【ある錬金術師の話(仮題)6】
そもそも古代の人達は、どのように金が出来ると考えていたのだろうか?
実は、金属も人間のように、成長過程をたどると考えられていた。
人間が誕生し、幼児→少年→青年→大人→老人となり、いずれは死ぬ。
そしてまた新しい命となる。同様のことが、金属にも起こっていると考えていた。
つまり金属の死(腐食)の後に、再び新しい金属に成長すると考えられた。
その中でも、金は最終段階なのだ。
鉱山とは金属の成長が行われている、まさに母なる大地であった。
もし鉱山から、鉄が産出されるとしたら、どのように考えたのだろう?
これは、生まれてあまり時間の経たないうちに、金属を掘り出してしまった、ということになる。
逆に、金脈を掘り当てたなら、それ以上は成長しない完成された地層である、ということになる。
だからこそ、錬金術士は密閉した容器に入れ、加熱などの操作を行うことで金属は成長すると考えた。