にいるわけない!」とか「遠い宇宙の宇宙人の話なんて見たってしょうがない!」なんて言う人、そんなにいない
……って言おうとしたけど、いや、たまにいるなそういうやつ!
「現実社会には解決すべき数多の問題があるにもかかわらず空想の世界に逃げ込むなんて」とか「絵空事に喜んだり悲しんだりするなんて時間とおカネの無駄」とか……なんだおまえは。ゴールドマンサックス証券にでも勤めとるんか。
本当にそれが無駄なら人間はこんなにまで嘘とわかった上で嘘を楽しむ能力、架空の出来事に一喜一憂する為の知能を発達させて来なかったはずです。
それがあったから原始時代にも、いまだ見ぬ巨大なマンモスに協力して立ち向かい、来たるべき極寒の冬に備えて食糧を蓄える事ができ、肉体的には脆弱なわれわれ人類もこうして進化と発展を遂げる事ができた訳です。
それを「意味わからない」「こんなの無駄」と切り捨てるようなやつなんてそれこそ浅はかさの露呈、人間の持つ能力への軽視、認識の錯誤、信頼と実績、夢と現実、なんの話やったっけ。
そうそう、「夢や架空、嘘の話はおもしろい」って事です。
これは夢オチとかタネや仕掛けとかを感じないほどおもしろいのではないかなと思うのです。真剣に『ゴジラ』を観てる時に背中のチャックが見えてしまうと「そういうおもしろさ」になってしまう。それはそれでおもしろいんだけど、観てる間中、目を覚まさせずしっかり夢の中に居続けさせてくれる作品ってほんとに貴重だと思うんですよ。
私は「夢感」が強い作品が好きで、映画だと『コングレス未来学会議』とか『ファンタスティック・プラネット』とか『千と千尋の神隠し』とか、ヤン・シュヴァンクマイエルの作品とか。
マンガだとやっぱり、圧倒的に逆柱いみりさんのマンガです。
夢の中って独特なルールが存在してるじゃないですか。「おれは解ってる。大阪の石切神社の裏手の道をいくと愛知県の豊橋市に出ることを」みたいな。逆柱さんのマンガはずっと根底にこの「夢ルール」が存在する感じなんですよね。「向こうから来る男は刑事だ。そして手に握った鉄の輪が赤く光ってるから疑われてるに違いない」とか。「なんでそうなる」みたいな説明はないんですが、それがすごく夢っぽい。
で、街裏ぴんくさんですよ。
私は中学生の頃から爆笑問題のラジオを聴いていたのでその名前や芸は存じ上げていたんですが、先日のR-1グランプリ2024の優勝をきっかけに配信されてるものを掘り始め、ひたすら聞いては頭痛を起こし、頭痛が治まったらまたひたすら聞きをくり返し、にわかファンながらYouTubeにアップされてる分の漫談はほぼ全部見終えたかなという感じです。(漫談以外に公式YouTubeだけでも『有名人目撃録』『はげゆき』『あおゆき』など様々なコンテンツが載せられている。)
街裏さんの芸は「嘘漫談」「ファンタジー漫談」と紹介される事が多いですが、話の中に「ピパメ」「きえき」「まんにふすのか」みたいな、意味がありそうで無い、しかし意味があるものとして進んでいく言葉がときどき現れ、私はそこからすごく「夢感」を覚えます。
いま思うと街裏さんのような「訳のわからない話」をする芸がR-1グランプリみたいな「地上の大会」で優勝するというのも奇跡的な気がしますが、映画の歴代興行収入ランキングでは『鬼滅の刃』に抜かれるまで長い間『千と千尋の神隠し』がトップだったり、村上春樹の小説が人気だったりと日本人ってもともと「訳のわからない話」が好きなのかもしれません。
みたいなことを友人に話していたら幸運にも先日行われた「街裏ぴんく漫談独演会『一人』」を観に行くことが出来たんですよ!いや〜、ほんとに最高だった!今までの人生の中でもこんなに楽しい時間はそうそうないで、というぐらい楽しかったです。
「おもしろい/おもしろくない」の上に「好き/嫌い」があると私は思っていて、テレビに出てるの見ると笑っちゃうけどやっぱりそんなに好きとかではないかな……みたいなタレントさんなんかもみなさんいると思うんです。「おもしろいとは思うけど別にファンではない」みたいな。
それでいうと、私は街裏ぴんくという人やその芸が「めっちゃ好きだ」という事を再認識しました。ひさしぶりに「おれはこの人のファンです」と言える人ができた嬉しさがあります。好きな上にその作品もめちゃくちゃおもしろい。これってかなり幸せな事です。
ハリウッド映画なら何億ドルもかけて描かれるような爆笑と感動を街裏さんはCGも特殊メイクも爆薬も使わず、たった一人で巻き起こす。その姿はあまりにもカッコよく美しいです。
体型、顔、ファッションから声質まで、ある種の完成された美しさが街裏ぴんくさんにはあると思います。
そういうものをみると「フィギュアにしたい」って思う感覚、分かりますかね?「あぁ〜!完成されてて美しい!フィギュアにしたい!」っていう……。
なので、作ったんですよ。
独演会の際に御本人にごあいさつできるかもしれない、と1週間ぐらい前に知って、そこから必死に作りました。
お渡ししたらすごく喜んでくれて、それもうれしかった〜。
猛烈なる2時間越えの熱演の後ですよ。そのままタクシーで直帰でも誰も文句言わないでしょう。なのにそこからまた2時間近くファン一人ひとりを相手にサインして写真とって……、街裏さんのダイナミックで迫力溢れる芸の根底に流れる愛や優しさは、こういう丁寧で腰が低く紳士的なところから来ているんだなー、とますますファンになりました。
街裏さん、もっともっと売れて欲しいな。
けど、ちょっとでも間違った事言ったら苦情が殺到するようなさっこんの情報バラエティ番組に嘘が武器の街裏ぴんくという人が座らされてるのが良いのかわからないし、ひとくちに嘘と言っても街裏さんの嘘は高田純次さんやなぎら健壱さんみたいな「テキトー」「いいかげん」とはまたちょっと質が違うと思う。
街裏さんをもっとテレビで観たいけど、そもそも「街裏ぴんくの漫談を頻繁にテレビで流す事を求められてる国」ってちょっとヤバいような気もするし……。
街裏さんの声質はラジオ、それもAMラジオにすごく向いていると思うのでラジオもっといっぱいやって欲しいな。一度担当されてたオールナイトニッポン0もすごくおもしろかったし。
何がどうなれば街裏さんがもっと売れるのかは分からないし、それが分かれば僕も含め、誰も苦労はしないんだろうけど、街裏ぴんくさんの漫談は間違いなくアートだし、これからもずっと求め続けられていくものだと思う。
なんかすごくしょうもない思いだし、「にわかファンのおまえがなに言うてんねん」という話だけど、この人にはずっと元気に楽しくやっててもらいたいなと思うんですよね。
そうしたら僕もずっと観に行けるから。
漫談「ニューラジオ」
これは街裏さんの漫談の中で私が特に好きなひとつ。「『あたらしい』とは」という事について真剣に考えている、それが街裏ぴんくという人がアーティストであり、その作品がアートであると私が思う所以でもあります。
漫談「びょういん」
これも大好き。「存在しない世界」に対する街裏さんの姿勢がおもしろすぎる。「街裏ぴんくの漫談」なのに街裏さんは神様的なポジションではないんや、というのが他の多くの人の創作とは一線を画す要因にもなっていると思う。
街裏さんの漫談のYouTubeをみてると、だいたいどの作品にも「私はコレがいちばん好き」というコメントが付いてるんですよね。誰かにとっての1番が無数に散りばめられている。それって本当に驚異的な事だと思います。
ぴんく・ゆる〜く・ミュージック 第76回【この世の限り/椎名林檎×斎藤ネコ+椎名純平】
最後にちょっと自慢させてください。
この動画の9:00あたりから、街裏さんがアストロ温泉の事しゃべってくれてるんですよ……!めちゃうれしい!ありがたいですね~。
なんだか漫談の登場人物になったみたいな気分です。
「その男、自分のこと『温泉』やって言うんですよ!で、渡された箱の中に大人のおもちゃが入ってたんやけど、それが完全におれの形なのよ!これホンマよ!」
みたいな。
この動画も後半、自分で歌詞を朗読しながら涙するという街裏さんの感受性豊かな面が見られて非常にいいんだよなー。
また「私がオススメする街裏ぴんくさんの動画」なんかも書こうかな。と言っても全部オススメなんですが。
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