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彗星と私

ちょっとX(旧Twitter)で話題にしたので、自分の彗星履歴を振り返ってみることにしました。いや、彗星は自分の専門分野の一つと言えるくらいではあって”観測”したことは何度もあるのですが、一方で双眼鏡や小望遠鏡、さらには肉眼で”観望”となるとかなり経験が浅く、(研究目的ではない)写真撮影となると経験皆無といって差し支えない程度なのです。言わば彗星初心者(^^;;

というわけで、自分が彗星という天体をいつ何をきっかけに知ったのか、これはもうまったく覚えていません。かの有名な1P/Halley(ハリー彗星/ハレー彗星)の前回の回帰のとき私は4歳、当然のように見ていません。

1986年に回帰したハリー彗星 Image Credit: 平塚市博物館

彗星に関するもっとも古い記憶は、これまたイレギュラーではあるのですが、D/1993 F2(Shoemaker–Levy 9:シューメーカー・リヴィー第9彗星)の木星衝突です。1994年7月……ちょうど30年前ですね。彗星自体は地上から小望遠鏡で見えるような代物ではありませんでしたが、予想に反してまぁまぁ立派な衝突痕が口径8 cmほどの望遠鏡でも見られたんですよね。あれは貴重な経験でした。

ハッブル宇宙望遠鏡が捉えたSL9 G核の衝突痕 Image Credit: H. Hammel (MIT), WFPC2, HST, NASA

じゃあ、肉眼で見た初めての彗星は?といえば1996年の春先に明るくなったC/1996 B2(Hyakutake:百武彗星)です。しかも、翌年にはC/1995 O1(Hale-Bopp:ヘール・ボップ彗星)が明るくなり、2年連続で大彗星が見られたのです。ある意味、最初がこれら、というのは良くなかったですね(笑)

長大な尾を伸ばした百武彗星 Image Credit: 平塚市博物館

ただ、その後10年間くらい彗星を見た記憶がありません。”観測”はしたんですが……。どんな彗星が来ましたっけ?汗という状態です。153P/Ikeya-Zhang(池谷・張彗星)は見ようとチャレンジした記憶はあるのですが……。
ヘール・ボップ彗星の次に「あ、よく見える!」と楽しめたのがC/2004 Q2(Machholz:マックホルツ彗星)でした。2005年1月、市街地では肉眼では見えなかったものの、いわゆる普通の双眼鏡(7x50)で緑色の姿が充分楽しめました。プレヤデス星団と近づいて見えたのも印象的でしたね。

緑色のコマと尾が印象的だったマックホルツ彗星 Image Credit: Adam Block (NOAO), AURA, NSF

マックホルツ彗星が美しい姿を見せた前年には、肉眼彗星が2つ、同時に見られるのではないかと話題になったこともありました。C/2001 Q4(NEAT:ニート彗星)とC/2002 T7(LINEAR:リニア彗星)です。しかし、残念ながらどちらも肉眼彗星とはなりませんでした。私も見た記憶はありません。

次に騒がれたのは2013年のC/2011 L4 (PANSTARRS:パンスターズ彗星)とC/2012 S1(ISON:アイソン彗星)でしょうか。この年は、同時ではないものの肉眼彗星が2つ見えそうだ、特に後者は非常に太陽に近づくサングレーザーと呼ばれるタイプの彗星なので”大化け”するのではと期待され、非常に話題になりました。このときに発売された彗星関連本は10冊近くにのぼったのでは?東京では記念切手も発売されました。

アイソン彗星の(太陽)大接近を記念して発売された記念切手

が、結果はご存知の人も多いでしょう。パンスターズ彗星は、市街地では双眼鏡を使ってなんとか見えたという程度。アイソン彗星に至っては、太陽接近前後に崩壊し雲散霧消してしまいました。まぁ、ある意味、彗星の不思議さ、おもしろさを体感できたとはいえるのですが、やっぱり残念でしたね。幸い、C/2013R1(Lovejoy:ラブジョイ彗星)がアイソン彗星と同時期に見られ、こちらは双眼鏡を使えば市街地で見られたので、観察会などのイベントはアイソン彗星に代えてラブジョイ彗星を見てもらうことでどうにかなりました。

太陽観測衛星が捉えたアイソン彗星 Image Credit: ESA&NASA/SOHO

アイソン彗星、私は友人と九十九里浜に観望&撮影しに行ったのですが、双眼鏡でも眼視ではなんとか見えた程度(まだそこまで明るくなっていない時ではありましたが)、写真にもなんとか写った程度でした(固定撮影しかしていないというのもありますが)。ヘッダーの画像がこのとき撮影したアイソン彗星です。しょぼい(笑)

その後、2020年にはC/2020 F3 (NEOWISE:ニオワイズ彗星)、2021年にはC/2021 A1(Leonard:レナード彗星)と”それなりの”姿を見せた彗星はやってきましたが、前者はまったく見られず、後者も職場の屋上で双眼鏡を使ってなんとか見られた、という感じでした。今年2024年の春先に明るくなった12P/Pons-Brooks(ポンス・ブルックス彗星)も屋上でかろうじて撮影することはできましたが双眼鏡では視認できませんでした。

平塚市博物館の屋上で撮影されたレナード彗星(○の中) Image Credit: 平塚市博物館
平塚市博物館の屋上で撮影されたポンス・ブルックス彗星 Image Credit: 平塚市博物館

ところで、肉眼彗星といったときに難しいのが17P/Holmes(ホームズ彗星)です。この彗星は太陽から遠ざかりつつあった2007年、17等級という、それなりの口径の望遠鏡でも撮影できないくらい暗くなっていたにも関わらず突如バーストし、3等級にまで明るくなったのです。しかもバースト直後はほぼ点光源として見えたため市街地でもしっかりと見ることができ、ペルセウス座に星が一つ増えたような印象を与えました。ただ、明るくなった原因が原因なだけに、ホームズ彗星を肉眼彗星に含めていいか疑問が残ります。

突如バーストを起こし3等級の”ほぼ”恒星状に見えたホームズ彗星 Image Credit: Keith Moseley

というわけで、私の彗星遍歴は、肉眼彗星×2(3)、双眼鏡で何とか見た彗星×4という感じです。さてさて、C/2023 A3( Tsuchinshan-ATLAS:紫金山・アトラス彗星)はどうなるでしょうか?来月中旬が待ち遠しいですね!

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