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SVBONY MK105MMレビュー(その2)〜実はFL1500〜
前回につづく『第二回「天リフ読者レビュー企画」』レビューその2です。
最初に今回の結論
SVBONY MK105MMマクストフカセグレン式鏡筒は
・カタログスペック上、焦点距離1365mmとなっていますが、実測では焦点距離1500mmでした。
・最大許容バックフォーカスがやや短く、私の標準的な使い方である正立プリズム+BS双眼装置をつけるとピントが合いませんでした。(微改造でピント合いました)
経緯
MAK127のAZ-GTiセットを新品購入した後、シュミットさんの10周年ジャンク市でMAKSY60、MC102、NexStar4SEをゲットしてカセグレン4鏡筒を持っています。カセグレンはバックフォーカスを伸ばすとピント位置が変化し焦点距離が伸びる特徴があります。(屈折望遠鏡やニュートン反射望遠鏡では変わりません。)
大きさ比較です。左から
— yagi (@yagikjp) July 7, 2023
MAKSY60 D60 FL750
NexStar4SE D102 FL1325
MC102 D102 FL1300#SVBONY MK105MM D105 FL1365
MAK127 D127 FL1500
今回レビューのMK105MMはFLの割に鏡筒が長めですね。
MC102のみ鏡筒がスチール(薄板?)で、MAKSY60はプラ、ほかはアルミ?っぽいです(磁石つかない)。 pic.twitter.com/J3FUFRg9oO
ピント位置(主鏡〜副鏡間距離)と焦点距離の関係を以前、智志さんに教えていただきました。非線形の関係ということです。
主鏡の焦点距離をf1、副鏡の焦点距離をf2、主副鏡間隔をdとすると、合成焦点距離fは
— 智志 (@Astroptics_CEO) June 15, 2022
f=(f1×f2)/(f1+f2-d)
となります。ただし、マクストフ型は前面に弱い凹メニスカスレンズが入っていますので、実際の焦点距離はもう少しだけ伸びます。
バックフォーカスを変えながら合成焦点距離を確認すれば、主鏡・副鏡の焦点距離がわかり、バックフォーカスの変化に対して合成焦点距離が変化しやすい鏡筒・変化しにくい鏡筒を見いだせるのでは?と思っていました。今回MK105MMをお借りしたのをいい機会と考え、この確認をしました。先に結果を言うと、どれも同じような変化でしたが、この過程でMAKSY60とMK105MMの最大許容バックフォーカスが短いこと、そしてなんとMK105MMの焦点距離がカタログスペックと異なることが判明しました。上記の写真で鏡筒の長さを見るとカタログスペックの1365mmに近いMC102、NexStar4SEより長く、1500mmのMAK127とほぼ同等と言うのとも符合します。
詳細
数百m離れた避雷針を各鏡筒で狙い、PENTAXの一眼レフカメラK-70で直焦点撮影しました。ただし、鏡筒にそのまま取り付け、62mmの延長筒1本を介して取り付け、2本(124mm)を介して取り付け、の3条件で撮影しました。結果は次の通りです。
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MK105MMとMAKSY60はバックフォーカス(接眼後方距離)124mmのデータがありませんが、これはピントが合わなかったからです。私の標準スタイルである笠井の正立プリズムにBS双眼装置を使うとピントが合わない懸念が出てきました(実際合いませんでした)。
そして、MAK105MMの焦点距離はカタログスペックで1365mmですが、今回の実測では1539mmでした。1.13倍違います。他の鏡筒はほぼカタログスペックどおりなので評価方法は合っていると考えています。
やり方は撮影したそれぞれの画像で、避雷針の先端から、やや下の方の特徴的な模様になってるサビた部分までのピクセル距離をピックアップし、自作の双眼望遠鏡SOGAN60(屈折480mm)を基準にして焦点距離に換算しました。
先のグラフは、ベランダから一番遠く(数百m先)に見える避雷針を狙いK-70直焦点で撮影し、赤矢印間のピクセル距離を縦軸、横軸に接眼後方距離としています。なるほど、距離が伸びるとピクセル数が長くなる=倍率が高くなっています。(続 pic.twitter.com/F8bHbXpP50
— yagi (@yagikjp) July 8, 2023
ちなみに元のピクセル距離のグラフは下記のとおりです。あたりまえですが、先のグラフと縦軸が違うだけです。
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ところで、各鏡筒のグラフをみるとほぼ直線で傾きも概ね同じでした。やり始める前は曲線になる、鏡筒で曲線の状態が異なると予想していたのですが、最初に書いた「主鏡・副鏡の焦点距離がわかり、バックフォーカスの変化に対して合成焦点距離が変化しやすい鏡筒・変化しにくい鏡筒を見いだせるのでは?」がわからない(どの鏡筒も同じ傾向)ちょっとつまらない結果になってしまいました。
短バックフォーカス対応
今回はお借りした鏡筒なので、私の標準スタイルの正立プリズム+双眼装置でピントが合わなくても問題ないと言えば問題ないんですが、普段やらない片目で見比べてもよく見えるとか見えないとか評価できないのと、普段おつきさましか見ない&このとき新月期だったので、月が我が家の西向きベランダに現れてくる2週間後までになんとかするかしてやろうとなりました。
接眼側バレルを外して
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3Dプリンタでギリギリ短いショートバレルを作って29mm縮めました。ピントノブより鏡筒側に寄っているので要注意ですが、ピント出す方が優先なのでこうなりました。
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おまけ
今回作ったショートバレルの3Dモデルです。正立プリズム・双眼装置・2本のアイピースの重量がラジアル方向に加わるので積層剥がれが起きて双眼装置一式が落下するのが怖かったのでM3x15の皿ねじを打ち込んでいます。また正立プリズムを保持するM3のネジを入れますが3D品にタップを切っても使っているうちにねじ山が潰れる恐れがあると考えM3ナットを内側からはめ込んでいます。
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STLファイルはこちら。
モデルを修正したい方はFreeCADのファイルをお使いください。
リンク
レビューその1:レビューまとめ
レビューその2:実はFL1500 はこの記事です
レビューその3:バッフル長め
レビューその4:暖色系
レビューその5:手持ち撮影やってみた
レビューその6:おつきさま眼視観望