ホラリー占星術・入門と実践
9月初頭に届いていた「ホラリー占星術」(アンソニー・ルイス著・鏡リュウジ監修訳・駒草出版)を読み始めました。古典占星術を独学していた時、原書の事例集に助けられた想い出深い本著。
戸惑いと発見の感動に満ちた「ホラリー探検記」
本書はいくつかの点で際立っています。原著の副題「シンプル&明瞭(Plain&Simple)」に反する構成の乱雑さ、項目の深掘り度。そして、著者自身が迷いながら古典技法の検証を試みる態度。著者は終始、現代人がぶつかる疑問に正直に向き合い、疑問を解く姿勢を崩しません。「古典ではこう言われているから」と済ますことなく、ホラリーの大家ウィリアム・リリーにもちょっとした皮肉をぶつけたりもする。そして、はしばしに現れるサービス精神。客観性とシニカルさを含ませつつ、読者を楽しませる工夫。著者自身そうしたところを楽しんでいます。
一方アンソニーの細かい解説は、肌に合わない人がいるかも知れません。でも、少し古い本ですが、ホラリーに必要なことが書かれています。誰に教わることもなくホラリーの勉強を始める方には先ず「判断の前の考察」「事例集」を薦めます。特に判断前考察は実は重要です。また事例集は「過去問」に相当し、多くを学べるからです。
占星術の習熟に3段階あるとすれば、システムに驚き楽しむ段階。魅入られ深入りする段階。そして戻れなくなる段階です。
最初は純粋に楽しめる。第二段階では疑念が生まれる。第三段階では疑念の先に闇と光を見る。適切な順序を踏めば、ホラリーはどの段階からでも入れます。
近代占星術の文脈と異なり、一つの案件・質問チャートで扱う天体が少ないという点は習熟のしやすさのひとつで、場合によっては、2天体で完了するチャートもあります。
さて恐らく世界で最も多くの占星術書籍に関わる鏡リュウジさんが本書を監修されたのは、ちょっとした事件だと思っています。なぜなら、いけだ笑みさんの著作や、田中要一郎さんによる クリスチャン・アストロロジーの翻訳書、kuni.kawachiさんの星の階梯などの功績をよそに、ホラリーが従来の占星術から言えば、最もポップさから遠く、ライトな占星術ファンにとって「謎物件」に等しかったからです。
今年は、簡略化される以前の占星術が一般書店に並び、ホラリーという言葉が知られる始まりの年なのかもしれません。