クォン・オチュル氏の世界
今日はコスモプラネタリウム渋谷で開催された「天体写真家・映像作家 クォン・オチュル氏の世界」フルドーム番組上映会に参加してきました。投影枠がいくつかあって、最後の19時の回は監督クォン・オチュル氏ほかのトークイベントもあったのですが、夜は都合がつかず私が参加したのは13時の回。投影番組は「キッツと仲間たちのスーパームーンアドベンチャー」でした。
クオン・オチュル(Kwon O Chul)氏は、韓国の天体写真家であり、かつ映像作家です。これまで実写撮影映像を元にしたフルドーム作品を数多く手がけていて、私の職場(平塚市博物館)でも過去に「オーロラ 生命の輝き」を投影させていただいたことがあります。
さて、今回の「キッツと仲間たちのスーパームーンアドベンチャー」ですが、なかなか日本にはないタイプの番組でした。まず、SDGsを意識したオープニングで地球のごみ問題について触れられます。そこからスペースデブリ問題へと話が広がり、これが第1のテーマです。主人公たちがスペースデブリ回収ミッションに向かうのですが、舞台は人類が滅亡した遠い未来ということで、ハッブル宇宙望遠鏡ですらデブリ化しています。ハッブル宇宙望遠鏡が”回収”され粉々に”処理”されるシーンはなかなかに衝撃でした(笑)
その後、舞台は月面へと移ります。主人公たちが、かつて人類が建設した月面基地(月の地下につくられた基地)を偶然発見し、そこで今もなお基地を維持し続けているAIロボットに基地を案内してもらいます。要所要所で、月で流れ星が見られない理由(隕石の危険性)や月面基地におけるエコシステム(いろいろなものを循環させて環境を維持するしくみ)について学べるようになっています。
そしてなにより、後半3分の1(4分の1?)が解説編ともいえるコーナーになっていて、スペースデブリの危険性と月面開発についての解説があるのです。これがまたしっかり作られていて、スペースデブリの危険性を説明する場面では、運動エネルギーを表す数式や累乗の考え方がサラッと出てくるんですね。番組自体は子ども向け、ということなのですが、観覧想定年齢が気になるところです。日本の子ども向け番組では、なかなかあそこまで説明しないので(笑)とはいえ”硬く”はないので、子どもたちもサラッと見ることができるのではないでしょうか。全体を通してSDGsを踏まえた環境問題への教訓が織り込まれているのですが、説教じみてはいないので、これまた子どもたちは特に意識せずに内容を受け止めるのではないかと思います。一点、科学的にう~ん、という説明はありましたが(流星発光が地球大気との”摩擦”と説明されていた)。アルテミス計画についても最後に触れられていましたが、同計画が進行中の今だからこそ、見てもらいたい作品でもありますね。番組は23分強というコンパクトなものなので、日本であれば月周回衛星「かぐや」が発見した月の縦孔について番組終了後に触れることでさらに深めることができそうです。
総じて、よくできているな、という感想です。日本(と括ってはいけないのですが)でよく投影されている子ども向けプラネタリウム番組の”キャラクターもの”とは一線を画す、そんな印象です。今回の上映会は関係者向けというわけではなかったので、一般の来館者……親子で見に来られていた方たちが何組もいました。実際に見た子どもたちの感想も気になるところです。……国内のどこかでやらないですかね?笑(他力本願)
そうそう、完全に蛇足なのですが、主人公たちが所属しているのは猫宇宙局(NYASA/ニャサ)なんですよね。いや、日本だと別のものを連想するなぁ、と(笑)
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